【米大統領選2020】 最後の討論会をファクトチェック
リアリティーチェク・チーム、BBCニュース

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11月3日の米大統領選を目前にドナルド・トランプ米大統領とジョー・バイデン前副大統領は22日夜、最後の討論会に参加した。
新型コロナウイルスのパンデミックから経済、さらにはメキシコ国境で移民家族が引き離され子供たちが「おり」に入れられた問題まで、多岐にわたる内容について両候補は様々な主張をした。
その主張のいくつかについて、BBCニュースのリアリティ・チェック・チームが内容の真偽を確認してみた。

トランプ氏:「(新型コロナウイルスについては)角を曲がった。なくなりつつある」
判定:いいえ、新型ウイルスはなくなりつつあるとは程遠い。新たに感染したり入院したりする人数は増え続け、今なお大勢が亡くなっている。
トランプ氏はアメリカでの感染拡大は収束に向けて角を曲がりつつあると主張するが、米政府の感染症対策トップ、アンソニー・ファウチ博士はこれに異を唱え、最近の数字は「気がかりだ」と発言している。
米誌アトランティックを中心に感染者を追跡する企画「Covid Tracking Project」によると、10月初めには全米で毎日新たに約5万人の新規感染が確認されていたのに対し、今ではそれが毎日約6万人に増えている。
入院患者の数も10月初めから3割以上増えている。
新型ウイルスによって死亡する人数は10月を通じて、1日約800人で推移している。


バイデン氏:「新型ウイルスの感染が急増しているのは、共和党支持の州」
判定:それは正しくない。新型コロナウイルスの感染者は、共和党支持か民主党支持かを問わず、様々な州で増えている。
野党・民主党のバイデン前副大統領は、新型コロナウイルスの感染者急増は与党・共和党の支持者が多く、同党が州政府を担ってしている州に集中していると発言した。
しかし、感染拡大は全米50州のうち40以上の州で起きており、そこには民主党支持者が多数派の州も含まれる。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、人口当たりの感染者が特に急増しているのはノースダコタ、サウスダコタ、モンタナ、ウィスコンシンの各州。
ノースダコタとサウスダコタの州知事はどちらも共和党所属だが、モンタナとウィスコンシンの両州は民主党だ。ただし4州とも2016年大統領選ではトランプ氏を支持した。
バイデン氏はさらに、共和党が支持基盤とする中西部の諸州でも感染者が急増していると述べた。だが、民主党員が州知事を務め、前回大統領選では同党のヒラリー・クリントン氏を支持した中西部イリノイ州でも、感染は拡大している。


トランプ氏:「220万人が死亡する予想だった」
判定:これはまぎらわしくミスリーディング。
この数字は、今年3月に英インペリアル・コレッジ・ロンドンが公表した研究によるもので、それは「何の対策もとらない集団感染」の場合の推計。
この研究では、アメリカの死者220万人という数字を「予測値」ではなく、「何の抑制策もとらず、個人行動に自発的な変化が起きなかった場合」に起こり得る被害の規模として挙げている。
今のところ、新型ウイルスによる感染症「COVID-19」のためアメリカでは22万3000人以上が亡くなっている。

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バイデン氏:「(オバマ政権下で)我々は1000人以上の刑期を減刑した(中略)連邦刑務所の収容人数を3万8000人ほど減らした」
判定:オバマ政権による減刑については正しいが、連邦刑務所の収容人数削減については正しくない。
バラク・オバマ大統領(当時)によって受刑者約1700人が減刑され、さらに212人が恩赦を受けた。
しかしオバマ政権最後の2016年に連邦刑務所に収監されていた受刑者の人数は、2009年と比べて1万6500人減だった。

