【解説】 欧州は団結してトランプ氏を説得できるのか ウクライナの未来に自分たちは重要だと

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キャティア・アドラー欧州編集長(パリ)
欧州各国の指導者が慌てている。17日にフランス・パリで、安全保障会議が緊急開催されることになったことが、その証しだ。
アメリカのウクライナ特使は17日にサウジアラビアで、ロシア側と会談する。欧州の指導者たちは、このウクライナの未来をめぐる協議の場に、アメリカから招かれなかったことに動揺している。ドナルド・トランプ米大統領は16日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と「間もなく」会談する可能性があると述べた。
欧州は対応を迫られている。政治的な違いや各国の経済的な懸念を脇に置き、安全保障への資金拠出やウクライナの未来について、部隊の派遣の可能性も含めて一致団結し、交渉のテーブルにつくことはできるのだろうか。
チャレンジはするだろう。
イギリスのキア・スターマー首相は17日朝、同国が「現地に軍隊を派遣する用意と意思がある」と述べた。接戦が予想される総選挙を前にしたドイツも、最多議席の獲得が見込まれているキリスト教民主同盟(CDU)の外交政策担当の広報が、国際的な委任を受けて「平和維持」の役割で同国の軍隊を派遣する用意があると述べている。
トランプ米政権が、ウクライナについて何をしたいのか自分たちでも100%わかっていないのは明らかだ。先週末にはいくつかのメッセージを発信したが、矛盾していた。
こうした状況は、欧州にわずかな機会をもたらしている。自分たちはかけがえのないパートナーだと、トランプ氏を説得するための機会だ。
欧州はパリでの緊急安保会議を通じて、トランプ氏が要求する二つの主要な問題に取り掛かりたいと考えている。欧州が自分たちの防衛のために支出と行動を増やすことと、ウクライナに停戦後に欧州が軍を派遣することだ。
欧州の指導者たちは、停戦をめぐる交渉にウクライナを直接参加させるよう強く求めている。前々から、「ウクライナ抜きで、ウクライナに関する決定は出せない」との見解を維持している。
しかし、欧州にとってはそれ以上に重要なことがある。
それは、トランプ政権が欧州のパートナーたちとの関係も、その防衛も優先していないという、恐ろしくも、全く予想外とは言えない厳しい現実だ。
欧州の安全保障
欧州は第2次世界大戦後、アメリカが提供する安全保障の傘に頼ってきた。
ウクライナをめぐるロシアとアメリカの協議がどこに向かい、それがプーチン氏をどれほど大胆にさせるかにもよるが、欧州には、この会議が欧州大陸の安全保障構造を変えてしまうのではないかとの懸念もある。
プーチン氏はかねてから、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に反発している。ロシアの隣国で、旧ソ連構成国の小国であるバルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)やポーランドは現在、特に危機感を覚えている。
17日のパリでの安保会議には、すべての欧州諸国が参加するわけではない。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、バルト諸国と北欧諸国を代表するとみられるデンマークといった軍事力のある国々と、欧州理事会議長とNATO事務総長だ。
ほかの国々は後日、フォローアップの会合をもつと報じられている。
パリでの会議は小規模になるとはいえ、具体的な防衛費の増額に合意するのは、不可能ではないにせよ難しいだろう。ポーランドは2025年中に国内総生産(GDP)比4.47%を防衛費に充てる予定だ。イギリスはGDP比2.5%を目指して奮闘しているものの、目標は達成していない。
それでも、欧州各国の首脳は、連携を強化し、NATO内部での拠出を増やし、戦後のウクライナの復興の大部分を担うと、誓うことはできる。欧州連合(EU)も防衛への取り組みを強化するとみられている。
戦後のウクライナへの派兵
パリでの会議は大部分が、停戦後のウクライナへの部隊派遣に焦点をあてたものになるだろう。
平和維持軍ではなく「安心部隊」を、停戦ライン上ではなく停戦ラインの後方に配置することが、現在検討されている。
欧州諸国の部隊が駐留する目的は三つある。ウクライナ人に対して、「あなたたちは孤独ではない」というメッセージを送ること。アメリカに対して、欧州各国が欧州大陸の防衛で「やるべきことをやっている」というメッセージを送ること。そして、ロシアに対して、最終的な停戦の条件を破った場合、ウクライナだけでなく欧州も対応すると警告することだ。

