ルール破った英官邸パーティー、参加関係者が実態と思い語る

ローラ・クンスバーグ、BBCパノラマ

Boris Johnson

画像提供, Reuters

英首相官邸などでロックダウン中に開かれたイベントに参加した政府関係者3人が、BBCの取材に応じた。職員たちがどのように群れ、互いの膝の上に座り、パーティーの残り物を放置したのか語った。

イベントに参加した政府関係者が、目にしたことを詳細に語ったのはこれが初めて。

集会の翌朝に出勤すると、建物内の所々に瓶が転がり、ごみ箱からはごみがあふれ、テーブルの上には空の容器が残されたままだったと、関係者らはBBCパノラマに述べた。

また、何十人もの職員らで混み合うイベントが開かれたり、パーティーが深夜まで続いたりしたこともあったと話した。官邸で夜を明かした参加者も複数いたという。

そして、イベントを止めようとする人を、職員たちはからかい、ばかにしたのだと述べた。

首相は「真剣に」受け止めている

ボリス・ジョンソン首相の報道官は、ロックダウン中の官邸で起きたとされる内容について、首相は「とても真剣に」受け止めていると述べた。

また、この問題を調べている上級公務員のスー・グレイ氏による中間報告書によって、「これらの課題はいくつか提起された」と説明。その結果、官邸の運営方法が「大幅に変更」され、「今後も変更が続く」と付け加えた。

ロンドン警視庁は先週、新型コロナウイルス関連のルール違反をめぐる捜査を終了した。2020年6月に開かれた誕生日パーティーに絡んでは、首相に対するものも含め126件の罰金通告を出した。

しかし、英民放ITVニュースが23日、2020年11月13日に開かれたリー・ケイン広報部長の退任パーティーに首相が出席していた場面とされる写真を入手。新たに、警察と首相に対する疑問が持ち上がっている。

(編集部追記:グレイ氏は25日午前、官邸でのロックダウン中のパーティーに関する最終報告書を公表。官邸で相次いだパーティーについて、当時の感染対策に沿ったものではなかったとして、これを許した官邸内の風潮について、官邸幹部に責任があると指摘した。さらに、グレイ氏の報告書にも、2020年11月13日のパーティーでの首相の写真が複数含まれている。)

イベントは日常茶飯事

今回、政府関係者3人は匿名で、首相官邸の有名な玄関ドアの裏側の世界について口を開いた。そこでは、国民が守ってきたロックダウンのルールが日常的に無視され、社交イベントがしょっちゅう開かれていたという。首相の暗黙の許可があったと、職員らは感じていた。

ある職員は、ケイン広報部長の退任パーティーについて語った。このイベントをめぐっては、首相がグラスを掲げている写真が表明化したが、罰金は科せられていない。

一方で、その場にいた他の人たちは、法を破ったと判断され罰を受けている。

ジョンソン氏はスピーチをし、ケイン氏への感謝を述べた。パーティーが進むと、「部屋には30人くらいか、それ以上の人がいた。みんな肩を触れ合うようにして立ち、互いの膝の上に乗っている人も(中略)1人か2人いた」という。

フィリップ王子の葬儀前日の2021年4月16日夜に開かれたパーティーについては、「にぎやかなイベントで(中略)大勢があちこちで踊っている、よくあるパーティーだった」と関係者は話した。

あまりに騒々しくなっため、警備員は参加者らに対し、建物から出て官邸の庭に行くよう指示したという。

「それでみんな、飲み物や食べ物などを全部持って、庭に行った」

「みんなでテーブルの周りに座り、酒を飲んだ。夜通しそこにいた」

関係者たちは現在、当時の状況は「許されない」ものだったと認める。

Boris Johnson at a leaving event

画像提供, ITV/PA Wire

画像説明, ジョンソン首相がパーティーに参加した写真をITVが報じた

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Presentational white space

関係者たちはまた、こうしたイベントは日常茶飯事だったと話す。

「毎週あった」と言う人もいる。「広報部が毎週金曜日に開く飲み会の招待は、完全に固定されていた」。

その招待は「WTF」の名で知られていた。「ワインタイム・フライデー」(Wine-Time Friday)のことだが、別の、あまり洗練されているとは言えない、「いったい何事?」を意味する俗語にもとれる。

飲み会は、午後4時に首相官邸で予定されることが多かった。情報筋によると、金曜日の飲み会はしばらく前から、官庁街ホワイトホールの伝統になっていた。

ただ、飲み会は金曜日だけではなかった。元政府関係者の1人は、官邸に出勤して、しばしば目にした光景をこう語った。「ぐちゃぐちゃだった。ボトル、空の容器、ごみ――。ごみ箱に入ってはいたが、ごみ箱からあふれていた。テーブルの上にごみが放置されいたこともある」。

パーティーをめぐる疑惑が最初に浮上して以来、約半年がたった。国内の他の人々に社交を禁じるルールを作った建物で、定期的に社交が行われていたとは、いまだに信じ難い。

一部の職員は当時起きていたことを懸念していたことも明らかだ。首相の首席秘書官だったマーティン・レノルズ氏が送信した、今となっては悪名高いBYOB(Bring-your-own-bottle、酒は各自が持ち込みの意味)のメールを「ばかじゃないか」と批判していた。

