リネカー氏、BBC番組に復帰へ デイヴィー会長は譲歩を否定
トーマス・マッキントッシュ、アンドレイ・ロウデン=ポール、BBCニュース

画像提供, Reuters
政府批判のツイートを理由にBBCのサッカー解説番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」から一時降板させられたギャリー・リネカー氏が、司会に復帰することになった。BBCが13日、発表した。
BBCのティム・デイヴィー会長は同日、BBCのソーシャルメディアのガイドラインに関する独立した見直しが実施される予定だと述べた。また、BBCが譲歩したわけではないとした。
リシ・スーナク首相は、この問題が解決されたのは「正しい」と述べた。
ただ、BBCに対するさまざまな方面からの批判はこの日も続いた。
リネカー氏は、ガイドラインの見直しを支持するとし、番組への復帰を楽しみにしていると述べた。また、この数日間は「超現実的だった」とし、「信じられないほどの支持」を受けたとして感謝した。
与党・保守党のフィリップ・デイヴィス下院議員は、BBCの決定はリネカー氏への「哀れな屈服」であり、「受信料制度の終わりの始まり」だと英紙メイルのオンライン版で語った。同党の院内総務を務めたジェイコブ・リース=モグ氏も「受信料制度の時代は過ぎ去った」と警告した。
一方、最大野党・労働党のルーシー・パウエル影の文化相は、リネカー氏の復帰は歓迎するものの、「政府の圧力からのBBCの不偏と独立という、はるかに大きな問題が残っている」と述べた。
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BBCの元会長のグレッグ・ダイク氏は、今回の騒動をリネカー氏の「『5-0』のような」勝利だと表現。政府がBBCをいじめてテレビスターを排除させたという認識が世間にあると思うとし、BBCにとって「非常に悪いニュース」だとした。
元BBCニュース幹部で、デイヴィッド・キャメロン政権で首相の広報トップを務めたクレイグ・オリヴァー氏は、今回の状況を「完全な混乱」と呼び、そもそもリネカー氏に降板を求めたのが「誤った選択」だったと述べた。
同氏は、「BBCが今日、ソーシャルメディアのガイドラインを見直すと発表したというのが現実だ」とBBCに話した。「実のところ、BBCはこのような危機への対処法を見直す必要がある」。
労働党政権時代にBBCの会長だったマイケル・ライオンズ氏は、BBCの番組ニューズナイトで、「BBCがロシアや香港では反体制派の擁護者となり、同時にこの国では政府に反対する人を認めないというのは、単純に不可能だ」と話した。
同氏はまた、「ルール適用の方法の一貫性に大きな疑問がある」と指摘。BBCのスターは労働党に関して発言が許されているとし、アラン・シュガー氏がジェレミー・コービン氏に投票しないよう呼びかけたツイートを例に挙げた。
BBCの元編集方針審査委員のリチャード・エア氏は、ガイドラインの書き換えは簡単ではないとし、「悪夢になりそうだ」と述べた。
「どんな内容となっても、かなりの人にとって満足のいかないものになるだろう。不可避なことだ」
BBC会長は譲歩を否定
BBCのデイヴィー会長は、リネカー氏を降板させた決定は、同氏の政治的なツイートについて双方が合意に達するまでの時間を稼ぐものだったと主張。そして、まさにその合意が達成できたと述べた。
同会長はまた、「相応の行動」だったとし、「私たちは私たちが正しいことをしたと信じている。私は私が正しいことをしたと思ってる」と述べた。
BBCのメディア担当のデイヴィッド・シリトー編集委員から、BBCは譲歩したのかと問われると、同会長は「そうは思わない」と答えた。
「私は常に、私たちは相応の行動を取る必要があると言ってきた。一部の人にとっては私たちの行動は厳しすぎるし、(中略)他の人たちは私たちを甘すぎると思うだろう」
同会長はこれとは別に、13日に声明を発表。「スタッフ、協力者、司会者、そして最も重要な視聴者にとって困難な時期となっているのは誰もが認めるところだ。このことをおわびする」とした。
今回の騒動は先週、リネカー氏が政府の新しい不法移民法案について、「計り知れないほど残酷な政策」だとし、使われている言葉が「1930年代のドイツが使ったのと変わらない」とツイートしたことから始まった。
