「生まれて初めて自由に息ができる」 ベラルーシで大統領選めぐる抗議続く
アブドゥジャリル・アブドゥラスロフ、BBCニュース(ミンスク)

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ベラルーシの街中には今、陶酔のような雰囲気がある。首都ミンスクでは数千人が集まり、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領や、抗議参加者への暴力的な制圧に反対を叫んでいる。赤と白の縞の入った、野党の旗を掲げている。花や風船を持って、平和的な抗議だと訴えている。
車のクラクションも反政府の楽器となった。ドライバーが集まった人々を支持するためにクラクションを鳴らすと、みんなが手を振って歓声をあげる。
抗議活動に参加したアンドレイさん(33)は、「生まれて初めて自由に息ができる! 素敵な気持ちです」と語った。
ルカシェンコ大統領の26年にわたる統治が終わり新しい時代が始まるだろうと、大勢が期待感から舞い上がり、楽観的になっている。
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ベラルーシでは9日の大統領選で、1994年から政権を握る現職アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)が勝利を宣言した。しかし、この選挙結果は不正だと批判する声が高まり、デモが連日続いている。
15日にミンスクの市街地を訪れたエカテリーナさんは、「何もかもが変わると確信しています。勝利を信じています。だから毎日こうやって街に出ているのです」と話した。
ここでは怒りが、恐怖を上回ったのだ。今では大勢が、平和的な抗議のために堂々と外出している。しかしほんの数日前までは、警察と抗議参加者の暴力的な衝突のため、ベラルーシ国民の間に恐怖が広まっていた。
機動隊や治安部隊が街中で手当たり次第に市民を捕まえ、警察車両に押し込むのを見てきた。
通りがかりの通行人までもが標的になった。自転車に乗った人を体当たりで止め、地面に転がして拘束した。携帯電話で話している人の腕をねじり上げ、引きずって連行した。バスから降りて帰宅しようとしている人までもが拘束された。
夜になると、暴力はさらに過激になった。
BBCは11日、抗議活動を取材するために夜のミンスクの街に出た。カメンナヤ・ゴルカ駅の周辺には大勢が集まっていたが、すぐに警察のトラックやバスが到着した。
車内から迷彩服を着た男たちが現れ、抗議者に銃を向けた。建物の陰に隠れようとした人たちにゴム弾を発射した。
何かが笛のような音と共に通りの真ん中に投げられ、爆発した。次の瞬間、スタングレネード(閃光音響手榴弾)の閃光と爆発音が響き、その場にいた人たちは散り散りに逃げ出した。それから、通りで大きな煙が上がった。催涙ガスだ。誰もがせき込み、つばを吐き出し、眼をこすっていた。
警察隊が周辺に配備された。黒い制服にヘルメットと盾を装備し、抗議参加者を建物の中庭まで追いかけた。
アパートの玄関前で警察に捕まった男性がいた。十数人の警官が飛び掛り、警棒で彼を滅多打ちにした。
拘束され、警察車両に投げ込まれた人々は、手ひどく暴行され、拷問された。車内からは殴る音や、助けを求める叫び声が聞こえた。拘束中に虐待を受けたという証言は日に日に増えている。

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こうした暴力が、ベラルーシ国民に怒りに火をつけた。警察から逃げながら深夜に抗議するのではなく、市民は昼間に街中に出るようになった。女性グループが始めたこの運動は、現在は全国に広がっている。
主要工場が、警察の暴力に反対してストライキを決行すると発表した。トラックメーカー「ベラズ」の工場労働者の集会では、従業員らが大統領について「辞任しろ!」と声を合わせる場面もあった。
工場で働くパヴェルさんは、「私たちは自由な選挙を求めています」、「政権の交代、それから自由と民主主義、平和を求めています」と、声を揺らしながら話した。

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こうした抗議活動は全国に広まっており、9日の大統領選を80%の得票率で勝利したと主張するルカシェンコ大統領の言い分を大きく揺るがしている。ルカシェンコ政権がこれほどの圧力を受けるのは初めてだ。
国営テレビ局の従業員までもが、17日からストライキに入ると発表している。彼らの要求には、テレビ局に対する検閲の停止、そして国内の出来事を客観的に報じる権利が含まれている。
前例のない挑戦を前に、ルカシェンコ氏は退陣の意向を示していない。
15日に行われた国防会議で、ルカシェンコ氏は国境近くで行われる北大西洋条約機構(NATO)軍の軍事演習を懸念していると話した。
また、ロシアのウラジミール・プーチン大統領から「ベラルーシの安全を維持するための包括的な援助」の合意を取り付けたと述べた。
ベラルーシにいる多くの人がこの発言を、脅しだと受け止めた。ロシアの支援を受けて抗議運動を血の海にして終わらせるぞと、大統領は直接、国民を脅したのだと。
政権がすでに駆使した暴力は、抗議活動にさらに火をつける結果となった。ルカシェンコ氏はその権力にしがみ付くために、何をどこまでやる覚悟でいるのか。それがこれからの問題だ。









