台湾総統選、与党・民進党が勝利 中国は「主流民意を代表できない」と反発

台湾総統選に勝利した与党・民主進歩党(民進党)の副総統、頼清徳氏(左)と、副総統になることが決まった蕭美琴・前駐米代表(右)(13日、台北)

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画像説明, 台湾総統選に勝利した与党・民主進歩党(民進党)の副総統、頼清徳氏(左)と、副総統になることが決まった蕭美琴・前駐米代表(右)(13日、台北)

台湾で13日、台湾・蔡英文総統の後継を決める総統選挙の投開票が行われ、与党・民主進歩党(民進党)の副総統、頼清徳氏が勝利した。台湾の自治権を主張する民進党が政権を維持したことで、中国との関係や、米中関係への影響が注目されている。中国政府は同日深夜、民進党が「島内の主流の民意を代表できないことを示した」とコメントした。

台湾中央選挙委員会の開票速報によると、現地時間午後10時(開票率100%)の時点で、頼氏は得票率40.05%を獲得。中国国民党の侯友宜氏は33.49%、民衆党の柯文哲氏は26.46%。

頼氏は558万6019票を得た。次点の中国国民党の侯氏は得票数467万1021票で、大きく差がついた。 現地報道によると、総統候補が500万票以上を獲得するのは初めてという。投票率は71.86%だった。

侯氏と柯氏は、共に現地時間午後7時(日本時間午後9時)ごろに敗北を宣言した。

副総統には、外交官の蕭美琴氏が就任する。蕭氏は過去3年間、台湾の駐米代表を務めた。この役割を担った最初の女性でもある。

退任する蔡英文総統は、台湾は民主主義を維持するのだという揺るぎない決意を世界に示す選挙結果だと歓迎した。

「世界は台湾の選挙に注目しており、台湾の民主主義の価値を見抜いている」と蔡氏は述べ、「どのような困難や圧力があっても、民主主義を維持するという私たちの決意や、台湾と自由に対する私たちの愛情を打ち砕くことはできない。そのことを世界に示した」と強調した。

蔡氏の正式な退任と頼氏の後継就任は、5月に予定されている。中国からの自治権を主張する民進党政権は、歴史的な3期目に突入する。

「民主主義国家の共同体にとっての勝利」

頼氏は民進党の選挙本部で勝利演説を行い、「台湾は民主主義国家の共同体にとっての勝利を収めた」と述べた。

「我々の民主主義に新章を刻んでくれた台湾の人々に感謝したい。我々は、民主主義をどれほど大切にしているかを世界に示した。これは揺るぎないコミットメントだ」と、次期総統は強調し、「台湾の人たちは行動を通じて、選挙に影響を与えようとする外部勢力からの活動に抵抗し、成功した。自分たちの総統を選ぶ権利を持つのは台湾の人々だけだと、私たちは信じている」と話した。

頼氏は他方、総統選と共に行われた立法院(議会)の立法委員(議員)選挙に言及。民進党は過半数の議席を取れず、努力が足りなかったと述べた。

「今回の選挙は、人々が効果的な政府と強力な抑制と均衡を期待していることを示した。我々はこうした意見を十分に理解し、尊重する」

議会で過半数議席を獲得できなかったため、台湾は今後、コミュニケーションと協力の政治環境を構築しなくてはならないと頼氏は言い、対立候補者の政策を注意深く研究すると付け加えた。頼氏は、異なる政治的背景を持つ人材を政権に招き入れると公約している。

中国との関係については、「中国からの継続的な脅威や脅迫から台湾を守る決意がある」と発言した一方で、台湾海峡両岸の現状維持を望んでいると語った。また、台湾海峡の平和と安定を維持することは重要な責任であり、中国との交流において「対立に代わる対話を用いる」と付け加えた。

中国は台湾の有権者に対し、頼氏に投票しないよう警告していた。

頼氏は2017~2019年に行政院長(首相)を務めた。その際には自身を、「台湾独立のための現実的な労働者」だと説明した。

米ハーヴァード大学で公衆衛生学の修士号を取得し、1990年代に政界入りするまで腎臓内科医として働いていた。台南市で議員となった後、2010年に同市市長に当選。得票率73%という前例のない支持を得て2014年まで同職に就いていた。

総統選において頼氏は、台湾は中国と「友人」になるのを望んでいると繰り返し述べていた。昨年8月にはブルームバーグの取材で、「敵にはなりたくない。友人になれるはずだ。そして中国が台湾のように民主主義と自由を謳歌(おうか)するのが見たい」と語った。

