ゼレンスキー氏、訪米 米政府の支援遅れはプーチン氏にとって「願ったりかなったり」と

動画説明, ゼレンスキー大統領、「アメリカに期待したい」 ワシントンで演説

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が11日、米ワシントンを訪問し、ウクライナへの支援継続を強力に訴えた。米連邦議会でウクライナ追加支援の法案成立が滞る中、ゼレンスキー氏は米国防大学で米軍関係者を前に演説し、ウクライナは自国の自由のためだけでなく、世界の民主主義のために戦っているのだと強調した。ゼレンスキー氏にとって、ロシアとの戦争が始まって以来、3度目の訪米となる。

米連邦議会の上院は6日、ウクライナへの軍事支援を含む大型支出法案を51対49で否決した。野党・共和党がウクライナ支援と引き換えに求めていた、アメリカ国境の警備強化をめぐって合意に至らなかった。1060億ドル(約15兆6000億円)の支出案には、ウクライナ支援のほか、イスラエルと台湾への軍事支援が含まれていた。

ゼレンスキー氏はワシントンの国防大学での演説で、支援法案の成立を阻止している野党・共和党を批判し、米政府の追加支援が遅れることは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとって「願ったりかなったり」だと強調。「米議会で課題が解決されない状態に盛り上がる人がいるとするなら、それはプーチンと、プーチンの病んだ一味だけだ」と述べた。

ゼレンスキー氏は12日にホワイトハウスでジョー・バイデン大統領と会談し、同様に援助継続を訴える見通し。さらに、ウクライナへの軍事支援継続に否定的なことで知られる、マイク・ジョンソン下院議長(共和党)とも会談予定。

ホワイトハウスは10日、ゼレンスキー氏の訪米についてコメントを発表し、「ロシアの残酷な侵略から自分たちを守るウクライナの人たちを、アメリカは揺るぎなく支えるのだと強調するため」バイデン大統領がゼレンスキー大統領をホワイトハウスに招いたのだと説明。「ロシアがウクライナへのミサイルやドローン攻撃を強化する中、ウクライナが何を緊急に必要としているか、そしてこの緊急時にアメリカの支援継続がいかに重要かを、両首脳は協議する」と述べていた。

上院の共和党議員団は、メキシコとの国境警備強化の重要性を訴え、600億ドル相当のウクライナ支援継続に賛成しなかった。共和党議員たちは、アメリカに政治亡命を求める移民対策の改正も求めている。

共和党のジェイムズ・ランクフォード上院議員(オクラホマ州選出)は11日、米NBCニュースに対して、「正直言って、我々はアメリカで実際に何が起きているかを見ずに、外国を助けたりしない」のだと述べた。連邦議会がウクライナの利益を優先してアメリカの国境警備を無視するなど、有権者は望んでいないとして、ゼレンスキー氏の訪米で意見を変える議員はいないだろうと話した。

バイデン政権は難民制度について一定の変更を受け入れる姿勢を示しているが、こうした譲歩は与党・民主党内のリベラル派の怒りを買う恐れがある。民主党は現在、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争においてバイデン政権がイスラエルを支持し続けていることを受け、党内の不一致が拡大している。

バイデン大統領は議会に、ウクライナ追加支援を可決するよう強く訴えている。6日のテレビ演説では、「プーチンがウクライナを奪えば、彼はそこで終わりになどしない」と警告した。

今年6月に始まったウクライナの反転攻勢は、西側諸国が期待したほど戦況を好転させないまま膠着(こうちゃく)し、ウクライナに軍事支援を続けてきた西側の一部では支援疲れの様相が出ている。

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こうした中でゼレンスキー大統領は11日、アメリカの支援が続けばウクライナ軍はロシア軍を破ることが可能だと強調した。

「アメリカのブラッドリー戦車、(高機動ロケット砲システム)ハイマース、155ミリ砲弾、(長射程地対地ミサイル)ATACMS、パトリオット(ミサイル)、そしてF16戦闘機が、欧州でやるべきことを達成できる。世界の自由が必要としている、その通りの形で」と、ゼレンスキー氏は力説した。

「世界中が私たちを見ている。他の自由な国がどういう運命をたどるのか、観察している。自由に生きるのか、それとも征服されるのか。ウクライナ人は諦めていないし、決して諦めない」

ウクライナと欧州連合(EU)との関係も、重要な局面を迎えている。14~15日に開かれるEU首脳会議では、ウクライナのEU加盟交渉を本格開始するかどうか決まる可能性がある。

ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相はすでに、加盟交渉に反対する方針を示している。

オルバン首相とゼレンスキー大統領は10日、アルゼンチン大統領の就任式に同席し、しきりに話し合う様子が見られていた。会話の詳細は明らかになっていないが、ゼレンスキー氏はソーシャルメディアに投稿した毎晩定例の国民へのメッセージ動画で、ブエノスアイレスでオルバン首相と話をしたと報告し、「欧州に関する、非常に率直なやりとりだった」と述べた。

動画説明, アルゼンチン大統領就任式の場で、熱心に話し合うゼレンスキー大統領とオルバン首相(音声なし)