トランプ氏のガザ和平案は「パレスチナ人の利益を無視」 ハマス幹部、BBCに語る

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ラシュディ・アブアルーフ・ガザ特派員(イスタンブール)
アメリカのドナルド・トランプ大統領が提案したパレスチナ・ガザ地区をめぐる新たな和平計画について、イスラム組織ハマスの幹部は、「イスラエルの利益にかなうもの」で「パレスチナ人の利益を無視している」と指摘。ハマスはこの提案を拒否する可能性が高いとBBCに語った。
この幹部は、トランプ氏の案の主要条件である武装解除と武器の引き渡しにハマスが応じる可能性は低いとも述べた。
ハマスは、新たなかたちの占領だとして、ガザへの国際安定化部隊(ISF)の派遣にも反対しているとされる。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9月29日の米ホワイトハウスでの会談で、トランプ氏の和平案に合意した。ハマスはこれまでのところ、正式な回答をしていない。
カタール外務省は、ハマスがホワイトハウスの提案を「責任を持って」検討しているところだとしている。
ハマスとの交渉に詳しいパレスチナ高官はBBCに対し、交渉にはガザ内外のハマス指導部が関与していると語った。
ガザにいるハマス軍事部門の司令官エズ・アルディン・アルハダッド氏は、アメリカの提案を受け入れるよりも戦闘を継続する意志を固めているとみられている。ガザの外にいるハマス関係者らは、人質を直接管理する権限がないため、最近の協議ではわきに追いやられているとされる。
ハマスの協議にはパレスチナのほかの派閥も参加しており、今後数日間続く見通し。
2023年10月7日のイスラエル南部奇襲に加わり、以前には複数のイスラエル人を人質として拘束していたガザの武装組織「パレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)」は30日、アメリカの提案を拒否した。
アメリカの提案は、人質全員を一度にイスラエルに引き渡すことを求めている。ハマスが唯一の交渉材料を失うことになるため、この条件がハマスがアメリカ案に応じるうえで大きな障壁になっているとみられる。
今回の新たな和平案はトランプ氏の後ろ盾を得ているものの、人質が返還された後にイスラエルが軍事作戦を再開しないという確証はない。9月9日にイスラエルがカタールの首都ドーハでハマス幹部の暗殺を試みた後では、なおさら信用できないだろう。この攻撃は、アメリカの意向に反するものだった。
さらに、トランプ政権が公開したガザの地図には、ガザ南部のエジプト国境沿いに緩衝地帯と思われるエリアの設置計画が示されている。その管理方法は不明だが、イスラエルが関与するのであれば、新たな争点となる可能性が高い。
加えて、29日に和平案に合意した後も、ネタニヤフ氏はその内容のいくつかに異議を唱えているように見える。
ネタニヤフ氏はソーシャルメディアに投稿された動画の中で、イスラエル軍はガザの一部地域に駐留し続けることができると主張し、イスラエルはパレスチナ国家に「武力で抵抗する」と述べている。
これは、イスラエル軍のガザからの完全撤退と、計画完了後に「パレスチナ人の自己決定と国家としての地位のための信頼できる道筋」が開かれるだろうとする、トランプ氏が提示した枠組みに反している。
ガザ住民の反応
ガザのパレスチナ人は、今回の和平案をおおむね支持している。しかしそれは、戦争終結につながるからという理由でしかない。
ガザ住民のカダール・アブ・クウェイク氏はBBCに対し、「アメリカの計画には悪い条項もあるが、戦争を止めてハマスを排除できるので支持する。たとえ悪魔がこの地獄を終わらせる計画を提案してきたとしても、私はそれを支持する」と語った。
パレスチナ人ジャーナリストのファティ・サバ氏は、「ハマスが拒否するなんてとんでもないことだ。そんなことをすれば、アメリカと西側諸国の支援を受けて戦争を継続し、ガザの残りの地域や中心部を破壊することへのゴーサインを、ネタニヤフに与えることになる」と述べた。
「ガザの人々はそんなことには耐えられない。みんな打ちのめされ、疲弊し、絶望し、希望を失っている」
そして、「みんな、明日ではなく今すぐの停戦を望んでいる。どんな代償を払ってでも停戦してほしいと。この計画がネタニヤフの利益にかなうもので、危険だらけで、自分たちの願いを反映していないと分かっていても、停戦を望んでいる」と付け加えた。
ハマスは2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質として拘束した。これを受けたイスラエルの攻撃により、ガザではこれまでに少なくとも6万6097人が殺害されていると、ハマス運営のガザ保健省は発表している。
国連が支援する総合的食料安全保障レベル分類(IPC)は8月、ガザ市とその周辺地域で飢饉(ききん)が起きているとの報告書を公表。今月初めには、国連人権理事会の調査委員会が、イスラエルがガザのパレスチナ人に対してジェノサイド(集団殺害)を行っていると認定した。イスラエルは事実ではないと強く否定している。











