【解説】 米英豪の安保枠組み、フランスにとって厳しい現実

French President Emmanuel Macron and General Francois Lecointre Chief of Staff of the Armed Forces arrive on the command car during Bastille Day Military parade on July 14, 2021 in Paris, France

画像提供, Getty Images

画像説明, フランスは軍事同盟関係を再考するのだろうか

屈辱にまみれた今の状態からいずれ立ち上がった時、フランスは冷静さを取り戻し、残酷な真実に直面しなくてはならない。

その1。戦略地政学に感傷の入り込む余地はない。

自分たちがいかにひどい扱いを受けたか、嘆きわめいてみたところで、無意味だとフランスは分かっているはずだ。確かにフランスはひどい扱いを受けた。

だからといって、だれかを不快にさせたくないというだけの理由から国防の優先事項を後回しにするなど、そんな国があるだろうか? オーストラリアは、自分たちが中国の脅威を過小評価していたと気づき、それゆえに抑止力の増強が必要だと計算した。

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フランスの懸念をオーストラリアは厳然と無視して行動した。しかし、いざとなれば国というのはそうするものだ。そもそも「国とは」という定義そのものに近い。つまり国とは、自己利益を守るために集まった人間の集団だ。守るべきは、自分たちの利益であって、他人のそれではない。

もちろん、利益防衛のため他国と同盟を結ぶのが最善だと、国が判断することもある。前世紀のアメリカが本能的な孤立主義を抑えて取った行動が、まさにこれだ。

しかし、「AUKUS」をめぐり、つらい真実がもうひとつ露呈した。アメリカはもはや、時代遅れの巨大な怪物のごとき北大西洋条約機構(NATO)について、もうほとんど大した興味を持っていない。NATOを長年守ってきた国への忠誠心も、アメリカは特に抱いていない。

エマニュエル・マクロン大統領を含むフランスのド・ゴール主義者は、完全な独自性をもつ大国フランスが、善の勢力として世界で力を発揮することを夢見ている。そのためにフランスは、核戦力を背景に軍事力を維持し、世界的なプレゼンスを維持する必要があるという発想だ。実際のフランスは、かなりのわだかまりと共に、アメリカが主導する同盟関係に自らを縛り付けている。それが道徳的であると共に、得策だと判断したからだ。

しかし今やフランス政府の中では、疑問が響き渡っている。「何のためだったのか」、「自分たちにどんな得があったのか」と。

「青天のへきれきだった」。仏紙ル・フィガロの上級外交アナリスト、ルノー・ジラール記者はこう言う。

「マクロンは、アングロサクソンたちを助けようとあれだけがんばったのに。アフガニスタンでのアメリカを。軍事協力でイギリスを。インド太平洋でオーストラリアを。『ほら見て』とマクロンは言い続けていた。『フランスは皆さんの後の続いている。我々こそ真の仲間だ」と」

「マクロンはバイデン相手にがんばっただけでなく、トランプ相手にもそうした! あれだけ色々やったのに、今になってこれだ。なんのごほうびもない。ひどい目に遭った」

フランスは今後、NATOにおける自分たちの役割を再検討することになる。1966年に当時のシャルル・ド・ゴール大統領はNATOの軍事機構から離脱した。やっと復帰したのは、ニコラ・サルコジ大統領時代の2009年だ。フランスが再度離脱するという話は、出ていない。今のところは。しかし、マクロン大統領は2年前にNATOを「脳死状態」と評している。これは留意するべきだ。あれから、マクロン氏の意見が変わったとは思えない。

しかし、フランスが世界的な野心を実現するには、ほかに方法が見当たらない。これが3つ目の厳しい真実だ。

AUKUSの一件で分かったのは、フランス単体は国として、戦略的問題に大した影響を与えられないほど小さいということだ。フランス海軍が持つ艦艇の総数と同じだけの艦艇を、中国は4年ごとのペースで建造している。オーストラリアはいざとなれば、小国ではなく大国の近くにいたかったのだ。

この問題に対してフランスはこれまで、自分たちの軍事的未来は欧州と共にあると主張することで切り抜けてきた。欧州連合(EU)の巨大な人口規模と技術資源が、フランスの世界的使命達成の足掛かりとなるはずだった。

Who has nuclear-powered subs?
画像説明, 原子力潜水艦の保有国。オレンジ色が弾道ミサイル搭載原子力潜水艦、白色はその他の攻撃型原潜の数を示す(出典:国際戦略研究所)

しかしその誕生から30年、EUはいくつか合同旅団を結成したり、合同調達計画を策定したり、アフリカのマリで軍事訓練ミッションを実施したりした。しかし、それだけだ。ジラール記者は、EUをまとまった軍事力として見るという発想など「まったくの冗談」だと語った。

では、フランスには何ができるのか。

現実を受け入れること。臨時同盟の形成を試みる(実際、マクロン大統領はインド太平洋地域でそれをやろうとしていた)。ドイツに対し、20世紀由来のコンプレックスを捨てて本来の大国としてふるまうよう、説得し続ける。

そしてイギリスには門戸を開いておくことだ。現時点では簡単な提案ではないかもしれない。英仏の関係はここ数年、最低レベルまで落ち込んでいる。フランスはボリス・ジョンソン英首相を見下しており、その軽蔑の念を隠しきれていないし、イギリス政府の大半も、同じような思いをフランス政府に抱いているようだ。

短期的には、フランスがAUKUS問題に絡みイギリスに制裁を加えることも十分あり得ると、ジラール記者は指摘する。2010年の英仏防衛協力条約における核協力の縮小や、英仏海峡をわたる不法移民の管理といった分野での決裂もあり得る。

しかし、欧州の本格的な軍隊というと、フランスに並んでイギリスしかない。両国は似たような歴史と経験を持っている。兵士たちは互いを尊敬している。長期的に見れば、英仏の防衛協力は無視できないほど論理的な結論だ。これがマクロン大統領にとっての、最後の厳しい現実かもしれない。