「スウェーデンで戦争が起こり得る」 防衛トップが警告、その可能性と国民の受け止めは
ポール・カービー、BBCニュース

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スウェーデンの国防当局のトップ2人がこのほど、戦争に備えるよう国民に警告を発した。国民の間では懸念が広がるとともに、不必要に心配や恐怖心をあおっているとの非難の声も上がっている。
スウェーデンのカール・オスカル・ボーリン民間防衛相は7日の防衛会議で、「スウェーデンで戦争が起こるかもしれない」と語った。
スウェーデン軍の最高司令官ミカエル・ビューデン将軍はこのメッセージに同意。スウェーデンの全国民は、その可能性について心の準備をすべきだと述べた。
しかし野党側は、こうした警告の語調は不適切だと主張している。
マグダレナ・アンデション前首相は同国のテレビ局に対し、治安情勢は深刻だとしつつ、「戦争がドアのすぐ外側に迫っているような状況ではない」と語った。
子供の権利団体「Bris」によると、同団体の全国ヘルプラインには通常、戦争の可能性に関する相談の電話はかかってこない。しかし今週に入って、戦争関連の報道や「TikTok(ティックトック)」に投稿された動画を見た若者から、不安を訴える電話が増えたという。
「これ(警告)は事前に十分準備されたもので、うっかり口走ったものではなかった」と、同団体の広報担当マヤ・ダール氏はBBCに語った。「大人向けにこのような情報を発信するなら、子供向けの情報も提供すべきだった」。
寒々しいメッセージだったにもかかわらず、民間防衛相と軍最高司令官のこうした発言は注意喚起として受け止められている。

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2世紀以上にわたり平穏を維持してきたスウェーデンはいま、北大西洋条約機構(NATO)への加盟まであと数歩のところまでこぎつけた。加盟実現を阻んでいる、トルコ議会とハンガリーの承認を待っているところだ。
ビューデン最高司令官は、自身の発言は目新しいものではないとしている。
ビューデン氏は1カ月前にウクライナの東部戦線を訪れているし、スウェーデンはウクライナ軍パイロットの訓練を行う国の一つでもある。スウェーデン政府はまた、最新鋭のグリペン戦闘機をウクライナに送ることも検討しているとされる。
「この発言で国民を不安にさせるのではなく、より多くの国民に自分たちが置かれた状況と責任について考えてもらうことが、私の強い願いだ」と、ビューデン将軍は後に、スウェーデン紙アフトンブラーデットに語った。
スウェーデン同様、ロシアのウクライナ侵攻後にNATO加盟を目指したフィンランドは、昨年4月に31番目の加盟国になった。ロシア当局は、NATOとの緊張が高まった場合、フィンランドが「最初に被害を受ける」ことになると示唆している。
スウェーデンのボーリン民間防衛相は、自らの発言の狙いは、国民が眠れないようにすることではなく、実際に何が起こっているのかを認識させることだと述べた。ボーリン氏は地方自治体や緊急事態プランナー、そして国民一人ひとりに対し、起こり得る可能性に対応するよう求めた。
「私が夜も眠れないとしたら、それは物事があまりにもゆっくりと進んでいると感じている時だ」と、ボーリン氏は7日に開催された「社会と防衛会議」で述べた。

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの会議で、スウェーデンに向け、ウクライナやほかの国々と連携して兵器を製造し、「共に強くなろう」と呼びかけた。
スウェーデンのウルフ・クリステルソン首相は、同国は2024年に国内総生産(GDP)の2%を軍事防衛に費やすというNATO目標を達成し、同国の支出額を2020年から倍増させると付け加えた。
防衛の専門家オスカー・ヨンソン氏は、ボーリン民間防衛相の警告の語調は、たいして重要ではないことについて騒いでいるようなもので、発言の90%は民間防衛と軍事防衛の構築があまりに不十分であることへの不満から生じたものだと指摘した。
「時間には限りがある。この警告は、政府機関や個人、各部門に注意喚起することが目的だった」のだと、ヨンソン氏はBBCに語った。
「スウェーデン部隊は信じられないほど有能だ。だが、その規模はまったく不十分だ。最新の国防法案では3.5旅団を組織すべきだとしている。対してウクライナは、開戦時点で28の旅団を備えていた」
戦争への心の準備をしておくべきだとビューデン将軍が警告する1カ月前には、ポーランド国家安全保障局(BBN)のヤツェク・シエヴィエラ長官が、「ロシアとの戦争を回避するには、NATOの東側諸国は対決に備えるための3年の期間を設定すべきだ」と、警鐘を鳴らしていた。
ドイツ外交問題評議会の報告書は、ドイツとNATOは6年以内にロシアの攻撃を撃退できるように部隊を整えるべきだと示唆している。これについて、シエヴィエラ長官は「楽観的すぎる」と指摘した。
スウェーデン国防大学の専門家である前出のヨンソン氏は、戦争が起こり得る可能性はあるとしつつ、いくつかの要因が重ならなければ実際はそうはならないだろうと述べた。それらは、ウクライナにおけるロシアの戦争が終わりに近づいていること、ロシア軍が戦闘力を再建し再武装する時間があること、そして、欧州がアメリカからの軍事支援を失うことだという。
これらはいずれも、あり得ることだと、ヨンソン氏は付け加えた。






