【画像で見る】 ガザ地区の1年 戦争で生活が激変

ガザ地区のイメージ図

BBCビジュアル・ジャーナリズム・チーム

イスラエル組織ハマスは2023年10月7日、前例のない越境攻撃をイスラエルに実施した。それに対してイスラエルは、地中海沿岸のパレスチナ自治区ガザ地区を空爆し、侵攻した。それ以来、1年にわたり戦争が続いている。

ハマスはイスラエルの破壊を組織の目標に掲げ、2007年以来ガザ地区を統治してきた。イスラエルは、そのハマスの軍事力と統治能力を破壊することが、自分たちの軍事行動の目的だと主張する。しかし実際には、ガザ地区に住む人たちの暮らしは、戦争によって壊滅的な打撃を受けた。

ガザ地区の大部分は廃墟と化した。ハマス運営の保健省によると、これまでに4万2000人近くのパレスチナ人が同地区で殺害されている。この戦争を通じて、ガザに住む人たちの暮らしがいかに激変したかを、写真や地図などで見ていく。

たき火の前で身を寄せる高齢者と子供

画像提供, Getty Images

戦争が始まる前から、ガザ地区での暮らしは厳しかった。イスラエルとエジプトによる封鎖が何年も続き、人とモノの出入りが徹底的に制限された。イスラエルもエジプトも、こうした規制が必要だと主張していた。

世界銀行によると、人口の3分の2が貧困状態にあり、国連運営の難民施設に大勢が住んでいたが、その一方で病院もあれば、学校も商店もあった。

アスダア・シティはガザでも有数の遊園地で、広さ約365平方キロの地区内に住む約200万人(その半数近くが子供だ)に、しばしの安らぎと楽しみを与えていた。

遊園地の乗り物に乗る女性と少年

画像提供, Getty Images

ガザ地区南部ハンユニスにあるこの遊園地で、イスラエルの侵攻前に撮影された写真と、最近撮影された写真を比べると、いかにこの1年の紛争でガザ地区とそこで暮らす人々の日々が一変してしまったかがわかる。

動かない観覧車や遊具とその前に並ぶテント。テントの前には避難してきた人たちが座っている

画像提供, Getty Images

遊園地の乗り物は壊れて動かない。動かすための動力もないし、その周りには家を追われた住民のテントが何千と立ち並ぶ。

観覧車の周りにたくさんのテントや小屋が並ぶ

画像提供, Getty Images

昨年10月7日にハマスの戦闘員はイスラエル人や外国人を計1200人以上殺害し、251人を人質にしてガザ地区へ連行した。これを受けてイスラエルは、まずガザ北部に対して集中的な砲撃を開始。ハマス戦闘員が民間人の間に潜伏しているからというのが、その主張だった。

破壊の拡散

北部のベイトハヌーンは、イスラエルとの境界からわずか2キロしか離れていない。イスラエルの砲撃に真っ先にさらされた地区で、甚大な被害を受けた。

2023年10月12日のガザ地区で被害を受けた地域。北部に集中している

イスラエルは、ガザ地区北部のガザ市をはじめ複数の都市部を爆撃し続けた。10月末に地上部隊による侵攻を開始する前、「安全と保護」のために民間人はワディ・ガザ川より南へ移動するよう命じた。

しかしイスラエルは、数十万人もの北部住民が南へ避難しているその最中にも、南部の都市への空爆を開始していた。11月末までには、北部の大半と、南部の一部が、破壊されていた。

2023年11月29日のガザ地区で被害を受けた地域。南部にも被害が拡大している。

イスラエルは12月初めに、ガザ地区南部と中部への爆撃を強化した後、南部ハンユニスへの地上侵攻を開始した。今年1月までに、ガザ地区にあった建物の半数以上が破壊されたか、損傷していた。