職員の間では、いったい何が起こっているのかといぶかるインスタント・メッセージが飛び交っていた。

しかし、懸念の声を上げるのは非常に難しかったと、元職員は話す。

パラレルワールド

別の政府関係者によると、大盛り上がりしたパーティーを止めようとしたダウニング街の警備員を、周りにいた官邸関係者は嘲笑したのだという。

「警備員が止めようとし、パーティーの最中に、ただ頭を振っていたのを覚えている。『こんなことはあってはならない』といった感じだった」

「みんなが彼をばかにしていた。このようなパーティーが開かれているのはおかしいと、その人が憤慨していたので」

国民が厳しいロックダウン下で暮らしていた時に、どうしてこんなことが起きたのか。

関係者3人とも、ダウニング街はパラレルワールドだったと言う。ロックダウンのルールが適用されない「自分たちだけのバブルのような空間だと考えていた」と話す。

「すべてが普段どおり続いていた。社会的距離は保たれていなかった。みんなマスクもしなかった。外の世界とは違っていた」

別の関係者は、長時間働く職員にとって、こうしたイベントが「命綱」になっていたとさえ語る。一人暮らしの職員には、特にそうだったという。

「首相は何も言わなかった」

関係者3人は全員、首相自身が作り出した官邸内の「文化」も原因だったと指摘する。首相は「好かれたいと思っていた」し、職員が「気を楽に」できるようにしたいと思っていたという。

関係者の一人は、首相の許可を得て社交しているような気がしていたという。それがルール違反だとしても、「首相もいる」から大丈夫と考えていたという。

「首相は、自分の部屋に行く途中にちょっと立ち寄っただけかもしれない。そういうことはあった」と関係者らは言う。「でも、こんなことしてはいけないとは、彼は言わなかった」。

「首相は、『みんな、お開きにしてみんな帰ろう。社会的距離を取ろう。マスクをつけよう』とは言わなかった」

「彼は誰にもそんなことは言わなかった。彼は自らグラスを手に取っていた」

ジョンソン氏は、イベントの1つへの参加をめぐって罰金を科された。だが、他のイベントで違法行為はなかった、ダウニング街でルールが破られていたことは知らなかったと、主張している。

しかし今回、政府関係者が口を開いたことで、当時の官邸職員の中には、首相の言い分を受け入れ難いと感じている人もいることが明らかになった。

Boris Johnson in Downing Street

画像提供, WPA Pool

画像説明, ジョンソン首相は国民に対し、社交はしないよう強く求めた

職員の1人は、首相が議会下院で、何も間違ったことはなかったと主張するのを見たときのことを、こう語る。

「私たちは生中継で見ていたが、なぜ? 信じられない、といった思いで互いに顔を見合わせた」

「なぜ彼は否定するのか。私たちはずっと彼と一緒にいた。ルールは破られていたし、パーティーはあった。それは知っているのに」

首相と関係者への影響は

「パーティーゲート」と呼ばれる今回の不祥事の政治的影響は、首相にとって深刻なものとなっている。

政府はここ数カ月、このスキャンダルで打撃を受けた。首相への信頼は損なわれ、与党内からも辞任要求が新たに出ている。

議員の大半が行動を取るのをためらっていることから、首相は今のところは生き延びている。罰金を1回科されただけだ。首相の支持者は、彼が職員と一緒にぬるいプロセッコ(スパークリングワイン)を何杯飲んだのか、または飲まなかったのかといったことより、自分たちの家計のやりくりにはるかに高い関心をもっていると考えている。

官邸は、政府の公式調査の結果に備えており、再び緊張が高まっている。一方で、この問題に関係している人たちの個人的な影響は明らかだ。

BBC番組「パノラマ」の取材に応じた2人を含め、何十人もの職員や元職員が罰金を科された。そうした人たちは、自分が受けた扱いに傷つき、混乱している。

ある元職員は、特に若い職員たちについて、「当時はルールを破っているとは考えていなかった。首相が(イベントに)いたからだ。最高位の公務員もいた。実際、そうした人たちが開催していた」と話す。

失望し、「魔女狩りの対象になった」と感じている人もいる。他方、このままやり過ごす方が楽だと考えている高官や政治家もいる。

恥ずかしさも、悲しさもある。「とても苦しいし、不名誉な思いをしている。あの時期は本当にトラウマになりそうなくらいつらかっただけに。当時は1日1日、仕事をするのが本当に大変だった」。

「私たちは、大勢が病院のベッドで死んでいること、不必要に死んでいることを知っていた。(中略)だから、あのころを振り返って、このこと(パーティー問題)があの時期を決定的に印象付けるものになってしまうと思うと、とてもつらかった。ワクチン接種事業でもなく、市民を感染から守るための食糧の宅配事業でもなく、このパーティーの問題が」

「『あなたは5月20日に庭で何をしていたのか』。これからずっと、そう聞かれるのだと思う」

政府は、多くの国民が今回のことを忘れないと知っている。

ジョンソン氏の将来は、国民が許すかどうかで決まる。