同氏のこの発言に対しては、内相ら保守党の閣僚たちが批判した。
リネカー氏は10日、「マッチ・オブ・ザ・デイ」の司会を、合意に達するまで退くよう告げられた。これを受け、リネカー氏に連帯して専門家やコメンテーターらが前例のないボイコットをし、BBCの週末のサッカー番組が混乱した。
スポーツ司会者のマーク・チャップマン氏は、BBCラジオ5ライヴの土曜日の「サタデー・カヴァレッジ」と、日曜日のテレビの「マッチ・オブ・ザ・デイ2」の司会をボイコット。しかし、月曜日のラジオのサッカー番組「マンデー・ナイト・クラブ」に復帰し、週末に司会を務めなかったことを謝罪した。
同氏は、関係スタッフにとって「悲惨で困難」なことだったと説明。そして、週末に役割を果たしたスタッフが罵声を浴びたのは「腹立たしいことであり不公平」だと述べた。
また、「不偏性をめぐる騒動で、私たち全員が一方を支持していると見られるのは皮肉なことだ。関係者全員が学ぶべき教訓があると感じている」とした。
BBCスコットランドも、週末に番組が制限された。しかし13日夜のスコットランドカップのファルカーク対エア・ユナイテッド戦は完全なかたちで放送した。
リネカー氏はBBC番組への復帰が発表された後、「この数日間がどんなに困難だったとしても、迫害や戦争から故郷を逃れ、遠く離れた土地に避難しなければならないこととは比較にならない」とツイート。
「そうした人々の窮状に多くの人が共感しているのを見て、心が温かくなった。私たちの国は依然として圧倒的に寛容で、人々を迎え入れ、寛大であり続けている」と続けた。
政府の不法移民法案は13日夜、下院で賛成312票、反対250票で最初のハードルを通過した。保守党議員の大半が賛成票を投じた。
「ガイドラインを遵守する」
リネカー氏は1999年から「マッチ・オブ・ザ・デイ」の司会を務めている。2020~21年には約135万ポンド(現在のレートで約2.2億円)を稼いでおり、BBCで最も報酬の高いスターとなっている。BBCにはフリーランスとして雇われている。
BBCの職員は、政治的な問題に対して不偏であることが求められており、厳格なソーシャルメディアのガイドラインに従わなければならない。しかし、報道部門以外のスタッフにそれをどう適用すべきかについては大きな議論がある。
リネカー氏は、独立したソーシャルメディア関連の見直しを支持すると述べた。BBCのデイヴィー会長は見直しについて、報道と時事問題の部門以外のフリーランサーにガイドラインをどう適用するかに「特別な焦点」を置くと述べた。
同会長は、「まもなくBBCは見直しを行う人物を発表する」とし、こう続けた。「今後、見直しの報告があるまで、ギャリーは編集ガイドラインを順守する。それが私たちの立場だ」。
リネカー氏は18日夜の「マッチ・オブ・ザ・デイ」の生中継で司会に復帰する予定。FAカップ準々決勝、マンチェスター・シティ対バーンリー戦を伝える。
翌19日には、グリムズビー・タウン対ブライトン&ホーヴ・アルビオン戦の生中継をBBC Oneで担当の予定。
リネカー氏のツイートをめぐる騒動は、BBCのリチャード・シャープ理事長をめぐる疑惑も再燃させた。現在、理事長就任の経緯などについて調査が進められており、シャープ氏が当時のボリス・ジョンソン首相のために80万ポンドの融資の保証人を手配し、その詳細を適切に開示しなかった疑いなどが対象となっている。同氏は、ジョンソン氏の融資への関与を否定している。
スーナク首相はBBCからシャープ氏について問われると、「彼は私が首相になる前に、独立したプロセスを経て任命された。そのプロセスも今、独立した見直しが実施されている。その審査を完了させるのが正しいことだ」と述べた。
野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首は、「BBCはギャリー・リネカーについて正しい決定をしたが、今度はリシ・スーナクが正しい行動をし、リチャード・シャープをクビにする時だ。BBCにはジョンソンの従者ではなく、適切で独立した理事長が必要だ」とツイートした。
労働党のキア・スターマー党首は、シャープ氏の地位は「ますます維持が困難」になっていると述べた。












