香港の林鄭月娥行政長官、再出馬しないと表明

Carrie Lam

画像提供, Reuters

画像説明, 香港の林鄭月娥行政長官

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(64)は4日、2期目の次期選挙に立候補しない考えを明らかにした。林鄭長官の在任5年間で、香港の民主的自由は大きく損なわれてきた。

林鄭氏は2017年、中国政府からの指名で行政長官に任命された。

その後、香港では2019年に大規模な民主化デモが発生。以降、中国政府の影響が深まる波乱の時期が続いている。

林鄭氏は4日の記者会見で、中国政府は自分の決断を受け入れる方向だと述べた。

また、中国側には1年前から、続投の意向がないことを伝えていたと説明。ただ、林鄭氏はこのところ、自身の政治活動の今後についての質問を避けていた。

その上で、今後は家族を優先したいと語った。

「考慮したのはただ一つ、家族のことだ。以前にも、私の最優先事項は家族だとみなに語った。その家族が、私が家に帰る時だと思っている」

林鄭氏の後任候補には、李家超(ジョン・リー)政務官の名前が挙がっている。警察出身で香港政府ナンバー2の李氏は、今週にも行政長官選挙への立候補を表明すると報じられている。

香港の行政長官は、小規模な委員会によって選定されるが、委員のほとんどは親中派とされる。選挙は来月開かれ、新たな行政長官が決定する見通し。

李氏は、2019年の民主派デモの際には、事態を鎮圧する立場の保安局の局長を務めていた。政務官には昨年昇格。中国が香港の治安に注力していくことの表れだとしたアナリストもいた。

<関連記事>

女性初の香港トップ

林鄭氏は公務員として数十年の経験を経て、2017年に行政長官に就任。女性初の香港トップとなった。

しかしその直後から、政治的混乱が続く香港で、最も賛否の分かれる存在となった。

2019年の民主派による反政府デモは、香港政府が中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする条例案を提出したことがきっかけだった。

大規模な抗議運動を受け、中国政府は「香港の治安」を回復するとして、さまざまな政策や法律で市民の取り締まりを強化した。

国安法を擁護

2020年には香港国家安全維持法(国安法)を制定し、中国からの分離独立や中央政府の転覆、外国勢力との結託などを犯罪行為とした。この法律では違反者は最高で終身刑が科される。

これまでに民主派の活動家や野党政治家などが次々と逮捕・起訴されており、香港の自治が損なわれた。

国安法の施行後、アメリカ政府は林鄭氏を含む香港の高官11人に制裁を科している。

林鄭氏は、国際社会からも批判を浴びている国安法を擁護。「他国の治安法と比べればマイルドなものだ」、「他国どころか、中国と比べても、違反となる対象は狭いと言える」と主張していた。

さらに中国政府は2021年、香港における「愛国者」重視の選挙制度改正案を可決。香港の立法会(議会、定数90)選挙の候補者は中国政府寄りの選挙管理委員会などの事前審査を受けることになり、事実上、民主派勢力は選挙から排除されることになった。

この年の12月に行われた選挙では親中派の候補者が圧勝した一方、一般有権者が投票できる直接投票枠(定数20)の投票率は、過去最低を記録した。

パンデミック対応に尽力

林鄭氏は在任中、新型コロナウイルスのパンデミック対応にも追われた。

中国のパンデミック対策を踏襲し、ウイルスと共存せず、撲滅する方策を取った。国境を封鎖した上で、渡航者には数週間の隔離生活を課すなどした。

それでも香港では2月にオミクロン株による感染が急拡大し、医療システムが崩壊。1日当たり数百人の死者が出た。現在は感染のピークを越え、一部の制限を廃止している。