シリア反政府勢力、主要都市ホムスに迫る 南部でも現地勢力が拠点掌握か

シリアの反政府勢力は5日、中部ハマで勝利を宣言した

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バーバラ・プレット=アッシャー(ベイルート)、マイア・デイヴィース(ロンドン)

シリアで反政府勢力の攻勢が続き、国内第3の都市ホムスから数万人が避難している。反政府勢力は電撃的な進軍を開始してから1週間余りで、ホムスの郊外に到達したと主張している。ロシア政府は6日、自国民にシリア出国を勧告した。他方、南部ダルアー県でも、反政府勢力が大多数の拠点を制圧したとの情報が出ている。

反政府勢力は5日に主要都市ハマを制圧北部アレッポを失ったバッシャール・アル=アサド大統領にとって、2カ所目の大打撃となった。

イスラム武装組織「ハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)」のアブ・モハメド・アル・ジョウラニ(別名アブ・モハメド・アル・ゴラニ)代表は、ホムスの住民に「あなたたちの番だ」と告げていた。

反政府勢力は11月末、シリア政府に対する数年ぶりの大規模な攻勢を開始。北部から南下を続けており、首都ダマスカスへ進軍する中での次の目標がホムスとみられる。

シリア内戦が13年前に始まって以来、今回ほどの急進撃はこれまで政府軍と反政府勢力のどちらにも見られなかった。シリア国軍の弱さを露呈している結果となっている。

攻撃の先頭を担う勢力はメッセージアプリ「テレグラム」で、「我々の部隊はホムス郊外の最後の村を解放した。現在はホムスの外壁に達している」と書いている。

こうした動きをBBCは独自に検証・確認できていないものの、イギリスに拠点を置く戦争監視NGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、反政府勢力がホムスまであと数キロの距離に迫っている。

SOHRによると、ロシアの戦闘機が反政府勢力の進軍を遅らせようと、近くのラスタンにある橋を爆撃したという。

ホムス以北のハマでは、シリア軍が数日間の戦闘の末に撤退した。その国軍が今後、ホムスを防衛できるかどうかは不明だ。

ホムスは、地中海沿岸にあるアラウィ派の中心地域と首都ダマスカスを結ぶ戦略的な要衝。国軍がそのホムスから撤退したという情報を、シリア国防省は否定している。

ホムスから急ぎ避難するアラウィ派住民の車で、道路が渋滞する映像が浮上している。

アラウィ派はイスラム教シーア派の少数一派で、アサド大統領の家族もアラウィ派に属する。シリア国内で少数派ながら、アサド政権の権力基盤としてシリアで影響力を発揮してきた。

シリアの勢力図

南部でも反体制派が攻勢か

他の地域では、クルド人勢力が率いる部隊が東部の広大な砂漠にある政府の主要拠点デリゾールを制圧したと発表している。

南部では、地元の武装集団による暴力の激化を受けて、ヨルダンが国境を閉鎖した。

SOHRによると、南部ダルアー県では反政府勢力が県内約9割の地域を掌握。政府軍が抑えているのはサナマイン地区のみだという。

ロイター通信によると、南部の反政府勢力は政府軍の撤退と軍高官が無事に首都へ帰還できるよう、軍と合意したと述べている。

ダルアー県は戦略的にも象徴的にも重要な意味合いを持つ。ヨルダン国境の主要通貨地点に近く、2011年の反政府デモの中心地でもあった。

アサド政権が2011年に平和的な民主化要求の抗議行動を弾圧し、それを機にシリア内戦が勃発して以来、50万人以上が死亡している。

HTS指導者、国外攻撃を否定

シリア内戦を通じてロシアはアサド政権を支え続けてきた。しかしロシア政府は6日、自国民にシリアを離れるよう勧告した。

こうした状況でアサド大統領は反政府勢力の「粉砕」を誓い、西側諸国が地域再編を画策していると非難を繰り返している。

しかし、低賃金や腐敗が横行する政府軍ではかねて、士気の低下が指摘されていた。国営通信社SANAによると、大統領は最近、賃金を50%引き上げると発表していた。

アサド政権にとってロシアとイランは最も重要な同盟国。両国は今もアサド大統領への支援を表明しているが、その統治を支えてきた規模の軍事支援はもはや提供していない。

クレムリン(ロシア大統領府)はウクライナでの戦争に忙殺されており、イランを支えてきたレバノン拠点の民兵組織ヒズボラは、イスラエルの相次ぐ攻撃によって弱体化している。

アサド政権の勢力維持をかつて支えたヒズボラの戦闘員は今では、シリアの戦場からほとんど姿を消している。ただし、レバノンやイスラエルの報道によると、少数の戦闘員がホムス防衛を支援するために国境を越えたという。

ロシアとイランの当局者は、一気に激化したシリア内戦への対応を協議するため、週末にトルコ政府の担当者たちと会談する見通し。

トルコは一部の反政府勢力を支援しており、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はこの数カ月間、反政府勢力と政治的合意を結ぶようアサド大統領に促していた。

エルドアン大統領は、自分の呼びかけにアサド氏が応じていれば、反政府勢力の現在の大攻勢はなかったはずだと述べている。

多くの専門家は、トルコ政府が承知し、承認しなければ、今回の攻勢はあり得なかったとみている。

この間、HTSのアル・ジョウラニ代表は、自分の好戦的なイメージを和らげ、シリア人や外国の指導者たちを安心させるため、公の場での発言を繰り返している。

アル・ジョウラニ代表は、イスラム武装派勢力の「イスラム国(IS)」やアルカイダとは何年も前に決別していると強調するほか、自分はシリアを重視する愛国者で、シリア国外への攻撃には反対する立場だと主張。さらに、少数派コミュニティーの保護を約束している。

CNNとのインタビューでアル・ジョウラニ代表は、自分たちの目標はアサド政権を打倒し、すべてのシリア人を代表する政府を樹立することだと述べた。

今回の攻勢が11月末に始まって以来、SOHRによると、国内で820人以上が殺害された。そのうち111人が民間人だという。

HTSの戦闘員とその同盟軍は5日に主要都市ハマを制圧すると、中央刑務所の囚人を解放した。一方、軍は市外に部隊を配備しなおしたと発表した。

100万人が暮らすハマは、シリア第2の都市アレッポの南110キロメートルに位置する。反政府勢力は先週、北西部の拠点から奇襲攻撃を開始し、アレッポを掌握した。

一方、国連は「北部の民間人にとって既に悲惨だった状況が、戦闘のためさらに悪化させている」と述べている。

推定28万人が避難しており、その多くは女性と子供。一部の民間人は前線地域に閉じ込められ、安全な場所に移動できない状況にある。

人口200万人のアレッポでは、病院、パン屋、発電所、水道、インターネット、通信などの公共サービスや重要施設が、物資や人員の不足により機能停止または機能不全に陥っている。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「影響力を持つ全員が内戦を終わらせるため、それぞれの役割を果たすよう」呼びかけた。