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しかし、この考えは賛否の割れるものであり、各国で有権者の支持を得られないかもしれない。例えば、イタリアでは国民の半数が、これ以上ウクライナに武器を送ることを望んでおらず、自分の息子や娘、姉妹や兄弟をウクライナに派遣したいとは考えていないと答えている。
答えが出ていない問題もまだ多く残されている。
欧州各国はどれだけの兵力を、どれだけの期間、誰の指揮下で派遣しなければならないのか。どんな使命を負うことになるのか。例えば、ロシアが合意条件を破った場合、欧州の兵士がロシアと直接戦うことになるのか。そうなった場合、アメリカは支援してくれるのか。
欧州は、ウクライナに派兵する前に、アメリカに安全保障の保証を求めるだろう。しかし、それは得られないかもしれない。
17日に決定を出すには、あまりにも問題が多すぎる。イギリスのスターマー首相をはじめとする首脳たちはそれぞれ、追加の防衛費を負担できるのか、ウクライナに派遣する兵士を確保できるのか、といった自国の懸念を抱えている。
元英陸軍トップのリチャード・ダナット氏は、長年の投資不足によって英軍は劣化しており、ウクライナに意義ある兵力を提供することはできないとBBCに主張。ウクライナは10万人程度の兵力を必要としており、イギリスがその相当数を提供することが期待されると述べた。一方、英陸軍は、自分たちは世界的に高い評価を得ていると主張している。
ただ、今回の会議は、詳細よりも大まかな方向性を示すものだ。少なくとも議論を公に始めることができる。
トランプ氏はどう見ているのか
ドナルド・トランプ氏はこの会議に注目するだろうか?
それはわからない。
欧州はパリでの会議後、自分たちの立場を伝えるため、米ワシントンに特使を派遣するという話もある。例えば、イタリアのジョルジャ・メローニ首相はトランプ政権と親しい。
スターマー英首相は数日内にワシントンを訪問する予定だ。スターマー氏にとって、欧州とアメリカの橋渡し役を務めるチャンスになるかもしれない。
この会議はまた、ブレグジット(イギリスのEU離脱)で苦々しい思いをしたイギリスと、欧州各国の首脳が、関係をさらに修復できる機会でもある。
欧州外交評議会のマーク・レナード理事は、スターマー氏が「イギリスは欧州の安全保障に責任を持つ利害関係者であることを示す」ことができれば、「ほかの問題に関する交渉の際に注目され、友好的に受け止められるようになるだろう」と指摘した。
貿易関係や法執行をめぐる協力などは、イギリスが今後、EUとの関係改善を望んでいる問題だ。
会議を招集するフランスは、自信を持っている。マクロン氏は以前から、欧州がサプライチェーンや技術力、そして特に防衛において、欧州以外への依存を軽減することを提唱してきた。マクロン氏は昨年2月、ウクライナに部隊を派遣するという案を初めて口にし、大きく注目された。
仏モンテーニュ研究所のジョージナ・ライト国際研究担当副所長は、フランスはイギリスと異なり、自国の情報機関や安全保障サービスがアメリカと密接に関係していないことを「非常に誇り」に思っていると指摘。トランプ氏が米大統領に就任し、欧州に対して自分たちのことは自分で面倒を見るよう要求している今、アメリカとの関係のもつれを解くのはそれほど複雑ではないのはそのためだと、ライト氏は言う。

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アメリカは欧州の同盟国に対し、六つのポイントと質問からなる文書を送付している。和平合意に含まれるウクライナへの部隊派遣をどの国が引き受けるのか、ロシアに対する制裁の強化や厳格化をどの政府がするのか、などだ。
しかし、この種の複雑な外交的作業は通常、数週間にわたる協議が必要であり、用紙に記入したらまとまるというものではないと、最近までアメリカのNATO大使を務めたジュリアン・スミス氏は言う。
さらに、欧州の指導者たちがパリで何を達成しようとも、それを使って、ウクライナをめぐる交渉の場に自分たちの席を用意するよう要求しても、立場は弱いままだと付け加える。
「トランプ氏が目をつぶってノーと言ったとしたら、欧州は援助を完全に拒否するだろうか? 欧州は自分たちの損になることはできないはずだ」
要するに、アメリカが安全保障という点において、ウクライナから、そして欧州のより広範囲から目を背けるつもりでいるなら、欧州はいずれにしても、自分たちの防衛体制を大幅に強化する必要があるということになる。
ドナルド・トランプ氏が欧州に注目していないとしても、ウラジーミル・プーチン氏は確実に注視している。