支持者を前に敗北を認めた、最大野党・国民党の侯友宜氏(13日夜、台北)

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画像説明, 支持者を前に総統選の敗北を認めた、最大野党・国民党の侯友宜氏(13日夜、台北)

敗北した国民党の侯氏は集会で支持者に対し、「皆さん、ありがとう。私はベストを尽くしたつもりだが、政権交代を成し遂げることができず、とても残念だ」述べた。

その上で頼氏の勝利を祝福し、「すべての政党が、台湾の課題に立ち向かえるよう願っている。我々は団結した台湾を必要としている」と語った。

民衆党の柯氏も集会で支持者に感謝し、諦めないよう求めた。集会には若い支持者が多く、涙を浮かべている人もいた。

「我々はすでに多くの奇跡を起こした。今回の選挙で、台湾は青(国民党)と緑(民進党)以外の別の声を、本当に必要としていることがわかった」と、柯氏は語った。

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台湾は自治政府を有する民主的な島だが、中国は自国の一地域だと位置づけており、国際的にも国として認められていない。また、アジアでの優位を争う中国とアメリカの争いにおいて、重要な火種となっている。

「民意代表できない」と中国、アメリカは関係維持を期待

中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は13日夜、台湾での選挙結果を受けて談話を発表。「民進党が(台湾)島内の主流の民意を代表できないことを示した」と指摘し、「今回の選挙は、祖国がやがて必ずや統一されるという、阻止できない流れを妨げられない」と強調した。

一方で、台湾を強く後押しするアメリカは、頼氏の勝利を速やかに祝福した。

アントニー・ブリンケン国務長官は声明で、「台湾の人たちがまたしても、旺盛な民主制度と選挙手続きの力強さを示したことに、祝意を表したい」と述べた。さらに、「アメリカは、海峡両岸の平和と安定を維持することを重視している。さらに、強制や圧力のないまま違いを平和的に解決することを重視している」と強調し、頼氏をはじめ台湾の全政党幹部と共に「共通の利益と価値観を推進」し、台湾関係法や共同宣言、6項保証など従来の指針に沿って「かねて続く非公式の関係を前進させる」方針を示した。

これに先立ち、ジョー・バイデン米大統領は選挙結果を受けて、アメリカは台湾の「独立を支持していない」と記者団の質問に答えている。

慎重なバランス

中国はかねて頼氏を「徹底的なトラブルメーカー」と呼んでいるが、今回の勝利は、中国政府のこうしたプロパガンダや圧力を台湾の人々が絶対的に拒否すると示す結果になると、台北で取材するBBCのルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ記者は説明した。

一方で同記者は、頼氏が中国との関係全体について極めて慎重になっていると指摘。勝利演説でも、その後の記者会見でも、非常に慎重に言葉を選び、相互尊重に基づく対話と協力を提案したと伝えた。

中国政府は、頼氏が台湾独立を主張していた若い頃の過激な言動から、頼氏が台湾独立派だと非難し続けてきた。

しかし頼氏は、慎重にバランスを取り続けた蔡総統の統治スタイルを踏襲すると方針を示すことで、台湾とその同盟国・アメリカを安心させようとしてきたと、同記者は解説した。

動画説明, 民進党の頼清徳氏が勝利、台湾総統選で見えた人々の思いは

<解説>中国との関係はどうなるのか――セリア・ハットン・アジア太平洋地域編集長

中国はこの8年間、民進党の蔡英文総統を厳しく批判してきた。そのため今回の選挙では、頼氏が蔡氏以上に中国との関係を悪化させるのではないかとの懸念があった。

しかし、頼氏の支持者らは反対のことを主張していた。本当に危険なのは国民党が勝利することだと。もしそうなれば、中国共産党幹部は台湾との関係改善だけでは飽き足らず、むしろ一気に台湾統一を求めて動くだろうと。

台湾ほど、自由で公正な選挙への強いコミットメントを示す若い民主主義国家はほかにあまりない。

また、台湾の半導体産業が脅かされたり、停止したりすれば、私たちのコンピューターや携帯電話、自動車、医療機器の多くに使われているシリコンチップが枯渇することになる。

台湾はまた、米中関係の中心にある火種のひとつでもある。

だからこそ、大勢が固唾をのんで今回の選挙結果を注視していた。それほど大事な選挙だったのだ。