チャールズ英国王の戴冠式、一般市民も忠誠誓う機会 古い伝統と新しさ

King Charles smiles at the camera as he wears a blue and white turban to cover his head and an orange and cream shawl around his shoulders on a visit to India.

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画像説明, 新しく更新された戴冠式の式次第は、複数の宗教を尊重する国王の姿勢を反映したものになる。写真は、2019年のインド訪問時にターバンやショールを身に着けた、皇太子時代のチャールズ国王

5月6日にロンドンで予定されるイギリス国王チャールズ3世の戴冠式について、カンタベリー大主教の公邸ランベス宮殿は29日、式次第の概要を発表した。それによると、伝統的には貴族諸侯のみだった国王への忠誠を誓う機会が変更され、誰でも敬意を表明できるようになるほか、女性聖職者や複数宗教の代表が初めて式の進行に参加するなど、古来の伝統に21世紀のイギリスらしい特徴を加えた式典になる。

ウェストミンスター寺院で行われる戴冠式の式次第は「奉仕」をテーマにしたもので、「初めて」の要素がふんだんに盛り込まれた。女性聖職者や複数の信仰の代表が初めて式の進行に関わるほか、国王自身が声を出して祈る。

また、ウェールズ語、スコットランドのゲール語、アイルランドのゲール語で聖歌が歌われる。これによって、イギリス国内で使われる複数の言語が、初めて式の中で使用される。

一方で、式典の核心となる国王による3つの誓いは従来の文言のままで、「プロテスタント改革宗教」を護持するという約束も変わらない。

一般市民は初めて戴冠式に参加する機会を得ることになった。世界中の人が声をあげて国王をたたえ、忠誠を誓える場面が用意される。

伝統的には世襲貴族が新しい君主に忠誠を誓う「諸侯の称賛」と呼ばれたものの代わりに、今回は「人々の称賛」として、寺院内や中継で見ている全員が国王に忠誠を誓うことができる。

ランベス宮殿によると、この「数百万人の声」の個所では、「寺院とそれ以外の場所で、望む者は誰もが共に述べましょう」という呼びかけに続き、「国王陛下と、あなたの後継者たちに、法の下、神の助けのもと、真の忠誠を尽くすと誓います」と一斉に唱えることになる。このあとに管楽器のファンファーレが鳴らされる。

続いてカンタベリー大主教が「神よ、王を救いたまえ」と唱え、人々は「神よ、チャールズ国王を救いたまえ。チャールズ国王に長寿を。国王が永遠に生きますように」と応じることになる。

大主教の広報担当は、「人々による称賛はまったく新しいので、特に期待が高まる」と話した。「技術の進歩のおかげで、寺院の中にいる人だけでなく、オンラインやテレビで見ている人たち、音声を聞いている人たち、公園や大きいスクリーンの前や教会で集まっている人たちも、一緒に参加できる」。

「一般の人たちに参加するよう大主教が呼びかける時点で、自宅で見ている人やテレビで見ている人も、どこにいるにしても、声に出してほしい。国と世界のあらゆる場所で、国王を支える大きい声を上げてもらいたい」

King Charles (right) talks privately with the Archbishop of Canterbury, Justin Welby (left) who will lead the coronation service.

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画像説明, カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー氏(左)が、戴冠式を司式する

国王による誓いの文言は数百年前から不変で、キリスト教プロテスタントならではの表現を使っている。しかし大主教は今回、その「文脈」を現代に合わせたものにするという。

国王の誓いに先立ち大主教は、イングランド教会は「あらゆる信仰や信念の人たちが自由に暮らすことのできる」環境を作っていくと述べる。

「17世紀の宗教・文化の文脈は現在の、複数宗教のイギリスとは大きく異なる。そのため今回初めて、国王の誓いに先駆けて前置きを示す」と、ランベス宮殿の広報担当は話した。

BBCのアリーム・マクブール宗教担当編集長は、国王が誓いの内容を変更するのか、複数の信仰を擁護するという本人の意向を反映するのか、それともイングランド教会の伝統を重視する人たちの意向を優先するのか、ここ数年にわたり様々な推測が飛び交っていたと話す。

伝統的な誓いの言葉そのものは変えずに、その前にカンタベリー大主教が現代における文脈を説明するというのは、上手なやり方かもしれないが、あらゆる信仰を守ると国王が誓い国民との口頭契約の一部にすることはできなかったのか、進歩派は疑問視するだろうと、マクブール編集長は指摘する。

King Charles walks down a line of different faith leaders greeting them in a reception at Buckingham Palace after his accession to the throne.

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画像説明, 昨年秋の即位後、複数の宗教の指導者をバッキンガム宮殿に迎えたチャールズ国王

式典の最中には、ムスリム(イスラム教徒)、ヒンドゥー教徒、ユダヤ教徒、シク教徒(シーク教徒)の人々が、腕輪やローブ、指輪、手袋といった戴冠式用のレガリアをチャールズ国王に手渡す役割を担う。

その後、ヒンドゥー教徒のリシ・スーナク首相が、新約聖書の「コロサイ人への手紙」を朗読する。

また、今回の儀式では初めて、カトリック教会のヴィンセント・ニコルズ枢機卿など、異なるキリスト教宗派の指導者も祝福に参加する。

宗教的な儀式が終わった後、国王はユダヤ教、ヒンドゥー教、シク教、仏教の指導者からあいさつを受ける。

これは、宗教間の対話を支持し、イギリスで信仰されている主要な宗教をたたえることで、宗教間の結束を促進するという国王の深い信念を反映している。

ランベス宮殿の報道官は、このあいさつは「チャールズ3世の治世における宗教的多様性を反映する、前例のない行動」だと説明した。

ただし、ユダヤ教のラビ(聖職者)がマイクを含む電子機器を禁止する安息日を順守しているため、このあいさつはウェストミンスター寺院外で戴冠式を見ている人々には聞こえない。

An embroidered cloth screen is decorated with a large tree which represents the 56 member countries of the Commonwealth and three angels flying above it.

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画像説明, 国王が神に選ばれたことを示すため、聖油による聖別の儀式は帳(とばり)で覆われた状態で行われる

国王は、聖歌「我は汝に誓う、我が祖国よ」と、聖書の「ガラテヤ書」および「箴言(しんげん)」から着想を得た言葉を用いて、声を出して祈る。

今回の戴冠式には、史上初めて女性の聖職者がたずさわる。イングランド教会は2014年、女性が主教になることを認めた。

グリ・フランシス=ダカーニ・チェルムズフォード主教と、ローズ・ハドソン=ウィルキン・ドーヴァー主教が、カンタベリー大主教と共に聖餐(せいさん)式を執り行う。

ジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教は、戴冠式は「まず第一にキリスト教の礼拝行為だ」と話した。

「信仰のある人もない人も、この礼拝を共にするすべての人が、古来の知恵と新しい希望を見出し、感動と喜びを得ることができるよう祈っている」と大主教は期待を示した。

The new photos were taken in the Blue Drawing Room at Buckingham Palace

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画像説明, 週末には国王の新しい写真が公開された