2024年1月29日のガザ地区で被害を受けた地域。南部ハンユニスの被害が拡大している。

人工衛星データを分析している米ニューヨーク市立大学大学院センターとオレゴン州立大学の研究者によると、1年間の紛争でおそらくガザ地区内の3分の2に近い建物が被害を受けた。その中でもガザ市が特に激しく破壊されているという。

2024年9月24日のガザ地区で被害を受けた地域。四つの都市部を中心に全域に広がっている

巨大なテント街の出現

がれきの合間を歩く子供。その隣に国連車両

画像提供, Getty Images

ガザ地区は長さ41キロ、幅10キロの狭い土地だ。西には地中海、それ以外の三方はイスラエルとエジプトがそれぞれ境界を封鎖している。そしてこの狭い土地のほとんどが今や、人が住めない場所と化している。

多くの地区が丸ごと壊滅した。かつて温室が並んだ農地は、イスラエル軍が重機や戦車で更地にしたため、もはや砂とがれきしか残っていない。

戦争の前にはガザ地区の住民約220万人の大半が、四つの主要都市に住んでいた。南部のラファとハンユニス、中部のデイル・アル・バラフ、北部のガザ市だ。ガザ市には実に77万5000人が住んでいた。しかし今ではほとんどすべての住人が、家を追われた。

ガザ住民の90%が域内避難を余儀なくされた様子を示す表

イスラエルが軍事作戦の重点を変えるごとに、住民は何度も住む場所から立ち退かされた。ガザ地区はワディ・ガザ川を境にほぼ半分ずつ南北に分かれる。イスラエルは当初は北部の住民に、このワディ・ガザ川より南へ移動するよう命令した。さらにその後、南部でも移動を命じ、南部の中でいくつかの避難先を相次いで指示した。

人工衛星画像から、エジプトとの境界に近い地中海沿岸のアル・マワシ地区に、大量のテントが設置された様子がわかる。狭いこの地区は、以前はほとんど農地だった。イスラエルは今年1月に、ここを「人道地区」に指定した。

地中海沿岸のアル・マワシ地区を2023年5月と2024年9月に撮影した人工衛星画像。前はなかったテントが所狭しと並ぶようになっている

イスラエルは今年5月、100万人以上が避難していた南部ラファへの地上侵攻を開始。その後、「人道地区」の範囲を拡大し、ハンユニスとデイル・アル・バラフの一部も対象にした。

しかしイスラエルはそれ以降、ハマスが民間人に紛れて活動拠点にしていると、さまざまな地区を攻撃し続け、それに伴い「人道地区」の範囲は繰り返し狭められた。

アル・マワシ地区の広さは現在、約50平方キロ。生活に不可欠なインフラや衛生設備などが欠けるこの場所に、推定180万人が避難している。

ガザ中部と南部で国連が設置した緊急シェルターでは、過密状態が大きな問題になっている。収容能力をはるかに超えてしまっている場所もある。ほかには、テントや、にわか仕立てのシェルター、屋外や海岸で暮らしている人たちもいる。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)は、これから訪れる雨季に大雨や浸水が続けば、「ただでさえ悲惨」なガザの生活状況がますますひどくなるばかりだと警告している。

避難先で壊れたテントを示す男性

画像提供, Getty Images

食料難

国連世界食糧計画(WFP)など国連機関や非政府組織のデータをもとに、食料不安を科学的に計測する世界標準「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」によると、ガザ地区全域で50万人近くが壊滅的な飢えに苦しんでおり、飢饉(ききん)のリスクが高い。

現在の紛争が起きる前でも、ガザの人口の約8割が、人道援助を必要としていた。

ガザに入る物資輸送のトラックが開戦前から激減している様子を示すグラフ

昨年10月7日の後、イスラエルとエジプトが境界の検問所を閉鎖した際、援助物資の搬入は約10日間、完全に停止した。搬入再開後も以前の量よりはるかに少なく、国連によると今年9月にガザ地区に入った援助物資のトラックは1日約50台だった。

