ガザの「新たな完全占領」計画、ネタニヤフ氏が閣議で近く提案か イスラエルメディア報道

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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、パレスチナ・ガザ地区の新たな完全占領計画を安全保障閣議で提案する考えだと、イスラエルの複数メディアが報じている。
イスラエルの複数メディアによると、イスラエル高官の1人は、「賽(さい)は投げられた。我々はガザ地区の完全征服、そしてハマス打倒へと向かっている」と述べたという。
一方、イスラエル軍の参謀総長や指導者らは、この計画に反対していると報じられている。上記の匿名高官は、軍参謀総長や他の軍幹部がこの計画に反対しているとの報道を受け、「参謀総長がこれに納得できないなら、辞任すべきだ」と述べたという。
ガザで拘束されている人質の家族らは、ガザ全面制圧計画を実施すれば人質の命が危険にさらされるかもしれないと懸念している。イスラエルによると、ガザでは今も50人が拘束されており、うち20人は生存しているとされる。複数の世論調査では、イスラエル国民の約4分の3が人質解放のために停戦で合意すべきだと回答している。
ガザでの戦争終結と、人道危機を改善するための対応を求めるイスラエルの主要な同盟国の多くも、こうした動きを非難する可能性がある。
こうした中、イスラエルの諜報機関の元長官などを含む元安全保障当局者ら数百人は、アメリカのドナルド・トランプ大統領に書簡を送り、ネタニヤフ氏に圧力をかけてガザでの戦争をやめさせるよう求めた。
書簡に署名したイスラエル治安組織「シンベト」の元長官アミ・アヤロン氏はBBCに対し、これ以上の軍事行動は無意味だと話した。
「軍事的な観点から言えば、(ハマスは)完全に破壊された。一方で、イデオロギーとしては、パレスチナや周辺のアラブ諸国、そしてイスラム世界の人々の間で、ますます力が増している」
「したがって、ハマスというイデオロギーを打ち負かす唯一の方法は、よりよい未来を提示することだ」と、アヤロン氏は続けた。
最新の展開は、停戦と人質解放をめぐるハマスとの間接交渉が決裂し、パレスチナの武装勢力がやせ細ったイスラエル人の人質2人の映像を公開した後に起きた。
公開されたのは、人質のロム・ブラスラフスキー氏とエヴィヤタル・ダヴィド氏の衰弱した様子を捉えた映像。2人は、2023年10月7日にハマスがイスラエル南部を奇襲した際に、ガザ境界近くで開かれていた「スーパー・ノヴァ」音楽フェスティバルから連れ去られた。2人の映像は、イスラエル国内に衝撃と怒りをもたらした。映像には、ダヴィド氏がガザの地下トンネルの中で、自分の墓だとして穴を掘る様子が映っている。
直近の報道をめぐっては、ハマスに新たな合意を迫るための「圧力戦術」なのではないかとの見方も出ている。
イスラエル軍は、すでにガザの75%を掌握していると主張している。しかし、新しい計画ではガザ全土を占領し、現在200万人以上のパレスチナ人が押し込められている残りの地域にも進軍することになる。
この計画が、民間人や、国連やほかの援助団体の活動にどのような影響を及ぼすかは不明だ。ガザの人口210万人のうち約9割は家を追われ、過密状態の劣悪な環境で生活している。人道団体や国連は、多くの住民が飢餓状態にあると警告。イスラエルが重要な援助物資の配給を妨げていると非難している。
こうした中、イスラエルはガザの事業者に対し、現地の状況を改善する取り組みの一環として、ベビーフードや果物、野菜、衛生用品など一部物資の搬入再開を認める方針を示している。民間による搬入は、ハマスが利益を得ているとの懸念から、以前停止されていた。
イスラエル軍はこれまで、ガザ中部など人質が生存している可能性があるとされる一部地域の掌握を避けてきた。対象地区に地上部隊が昨年、進軍した際には、6人のイスラエル人質がハマスに処刑された。
イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区の一部を統治するパレスチナ自治政府からは、正式な回答はない。しかし、自治政府関係者は、イスラエルの計画を非難するとともに、新たな軍事占領を阻止するために介入するよう国際社会に求めている。
パレスチナ側は、イスラエルの極右閣僚がガザの完全占領と併合を公然と主張し、最終的に新たなユダヤ人入植地の建設することを目指していると指摘している。
イスラエルは2005年にガザから入植者と軍を撤退させた。
しかしその後も、エジプトとともにガザへのアクセスを厳しく管理してきた。
新しい占領計画は、数十年にわたるイスラエル・パレスチナ紛争の解決策とされてきた「2国家解決」の実現に向けた、国際的な動きが加速する中で浮上した。「2国家解決」とは、イスラエルと接するヨルダン川西岸とガザに独立したパレスチナ国家を建国し、東エルサレムを首都とするというもの。
ガザにおける次の対応を決定するため、ネタニヤフ氏は主要閣僚や軍指導者と近く協議するとみられる。イスラエル軍ラジオは、ガザ中部の難民キャンプを包囲し、空爆と地上攻撃を行うという初期軍事計画について議論すると伝えている。
ネタニヤフ氏は今週中に、安全保障閣議を招集するとしている。
イスラエル・メディアの複数評論家は、軍事・政治・外交面での現実的な課題に懐疑的な見方を示している。イスラエル紙「イェディオト・アハロノト」のナフム・バルネア氏は、「ネタニヤフ氏がこれほどの賭けに出るのは見たことがない」と述べた。
そして、ネタニヤフ氏は戦争目標を達成すると繰り返し誓っているとも指摘した。
「しかし、22カ月に及ぶ流血の戦いを経て、そうした約束を真剣に受け止めるのは難しい。ネタニヤフ氏の唯一の目的は、戦争を長引かせることのように見える」
ハマスは2023年10月7日、境界を越えてイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエルはこれを受け、ガザで軍事作戦を開始した。
ハマス運営のガザ保健省によると、それ以来、ガザでは少なくとも6万1020人が殺害されている。