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トランプ氏:「北大西洋条約機構(NATO)諸国に追加で1300億ドル払わせ、年間4200億ドルまで払うようにさせた。それはロシアに対する防衛のためだ」
判定:年間増分のように聞こえるが、それは正確ではない。
トランプ氏は自分はロシアに対して強い姿勢をとっていると主張し、NATO加盟国の防衛支出を自分が拡大させたと言う。
2016年以降、欧州諸国とカナダは防衛予算を計1300億ドル増額した。しかしこれは毎年ではなく、数年かけての増分だ。
NATO報告書によると、「2020年末までに欧州とカナダの同盟諸国は2016年以降、追加で1300億米ドルを防衛費として支出することになる。これは2024年末までに4000億ドルにまで増える予定」という。

バイデン氏:「(トランプ氏は)対中赤字を減らすのではなく増やした」
判定:正確ではない。
アメリカの対中貿易赤字は2017年に増えたものの、米政府が中国製品へ追加関税を課したことで、2018年には急激に減少した。
2019年の貿易赤字は3080億ドル。2016年は3100億ドルだった。
米国政調査局によると、モノ・サービスの対中赤字は2020年上半期には1300億ドルだった。これは2019年上半期よりも340億ドル少なく、2018年上半期よりは530億ドル近く少ない。

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トランプ氏:「おりを作ったのはむこうだ。ジョー、誰がおりを作ったんだ?」
判定: オバマ政権下、違法移民の子供はメキシコ国境で一時的に拘束されていた。ただし、親から引き離すという政策はなかった。
トランプ政権はメキシコ国境で、違法移民の親と子供を分けて収容した。特に、幼い子供を保護者から引き離して、金網でつくったおりのような囲いに入れたことは国際的に批判された。この政策について、両候補が激しい応酬を交わす中、トランプ氏は「おり」を作ったのはオバマ政権だと批判した。
バラク・オバマ氏が大統領でバイデン氏が副大統領だった当時、確かにメキシコ国境では、保護者の同行がなくアメリカ側に入る大勢の子供を収容するため、金網の囲いを作った。子供たちはいったんそこに入れられた後、別の施設へと移された。
オバマ政権の国土安全保障長官だったジェイ・ジョンソン氏は2019年にこの件について、「金網やフェンスやパーティションやおりや、呼び方はなんであれ、そういうものは2017年1月20日に発明されたわけじゃない。それは明らかだ」と、トランプ大統領の就任式の日にちに触れて発言した。
ただしジョンソン元長官は、当時の方針では子供たちの収容は一時的なものだと説明。人身売買被害者保護法にもとづき、子供をそうした囲いに収容しておけるのは最大72時間で、その後は保健当局に引き渡したのだという。

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トランプ氏:「アメリカの空気は一番きれいだ、水は一番きれいだ」
判定:空気についてはその通りだが、水については正しくない。
米環境保護庁(EPA)によると、現在のアメリカの大気は記録上、最も汚染が少ない。
過去数十年間で、6つの主要汚染物質を計る空気質指数がアメリカで大幅に改善している。
ただし水質については、米イェール大学によると、上下水道の質は世界で26番目だという。
この指標では、フィンランド、アイスランド、オランダ、ノルウェー、スイス、イギリスの水が世界で特に清浄だという。

バイデン氏:「フラッキング反対だと言ったことはない」
判定:フラッキングについては過去の発言を何度か、説明する羽目になっている。連邦政府所有の国有地ではフラッキングに反対だと言明している。
フラッキングとは、地下の岩石層に高圧で流体を注入して亀裂を生じさせ、石油やガスを採掘する水圧破砕法で、批判も多い。
バイデン氏がこれに反対していると、トランプ氏はこの日も繰り返した。
今年3月の民主党予備選討論会で、バイデン氏は「これ以上は……新しいフラッキングには反対だ」と述べている。
後にこの真意について、「連邦政府の土地で、新しく許可することはしないと言った」と説明した。
バイデン陣営のホームページによると、民主党は「アメリカの自然を守るため(中略)公共の土地や水域において石油やガスの新規採掘は許可しない」と説明している。一方で、フラッキング全般に反対しているわけではないという。

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