ラーブ英副首相、「威圧的」「いじめ」指摘され辞任 「活動家公務員」を批判

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イギリスのドミニク・ラーブ副首相兼司法相(49)は21日、部下の公務員に対する「威圧的」で「横暴」な態度を指摘する調査報告書が公表されたのを受け、辞表をリシ・スーナク首相に提出した。辞任後にBBCの取材に応じたラーブ氏は、「活動家公務員」が政府の仕事を阻止しようとしていると反論した。
ラーブ氏については、閣僚として部下24人に対するパワハラ行為があったと正式な告発が8件あり、スーナク首相の指示のもと、ベテラン法廷弁護士アダム・トリー氏が事実関係の調査に着手していた。
トリー弁護士は20日に調査報告書を首相に提出。その中で、ラーブ氏が外相および司法相だった時期に、いじめに相当する複数の行為を繰り返していたと結論した。ラーブ氏は外相として「権力を乱用」し、司法相としては官僚に対し「威圧的な態度でふるまった」という。
かねて、自分がいじめやパワハラを行っていたという証拠が少しでも見つかれば辞任すると表明していたラーブ氏は、これを受けて閣僚を辞任した。
ただし、ラーブ氏は辞任にあたり、調査に「欠陥があり、危険な前例を作る」と批判した。
さらに、辞任後にはBBCのインタビューで、自分の行動を不快に思った人がいるなら申し訳ないことだと述べる一方、「それはいじめではない」と反論。また「受動的攻撃行動の習慣」がある「ごく少数の」公務員が、現政権による改革のうち、自分たちが気に入らないものを阻止しようとしている恐れもあると述べた。
他方、スーナク首相はラーブ氏への手紙で、調査報告書でいじめの指摘があれば辞任するとラーブ氏が約束していたのは「正しい」ことで、その約束を副首相は守ったのだと述べた。
その上で首相は、一連の手続きには「欠点」もあったとして、こうしたパワハラやいじめの申し立てについて対応方法をあらためて検討するよう、官僚に依頼したと明らかにした。
首相報道官は、ラーブ氏を副首相に任命したことをスーナク首相は後悔していないと述べた。
昨年夏と秋の保守党党首選で、ラーブ氏はスーナク氏を強力に支持した一人。そのラーブ氏が副首相と司法相を辞任したことで、内閣の顔ぶれが一部入れ替わった。スーナク氏は新しい副首相に腹心の盟友、オリヴァー・ダウデン内閣府担当大臣を任命。新しい司法相には、アレックス・チョーク国防担当閣外相を選んだ。
「いじめ」認める報告書
パワハラの申し立てを調べた法廷弁護士のトリー氏は報告書で、閣僚倫理規範に抵触する容認しがたい行動を、ラーブ氏が外相として、さらに司法相として繰り返していたと結論した。その行動の内容は、2021年に英高等法院が認めた「いじめ」の要件に見合うものだとも指摘した。
トリー弁護士はラーブ氏が、「仕事の会議において、不当かつ執拗(しつよう)に攻撃的だったという意味で、威圧的な行動」をとったと指摘。さらにその振る舞いには「(相手を)おとしめたり辱めたりする形での、権力の乱用や悪用」が含まれたという。
トリー弁護士はさらに、政府関係者との会議においてラーブ氏が「批評的なフィードバックを伝えるのに必要かつ適切な範囲を超えた形で、威圧的な態度をとった」と報告。ラーブ氏が「相手の仕事の質について、建設的ではない批判的な指摘をしていたという意味で、侮辱的だった(批判に相当するものだったかは別にして)」とも述べた。
ただし、ラーブ氏は「意図的に自らの行動で相手を不快にしたり辱めたりしようとしたのではない」し、「特定の誰かを標的にして特定の態度をとった」わけでもないという。
「ごく少数の活動家公務員が」=辞任後のラーブ氏

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スーナク首相への辞表でラーブ氏は、自分が司法省に持ち込んだ「ペースと基準と課題の結果、自分にそのつもりはなかったが、ストレスや不快を感じた政府関係者がいたなら」「本当に申し訳ないと思う」と謝罪した。
しかし、自分に対する告発のうち、調査の結果認められたた問題行動は2つだけだったとラーブ氏は指摘。「しかもその2つの結論には問題があり、優れた統治のあり方にとって危険な前例を作ったと思う」と批判した。
辞任後初のインタビューでラーブ氏はBBCに、謝罪したいか質問され、「自分がしたことのせいで誰かが傷ついたとしたなら、もちろんです。力強いチームがほしいので」と答えた。
「自分の部下だった大多数の公務員は素晴らしく有能で、私が持ち込んだと思う活力や挑戦や勢いをむしろ歓迎したと思う。もちろん誰かを不快にしたいとは思わないし、それについては謝りたいとはっきり申し上げた。でもそれは、いじめではないし、基準値がそれだけ低くなってしまうと、イギリス国民のために成果を実現できない」
「わざとではなく、特定の個人を対象にしたものでもなく、実際に正しいことで、それでも一部の人によって一部の人の気持ちが主観的に傷ついたことを問題視するなら、残念ながら成果を出すのはとても難しい」
BBCのクリス・メイソン政治編集長が「あなたと一緒に働くのは、悪夢みたいなことなんですか」と率直に尋ねると、ラーブ氏は「実のところ、私に対する申し立てのほとんどが退けられています」と答えた。
「ごく少数の、非常に活発な活動家公務員」が、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)や受刑者の仮釈放、人権問題などについて、政府の方針が気に入らないとして、それを阻止しようとしているのだと、ラーブ氏は主張した。
「ここからはいじめだという境界線がこれほど低く設定されてしまうと、閣僚がイギリス国民のために成果を実現するのは、ほとんど不可能になってしまう。効果的な政府を委縮させてしまうと思うし、イギリス国民がその代償を払う羽目になる」
今では多くの閣僚が、「政府内で真正面から公平に、新しい課題を持ち込んで取り組むよう求めたりしたら、私と同じ目に遭いかねないと、とても恐れている」のだとも、ラーブ氏は述べた。
次の総選挙に保守党の下院候補として出馬するかと聞かれると、ラーブ氏は「ことが落ち着くのを待つ」つもりだが、最終的に決めるのは地元選挙区(英南部エッシャー・アンド・ウォルトン)の保守党委員会が決めることだと答えた。
公務員労組の反論
ラーブ氏のこうした主張に対して、公務員労組「FDA」は「危険な陰謀論」だと強く反論。「自分の行動に対する独立調査による批判をかわすため」にラーブ氏が「公務員制度の不偏不党性と誠実性を損なっている」と批判した。
FDAのデイヴ・ペンマン委員長は、スーナク首相が「元仲間が好き勝手言うのをやめさせる」べきだと指摘。首相には、公務員制度の不偏性を擁護する義務があると主張した。
ラーブ氏の近くで働いた元省庁幹部の公務員はBBC番組「ニューズナイト」に対して、「彼はしばしば、部下の公務員の働きを表立ってたたえてきた」だけに、今回の発言は「それと矛盾する」と述べた。
別の元公務員は、「私の経験では、ほとんどの公務員は国民のために成果を出したいから仕事をしている。民主的選挙で公選された閣僚と公務員との関係は、通常はとても効果的で、長年の経験から確立したものだ。この関係を通じて、公務員は国民のために働いている」のだと話した。
「トリー弁護士の報告書で言われるような、機能不全状態の事例をほかで見つけるのはかなり大変だ。それだけに、この特異な事態に一貫する共通項は何か、それがラーブ氏だと言うのは、おそらくフェアな結論だと思う」と、この元公務員は話した。











