米政府、ウクライナ支援の資金が「緊急に必要」 議会に警告

アンソニー・ザーカー北米担当編集委員

ウクライナ東部アウディイウカ村の近郊で砲撃するウクライナ軍

画像提供, Getty Images

画像説明, ウクライナ東部アウディイウカ村の近郊で砲撃するウクライナ軍

アメリカの政府がウクライナへの追加支援の必要性を強く訴えている。しかし議会は、ウクライナの戦費を補うことになる妥協案にまだ当分、同意しそうにない。

政府の行政管理予算局のシャランダ・ヤング局長は、共和・民主両党の指導者に公開書簡を送付。「私たちには資金がない。時間もほとんどない」とし、議会が年末までにウクライナへの軍事支援を承認しなければ、ロシアと戦っているウクライナの努力をくじくことになり、資金源となる「魔法のつぼ」も残っていないと述べた。

ウクライナでの戦争が始まった昨年2月以来、米議会はウクライナに対する1100億ドル(約16兆2000億円)以上の軍事・経済支援を承認している。

ジョー・バイデン政権は数カ月前から、すでにその大半が使われたとしてきた。

だが、野党・共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、数百億ドル規模の追加の資金拠出について消極的な姿勢を示している。

ジョンソン氏は4日、「バイデン政権は、下院の正当な懸念に何一つ実質的な対処をしていない。ウクライナにおける、明確な戦略、紛争解決への道筋、米納税者の支援に関する説明責任を適切に果たす計画が、すべて欠如しているという懸念だ」とソーシャルメディアに書き込んだ。

ウクライナ支援の資金の遅れは、すでに戦場で非常に現実的な結果をもたらしていると、米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」の重要脅威プロジェクトのディレクターで、元米陸軍士官学校教授のフレデリック・ケイガン氏は言う。ロシアに対する反転攻勢は縮小され、領土奪還のための今後の作戦も疑問視されているという。

「ウクライナ人はここで難しい選択を迫られている。「アメリカから他に何かもらえるという確信がないなら、今あるものを節約するしかない」

ケイガン氏によると、ウクライナ軍は戦車、装甲兵員輸送車、戦闘機、ドローン(無人機)、長射程兵器を必要としている。これらを迅速かつ十分に提供できる国はアメリカしかないという。

<関連記事>

ウクライナへの追加支援については、政府が要求する614億ドル(約9兆円)の水準に達しないとしても、必要性については上下両院で超党派の多数議員が認めている。しかし、議会の支持を大統領が署名可能な法案にするのは、かなりの難題だ。

米上院では現在、共和党と民主党が1060億ドル(約15兆6000億円)というさらに大規模な支出案について交渉中だ。これにはウクライナ支援のほか、イスラエルと台湾への軍事支援や、メキシコ国境の警備資金の増額が含まれている。

国境警備は、政治的に大きな問題となっている。民主党議員らが、アメリカへの入国を難しくする変更などに難色を示している一方、共和党からは「ウクライナに追加資金を拠出する見返りに、国境政策の大幅で実質的な改革が必要だ」(トム・コットン上院議員、アーカンソー州選出)といった声が出ている。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、軍事支援法案を今週中に採決に持ち込むと表明している。しかし、移民対策で両党が合意しない限り、採決で共和党から十分な支持を得られるかは不透明だ。

仮に法案が上院を通ったとしても、下院での見通しは不透明だ。ジョンソン議長は追加支援を支持すると述べているが、9月には共和党の116議員と共に、ウクライナへの3億ドルの追加の安全保障支援について反対票を投じている。

キーウ市内の壁面には、米国製の対戦車ミサイル「ジャヴェリン」を持つウクライナ兵の絵が描かれている

画像提供, Getty Images

画像説明, キーウ市内の壁面には、米国製の対戦車ミサイル「ジャヴェリン」を持つウクライナ兵の絵が描かれている

政府は議会の支持を取り付けるため、ウクライナへの追加支援は、国内各地で軍需品の製造にも使われると説明している。

大統領選挙の年が近づくにつれ、議員たちが自分たちの行動がいかに選挙区の地域経済に役立っているかをアピールする方法を探していることを、ホワイトハウスは期待しているのかもしれない。

アメリカン・エンタープライズ研究所のケイガン氏は、ウクライナでの紛争が3年目を迎えようとしている今、ウクライナへの支援が米国内で政治的議論のテーマとなっていることに、驚きはないと話した。

「アメリカ国民は自分たちの代表(の議員)らに、国益について徹底的に議論し、大金の使い方について中身のある議論をさせることができる」

しかし、何が肝心なのははっきりしていると、ケイガン氏は言う。

「この戦争の結末は、第一に、ウクライナ人が何ができるかによって決まる。だが、それと同じくらい大事な第二の要因として、アメリカの選択がある」