アメリカ各地で「王はいらない」 反トランプ抗議に数百万人

米連邦議会議事堂を背に、王冠をかぶったトランプ氏を模したパペットを手にする人たち

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画像説明, トランプ政権に反対する「王はいらない」抗議がアメリカ各地で行われた(18日、ワシントン)

グレイス・イライザ・グッドウィン(ニューヨーク)、ケイトリン・ウィルソン(ワシントン)

アメリカ各地で18日、ドナルド・トランプ政権に抗議する「No Kings(王はいらない)」集会が開かれ、主催者によると700万人近くが参加した。ニューヨーク、首都ワシントン、シカゴ、マイアミ、ロサンゼルスなどで、大勢がトランプ大統領の政策に反対した。

ニューヨーク市の有名なタイムズ・スクエアとその周辺の通りには大勢が集まり、「君主制ではなく民主主義」、「憲法順守は自分の都合で選ぶものじゃない」などのスローガンが書かれたプラカードを掲げた。

かねて計画されていたこの日のデモに先立ち、トランプ氏の支持者らは抗議者たちが極左「アンティファ」運動と関係しているとし、「反米集会」だと批判していた。複数の州では州兵が動員された。しかし主催者側は、各地の一連の「王はいらない」集会は平和的だったと述べている。

トランプ氏は今年1月にホワイトハウスに復帰して以来、大統領権限の範囲を拡大。さまざまな大統領令を駆使して連邦政府の一部を解体し、各州知事の反対を押し切り州兵を複数の都市に派遣するよう命令してきた。

トランプ氏はさらに、自分が敵と見なす相手を起訴するよう、司法長官らに要求している。

トランプ氏は、自分の行動は危機的状況にある国を再建するために必要なものだと主張。まるで独裁者やファシストのように振る舞っているとする自分に向けられた非難を、ヒステリックな過剰反応だと一蹴している。

しかし政権を批判する人たちは、政権の一部の動きが違憲で、アメリカの民主主義への脅威だと警告している。

保守派FOXニュースが17日に予告を公表したインタビューの中で、トランプ氏は「向こうは私を王と呼んでいる。自分は王じゃない」と述べている。

ニューヨークでは太鼓の音が鳴り続ける中、トランプ氏に抗議する抗議者たちが「民主主義とはこういうものだ」と繰り返し連呼した。上空にはヘリコプターやドローンが飛び交い、警察が周囲を警備した。

ニューヨーク市警は、市内の5行政区全体で10万人以上が集まったと発表。抗議活動に関連した逮捕者は出ていないとした。

動画説明, 「王はいらない」デモに多数参加 米各地でトランプ氏に抗議

フリーライター兼編集者のベス・ザスロフ氏は、トランプ政権下で「ファシズムと権威主義的政府への傾倒」が進んでいることに憤り、動揺しているので、ニューヨークの抗議に参加したのだと説明した。

「私はニューヨーク市をとても大切に思っています。ここに多くの人々と一緒にいることで希望が持てます」とザスロフ氏は話した。

さまざまなプラカードのほか、星条旗を掲げる人もいる。老若男女が集まっている

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画像説明, ニューヨークのタイムズ・スクエアに集まった人たち。参加者は、「ICEはNYCから出ていけ」、「警告:私たちの民主主義が攻撃されている! 抵抗して反乱して取り返そう」、「ここに来るのに金など受け取っていない。エプスティーン・ファイルを公表しろ」など、さまざまなプラカードを掲げている。
白髪交じりの短い髪のザスロフさんが笑顔でカメラを見ている。周りにも「王はいらない」「トランプに国を明け渡すな」などと書かれたプラカードを手にした人が大勢いる

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画像説明, 「王はいらない ニューヨーク市。憎悪も恐怖もいらない。ここは移民を歓迎する」と書かれたプラカードを手にしたザスロフ氏

イタリア出身でニュージャージー州在住の元電子技師マッシモ・マスコリ氏(68)は、今のアメリカがかつてのイタリアと同じような道を歩んでいるのではないかと懸念し、抗議に参加したとBBCに話した。

マスコリ氏は、とりわけトランプ政権による移民摘発や、数百万人のアメリカ人に対する医療費削減を懸念しているという。

「最高裁にも、政府にも、議会にも頼れない。今では立法・行政・司法のすべてがアメリカ国民に敵対しています。だから私たちは闘っている」

大勢の抗議者が行進する前で、キャップとサングラスをつけたマスコリ氏がカメラに向かって立っている

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画像説明, デモに参加したマスコリ氏。「臆病者、負け犬、ごろつき! お前たちはICEに入れ!」と移民関税執行局(ICE)を揶揄(やゆ)するシャツを着て、「これが民主主義の姿だ」と書かれたプラカードを手にしている
カエルの着ぐるみを着た人や、星条旗を持つ人などがさまざまなプラカードを手に並んでいる。