国連のこの数字にイスラエル政府は異を唱えているが、イスラエルの公式データでさえ、9月に入った台数は1日わずか142台だとしている。この1年で最も多かったのは4月で、1日226台だった。

国連食糧計画は今年3月、住民が必要とする最も基本的な食料の必要性に応えるには、少なくとも1日300台のトラックがガザに入り、食べ物を配布する必要があると指摘した。このような規模の援助提供は、紛争開始以来、実現していない。

食事の配給に集まる人たち

画像提供, Getty Images

この状況は、イスラエル軍が援助物資の配送を規制していることや、敵対行為が続き、法と秩序が崩壊していることのせいだと、国連関係者は非難する。

これに対してイスラエルは、ガザ地区内に搬入できる物資の量は何も制限していないと反論し、物資が配られないのは国連機関のせいだと批判する。イスラエルはさらに、ハマスが物資を盗んでいると主張するが、ハマスはこれを否定している。

援助機関のスタッフも空爆で殺害されているほか、イスラエル兵から発砲されたと報告している。群衆が援助物資のトラックから物資を略奪する様子も、報告されている。

国連によると、援助機関がガザ全域で1日60万食を提供しているものの、物資の不足のせいで、9月には食料配給を受けられなかった人が140万人を超えた。

貧困の急増

ガザ地区の経済も、この紛争で壊滅的な打撃を受けている。世界銀行によると、2024年第1四半期(1~3月)にガザ地区の域内総生産は86%縮小した。パレスチナ自治区全体にとっても、記録上過去最大の経済縮小となった。

世界銀行はさらに、人口の100%近くが現在、貧困の中で生活していると指摘。戦争前は64%だった。生活必需品の値段は250%近く上昇しているという。

ガザで生活必需品の価格が急騰している様子を示す表

医療施設の多くは、攻撃被害や物資・燃料の不足から、機能できずにいる。

イスラエル軍は、ハマスが各地の病院を軍事目的で利用していると主張し、多くの病院を襲撃した。ハマスも病院関係者も、イスラエル軍の主張を否定している。

ガザ市のアル・シファ病院はかつてガザ有数の大規模医療施設だったが、イスラエルの攻撃で大破した。ただし現在、救急医療部門は再開している。IDFはこの病院に対して2回にわたり大規模な作戦を実施した結果、数百人の「テロリスト」を殺害もしくは拘束し、「病院内の随所」で武器や機密情報を発見したとしている。

国連の世界保健機関(WHO)によると、ガザ地区内の36病院のうち部分的にでも機能しているのは17カ所だけだという。

破壊されたガザ市のアル・シファ病院

画像提供, Getty Images

再建の見通しは……

人的な被害のほかにも、ガザ地区の被害を修復するには長い時間が必要になると、国連環境計画(UNEP)は警告するる。

水道と衛生設備は「ほぼ完全に使えなくなっている」ほか、難民キャンプやシェルター周辺ではごみが山積みされていると、UNEPは指摘。さらに、破壊された太陽光パネルや使われている弾薬などから漏れる化学物質が土壌や水源を汚染する危険もあるという。

加えて、戦争の破壊によるがれきは、推定4000万トンにも達する。

UNEPによると、戦争によるがれきと爆発物の破片を取り除くだけで、15年間と5億ドル以上がかかる可能性がある。

1年間で生じた建物のがれきは、2008年以来のすべてのイスラエル・ガザ紛争で生じたものの14倍だと示す表

UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は、「ガザの環境被害は深刻で、拡大している。そのため、住民にとって再建の道は厳しく長いものになる」と話している。

イスラエルはこのところ、レバノンに意識を向けているものの、ガザでの作戦も続けている。

そして、紛争終結の見通しがまるで立たない状態では、ガザの暮らしが平常に戻るには、長い時間がかかるだろう。

ガザ市近くの海岸の、2022年8月と2023年11月の写真が比較されている。前者では多くの人が砂浜で楽しんでいるが、後者では砂浜や終戦施設が破壊され、イスラエル軍の戦車が停まっている