「弟はまるで骸骨」 ガザで拘束中のイスラエル人人質の兄、BBCに語る

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パレスチナ・ガザ地区で拘束されているイスラエル人の人質の兄が4日、BBCの取材に応じた。イスラム組織ハマスが公開した、衰弱した弟の映像を見た兄は、これは「新しいかたちの残虐行為」で、両親は打ちのめされていると語った。
ハマスは2日、イスラエル人人質のエヴィヤタル・ダヴィド氏(24)がやせ細っている映像を公開し、イスラエルや西側諸国の指導者から非難が噴出した。
「弟は人間の骸骨のような状態だ。死にそうなほど飢えさせられ、ひどい苦しみを受けている。ほとんど話せず、ほとんど動くこともできない」と、兄のイライ・ダヴィド氏は4日、BBCのインタビューで語った。
ハマスが公開した映像では、エヴィヤタル・ダヴィド氏が「もう何日も食べていない(中略)飲み水もほとんど手に入らない」と語り、自分の墓だとして穴を掘る様子が映っている。

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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、ガザでの軍事作戦の拡大を計画している可能性があると報じられる中、人質の家族らは、人質の解放実現を最優先するよう、ネタニヤフ氏に求めている。
エヴィヤタル氏の動画が公開される2日前には、ガザの武装組織「パレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)」が、ガザで拘束されている人質のロム・ブラスラフスキー氏(21)がやせ細り、泣いている映像を公開した。

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2人は、2023年10月7日にハマスがイスラエル南部を奇襲した際に、ガザ境界近くで開かれていた「スーパー・ノヴァ」音楽フェスティバルから連れ去られた。
10月7日には、イスラエル南部の各地から251人がガザへ連れ去られた。その後、イスラエルとハマスの合意に基づき、イスラエルで収監されていたパレスチナ人と引き換えに一部の人質が解放されたが、ガザでは今も50人(うち20人は死亡しているとされる)が拘束されているとみられる。ロム・ブラスラフスキー氏とエヴィヤタル・ダヴィド氏もその中に含まれる。
「新しい種類の残虐行為」
エヴィヤタル氏の映像を見た父親は、息子の声だとほとんど認識できず、夜は眠れずにいるとイライ氏は話した。母親は一日中泣いているという。
「骸骨のような姿の弟を見て、これは新しい種類の残虐行為なのだと、私たちは理解した」と、イライ氏は述べた。「これよりひどい最低のものはない」。
イライ氏は、世界各国の指導者に対し、「ハマスの残虐な無理強いから」弟とほかの人質を救うために団結するよう訴えた。
「私たちはこのメッセージを届けることに注力しなければならない。エヴィヤタルは死にかけている。薬を与え、食事を与える必要がある。きちんとした食事を与えて、今すぐ治療を受けさせなければ死んでしまう」
こうした訴えに対し、ハマスの軍事部門は、人質を意図的に飢えさせているわけではないと反論。人質はハマス戦闘員やガザ住民と同じ食事をとっていると主張している。
人質の映像が公開された後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はブラスラフスキー氏とダヴィド氏それぞれの家族と面会し、「深い衝撃」を受けたと述べた。そして、人質全員の帰還に向けた努力は「絶え間なく、執拗に続いていく」とした。
しかし、イスラエルのメディアはイスラエル高官の話として、ネタニヤフ氏が「ハマスの軍事的敗北」を通じて人質を解放しようとしていると伝えている。
物資不足、栄養不良による死者が増加
ガザでまたしても事態が激化するかもしれない事態に、即時停戦を求めるイスラエルの同盟国はさらに怒りを募らせる可能性がある。ガザのパレスチナ人が、飢えや栄養不良で命を落としているとの報道は、世界中に衝撃を与えている。
人質家族を支援する主要団体は、「ネタニヤフ氏はイスラエルと人質を破滅へと導いている」とし、新しい軍事作戦の案を非難した。
こうした見解は、イスラエルの元安全保障当局者ら約600人がアメリカのドナルド・トランプ大統領に宛てた書簡でも明確に示されている。この書簡は、イスラエルに圧力をかけてガザで即時停戦させるよう、トランプ氏に要請している。
イスラエルの元当局者のグループには、諜報機関モサドの元長官タミル・パルド氏や、治安組織「シンベト」の元長官アミ・アヤロン氏、元首相エフード・バラク氏、元国防相モシェ・ヤアロン氏らが含まれる。
彼らは、「ハマスはイスラエルにとって、もはや戦略上の脅威ではないというのが、我々の専門的判断だ」としている。
「当初、この戦争は正当な防衛戦争だった。しかし、すべての軍事的目標を達成した時点で、この戦争は正当性を失った」と、アヤロン氏は主張した。
ハマスは2023年10月7日、境界を越えてイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエルはこれを受け、ガザで軍事作戦を開始した。
ハマス運営のガザ保健省によると、それ以来、ガザでは6万人以上が殺害されている。
同省は4日、過去24時間で少なくとも94人が殺害されたと報告。うち数十人はイスラエルの空爆で殺害されたという。
イスラエルがガザへ流入する援助物資を制限している影響で、ガザは深刻な物資不足に直面している。ガザ保健省は、現在の戦争が始まって以降、栄養不良で死亡した人が180人に達したと発表。うち93人は子供だとした。
こうした報告はここ数カ月間、毎日のように寄せられている。ただ、イスラエルはBBC を含む外国報道機関のガザへの立ち入りを禁止しているため、報告内容を検証するのは困難だ。
国連が支援する世界的な食料安全保障の専門家グループは、「飢饉(ききん)という最悪のシナリオが進行中だ」と警告している。