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画像説明, オレゴン州ポートランドで「カエル」の着ぐるみ姿でICEに抗議する人の動画が広く拡散して以来、「カエル」がトランプ政権への抗議を象徴するようになっている。ミズーリ州カンザスシティーで撮影されたこの写真では、カエル姿の人が、「体制に対して怒れ」、「HOP(ぴょんと飛ぶジャンプ)なしにHOPEはない」、「ゲコゲコ、抵抗、繰り返せ」と書かれたプラカードを手にしている
ピンクのサメの着ぐるみの人、顔に星条旗を塗った人などが集まっている。「ファシズムは絶対に敗れる」と書かれたプラカードを持つ人もいる

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画像説明, 首都ワシントンでもさまざまな着ぐるみ姿の人たちも抗議に参加した。アメリカを象徴するハゲワシ姿の人は「ファシズムの危険な兆候」と書かれたプラカードを持っている

トランプ氏と今回の抗議活動について、アメリカの世論は割れている。

ロイター/イプソスによる最近の世論調査では、トランプ大統領の支持率は40%で、不支持率は58%だった。大統領の任期が進むにつれて支持率が下がるのは通常のことで、ジョー・バイデン前大統領の支持率は2021年1月時点で55%だったが、同年10月には46%に低下していた。

右派の一部は、今回の抗議活動を「アメリカ憎悪」の集会だと非難しているが、18日の抗議に参加した人々は、右派の主張は事実と異なると反対する。

首都ワシントンの集会で演説したバーニー・サンダース上院議員(無所属、ヴァーモント州選出)は、「私たちはアメリカを憎んでいるからここにいるのではない。アメリカを愛しているからここにいる」と強調した。

クリス・マーフィー上院議員(民主党、コネチカット州選出)は、地元コネチカット州で大勢が抗議に参加した様子の映像をソーシャルメディアで拡散し、「すごい。だからこそこの日は、この国250年の歴史で最大の平和的抗議の日として記録されるだろう」と書いた。

ヤシの木や緑にが並ぶ明るい通りを大勢が歩き、星条旗やさまざまなプラカードを掲げている。おむつをしたオレンジ色の「赤ちゃんトランプ」の大きい風船もいる

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画像説明, トランプ氏に抗議する集会ではおなじみになった「赤ちゃんトランプ」がロサンゼルスに登場した。「NO KINGS(王はいらない)」と書かれたプラカードも複数掲げられた

しかし、複数の州の共和党知事は抗議に先立ち州兵を待機させていた。CNNによると、カンザス州選出のロジャー・マーシャル上院議員(共和党)は事前に、「州兵を出動させないとならない。平和的であってほしいが、そうは思えない」と警告していた。

テキサス州のグレッグ・アボット知事は州都オースティンで、「アンティファと関係がある計画的なデモ」があるとして州兵を動員した。オースティンでの抗議は平和的で、約3万人が参加した。

ヴァージニア州のグレン・ヤンキン知事も州兵の動員を命じた。ただし地元報道によると、抗議の現場に部隊はいなかったという。

首都ワシントンでは、トランプ大統領の要請により8月から州兵が配備されているが、抗議現場では部隊の姿は確認されなかった。

首都での抗議に参加した一人は、「私はアンティファだ」と書かれたプラカードを掲げていた。チャック・イープス氏(86)は、「アンティファ」という単語は対立を生む、さまざまな意味を持つ言葉だが、自分は「平和、保育、生活賃金、医療」を支持しているだけだと語った。「(トランプ氏は)全員をだまそうとしている。でもうまくいっていない」とイープス氏は述べた。

厳しい表情で大勢が集まっている

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画像説明, ロンドンのアメリカ大使館前にもトランプ政権に抗議する人たちが集まった。「弾劾、追放、有罪、繰り返す」と書かれたプラカードや、「アメリカを再び……優しく賢く安全で寛容で正直で民主的にしよう」と書かれたプラカードを参加者らは掲げた。「TRUMP」の頭文字をとって「独裁者(T)、人種差別主義者(R)、さんだつ者(U)、女性嫌悪者(M)、小児性加害者(P)を否定する」と並べたプラカードもあった

抗議活動はアメリカ内にとどまらず、ベルリン、マドリード、ローマなどヨーロッパ各地でも連帯の意思を示すデモが行われた。

ロンドンでは、数百人の抗議者がアメリカ大使館の前に集まった。カナダ・トロントでも、アメリカ領事館付近で「カナダに手を出すな」と書かれたプラカードを掲げる抗議者の姿が見られた。

(追加取材:アナ・フェイギー)