ロシア兵はウクライナで投降した後に撃たれたのか?

ロシア政府は、ウクライナ軍が複数のロシア兵捕虜を処刑したとして、戦争犯罪にあたると非難している。
ウクライナ東部の前線で撮影された動画が、そのきっかけとなっている。複数の兵士が投降したものの、その後に殺害された様子を示す内容で、11月半ばに動画が浮上した。
ウクライナ政府の関係者は、ロシア兵の「投降」に見えたものは、兵士らを確保しようとするウクライナ軍を攻撃するために「仕組まれた」わなだったと説明している。
BBCは、入手した動画から、事態がどのように展開したのかを把握しようとしている。
(注意:この記事には以下、ショッキングな内容や写真が含まれます)
問題の出来事は、11月12日かそれ以前に、東部ルハンスク州の前線に位置する村で起きた。


12日と13日には親ウクライナ系ウェブサイトに、ドローン映像が投稿された。軍服姿の複数の兵士が、農場の庭で横たわっている映像だった。

ドローン映像の一部は、ウクライナ国防省がオンラインに投稿した動画に使用した。マキイウカ地域でロシア軍から領土を奪還するため、ウクライナ軍はどう活動しているのかというのが、国防省ビデオの内容だった。
17日になると、別の動画がソーシャルメディアに登場した。これは、移動中の兵士が現場で撮影したものだった。兵士は、荒地を移動する自分の部隊を撮影しながら、自分自身と、仲間の兵士にカメラを向けている。

映像の兵士たちは、黄色い印を身につけている。この戦争で黄色はしばしば、ウクライナ兵を表す色として使われている。
農場の庭に見える場所に兵士たちが近づくと、誰か小屋に隠れているなら出てこいと、ウクライナ語で叫ぶ声が聞こえる。

軍服姿の兵士が次々と小屋の外に出ては、地面にうつぶせになる。その多くは足に赤いバンドを巻いている。ロシア兵は認識票として赤や白の印を身に着けることで知られている。

画像提供, Twitter
続いて、これで全員か、全員出たのかとウクライナ語で確認する声が聞こえる。
すると、壁の後ろから男がいきなり出てくる。手にした武器を、撮影中のカメラの方向に発砲し始める。これに伴い、カメラの映像は乱れ、混乱が生じたことだけがわかる状態になる。

BBCは、ドローンによる空撮映像と、地上で撮影された映像が、同じ場面のものだと確認した。
2つの映像が一致すると確認するのに、BBCは映っている現場の特徴を比べた。建物の玄関口(真ん中に柱のようなものが見える)が、両方の動画に映っている(下図で、紫で四角く囲った)。さらに、この中庭には赤いおもちゃの車に見えるものがある(下図ではオレンジ色で囲った)


BBCはさらに、ドローン映像(上図の右)がどこを撮影したものか、特定に成功した。ドローン映像と、マキイウカ村の建物のグーグル・アース写真(下図)を比較したところ、紫の線で囲った2つの建物の形状が、ドローン映像とグーグル・アース写真で一致したようだった。建物と建物の間の距離(緑の線で囲った)や、左側の建造物の輪郭(オレンジ色の線)も、どちらの画像でも見て取れる。


ロシア国防省はこの件について、身動き取れなくなっていたロシア兵10人以上の頭部を、ウクライナ兵が撃ったのだとして、ウクライナ兵による「意図的かつ整然とした殺人」だと非難している。さらに、ウクライナ軍による「戦争犯罪は決してこれが最初でなければ、唯一でもない」と主張している。
武器を手放して降伏した戦闘員を殺害もしくは負傷させることは、戦争犯罪にあたる。
ロシアはこの戦争で、キーウ近郊ブチャでの住民殺害を含め、すでに複数の戦争犯罪を犯したと非難されている。ブチャの住民殺害についも、BBCは動画などを検証している。
開始からすでに9カ月近く続くこの戦争では、兵士の投降と捕虜交換が繰り返されている。
国連のウクライナ人権監視団は15日、現地ではウクライナとロシアの双方が捕虜を虐待しているとする報告を発表した。ロシアの捕虜になったウクライナ兵に国連が話を聞くと、その大多数が、ロシア軍によって拷問され、ひどい扱いを受けたと話した。犬をけしかけられて死亡したウクライナ兵の捕虜は、4月だけで9人に上るという。
ロシアと異なり、ウクライナ政府は捕虜にされたロシア兵への聴き取りを、国連に認めた。その中で、ウクライナに捕虜にされたロシア兵は、集団処刑や激しい拷問があったと国連に話している。投降後や尋問中に、殴ったりけられたりしたと、国連に話すロシア兵も複数いたという。
他方、ロシアの雇い兵集団「ワグネル」が仲間の1人を殺害する様子とされる動画が、今月半ばに浮上した動画では、雇い兵のイェフゲニー・ヌジン受刑者(55)が頭部を大きなハンマーで殴られる様子が映っている。ワグネルのトップ、イェフゲニー・プリゴジン氏は後に、これはロシアを仲間を裏切ったからだと発言している。

画像提供, Yuri Butusov/YouTube
殺人罪などで服役していたヌジン受刑者は、ウクライナ軍に拘束されたのち、自分は味方する側を変えたのだと、ウクライナの動画で話していた。その後、どのようにしてロシアに拘束されたのかは不明だが、ウクライナ当局によると、自ら進んで投降したわけではないので、捕虜交換の対象にならなかったのだという。
11月11日に捕虜交換があったが、ヌジン受刑者は含まれていなかった。ウクライナの首都キーウで襲われ、後に自分を殺す男たちに身柄を拘束されたものとみられる。









