ガザで飢饉が「進行中」、国連支援の専門家ら警告 「最悪のシナリオ」

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パレスチナ・ガザ地区について、国連が支援する世界的な食料安全保障の専門家グループは29日、「飢饉(ききん)という最悪のシナリオが進行中だ」と警告を発した。
国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」がアラートを発した。ガザで広範な飢餓、栄養不良、疾病によって飢えに関連した死が増加していることを示す証拠が積み上がっていると警告している。ガザでは210万人のパレスチナ人が生活している。
IPCぶによると、「最新のデータでは、ガザ地区の大部分で食料消費が飢饉のしきい値に達しており、ガザ市では急性栄養不良のレベルに達している」。
国連の各機関はすでに、ガザで人為的な集団飢餓が発生していると警告している。また、今月になって少なくとも63人が栄養不良に関連して死亡したとしている。そして、この危機は、ガザ地区へのすべての物資搬入を統制しているイスラエルが引き起こしたものだと非難している。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「事実が明らかになった。否定はできない。ガザのパレスチナ人は、とんでもない規模の人道的大惨事に耐えている」と説明。
「これは警告ではない。目の前に広がる現実だ。支援のか細い流れは、大海にならなければならない。食料、水、医薬品、燃料は波となって、妨害されることなく流れ込まなくてはならない」とした。
イスラエルは3月初め、ガザへの支援物資の搬入を全面的に阻止。同盟国などからの圧力で11週間後に部分緩和したが、食料、医薬品、燃料の不足は悪化している。
イスラエルは、支援物資の輸送は制限しておらず、「飢餓はない」と主張している。ただ最近、支援物資の運搬・配給を円滑にするために特定地域で軍事行動を毎日一時停止するなど、いくつかの措置を発表している。
IPCは、戦闘行為の終結と、生命を救う大規模な人道活動の実施のため、直ちに行動が必要だとしている。
今回の報告書では、ガザを正式に飢饉に陥っているとは分類していない。そうした分類をするには、分析が「遅滞なく」行われる必要があるとしている。
IPCは、国連や支援機関、各国政府が主導する取り組みで、国際社会として飢饉の発生を判断する主要なメカニズム。
IPCは29日の警告の中で、過去2カ月間におけるイスラエル軍の空爆激化と地上作戦の拡大が、市民および重要インフラに「壊滅的な影響」を与えていると指摘した。
IPCによるとこの期間中、ガザ全域で住民の食料アクセスは「著しく不安定かつ極めて危険な状態」に陥っている。食料支援を求めた住民1000人以上がイスラエル軍に殺害されたという国連報告も、IPCは指摘している。
IPCによれば、7月前半に栄養不良が急速に悪化しており、ガザ市では飢饉の基準に達したという。
7月に栄養不良が急増
IPCによると、ガザでの栄養不良は今月前半に急増し、ガザ市では飢饉のレベルに達した。国連機関などのデータでは、4月~7月中旬に、急性栄養不良で2万人以上の子どもが診療所に収容され、うち3000人以上が重度の栄養不良だったことが示されているという。
また、病院の報告から、5歳未満の子どもが飢えに絡んで死亡する事例が急増し、今月17日以降で少なくとも16人に上っていることがわかるという。
IPCは、破滅的な状況の改善には「物資流入の拡大、基本的サービスの回復、命を救う支援への安全かつ妨害のないアクセス」が必要だと強調。「このいずれも、停戦がない限り不可能だ」としている。
世界食糧計画(WFP)と国連児童基金(ユニセフ)は、食料消費と急性栄養不良の二つのカテゴリーで、飢饉のしきい値を超えたことに対して強い懸懸念を表明した。
イスラム組織ハマスが運営するガザ保健当局は28日、過去24時間でさらに14人が栄養不良で死亡したと発表した。これにより、現在の戦争が始まってからの栄養不良による死者は147人に上り、うち88人は子どもだとした。
世界保健機関(WHO)は27日、7月のガザでは栄養失調に関連する死者が63人に上ったと発表した。このうち24人は5歳未満の子どもだった。WHOは、多くの遺体に「深刻な消耗の明確なしるし」が見られたと指摘している。
WFPのシンディ・マケイン事務局長は、「ガザの人々が耐えている苦しみは、すでに世界が目にしている通り明らかだ。住民は、命を救うための食糧支援を切実に必要としている。飢饉の公式確認を待ってからそれを提供するなど、不道徳だ」と述べた。
他方、イスラエルのギデオン・サール外相は29日、エルサレムで記者会見し、ガザの状況は「厳しい」ものの、イスラエルが意図的に住民を飢えさせているというのは「うそ」だと反論した。
「この厳しい現実は誰の責任か?(中略)これはハマスだ」、「飢餓政策があるのか? いや、その反対が正しい」と外相は述べ、過去2カ月に援助物資を運ぶ輸送トラック約5000台がガザに入り、イスラエルは「人道回廊を開き、手を尽くして物資を投下するなど、今週を含めて素晴らしい努力をしている」と主張した。
危機に改善みられないとガザ住民
一方、ガザの住民らは、イスラエルが支援物資の配給促進のための措置を発表した後も、食料の入手状況はほとんど改善していないと話している。
「(28日に)私たちの地域にごくわずかな援助物資が空中投下された。何千人もの人がそれを奪い合った」と、ガザ市のアル・シファ病院で看護師として働く2児の親、バクル・サラフさん(35)はBBCに話した。
「うちの子どもたちは飢えている。2日間、一度も食べていない。援助が入ってきているという話はよく聞くが、まったく目にしていない」と、サラフさんは付け加えた。
南部ハンユニスでは、5人の子を持つ父親ビラル・アタッラーさん(45)が、28日に丸一日、食料援助を待っていたが、受け取れなかったという。
「略奪者が援助トラックから盗んだ小麦粉を買うしかなかった」、「1キロの小麦粉に35ドルもかかった」とアタッラーさんは話した。
他のガザ住民も、犯罪組織が援助物資の車列を襲撃し、物資を略奪したうえで、手の届かない価格で再販売していると証言している。
一部の住民は、犯罪集団が輸送を妨害して支援物資を略奪し、高値で転売していると報告している。
国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)は、27日にガザに入った国連のトラックの大半は物資を略奪されたと説明。「切羽詰まった民間人ら」が、そうしたことをしているとした。
イスラエルは繰り返し、ハマスが支援物資を強奪していると非難してきた。一方、米紙ニューヨーク・タイムズは27日、ハマスが組織的に国連の支援物資を盗んだ証拠は一度も見つかっていないとする、イスラエル軍高官の発言を報じた。
ロイター通信も先週、ハマスが組織的に支援物資を盗んでいる証拠は見つからなかったとする、米政府の分析について報じた。
ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。これを受けてイスラエル軍は、ガザでの軍事作戦を開始した。
ガザ保健当局によると、それ以来、ガザでは少なくとも6万34人が殺害されている。











