パレスチナや国連、「民族浄化」と強く非難 トランプ氏のガザ再建構想

パレスチナ・ガザ地区の住民。女性が赤ちゃんを抱えている

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画像説明, パレスチナ・ガザ地区では住民210万人の大半が、1年3カ月に及ぶ戦争で避難を余儀なくされている

アメリカがパレスチナ・ガザ地区を「引き取り」、パレスチナ住民210万人を永久に移住させるというドナルド・トランプ米大統領の提案が、各国から批判を呼んでいる。「民族浄化」に当たるとして、断固として拒絶する声も出ている。

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は5日、声明を発表し、トランプ氏の案を断固として拒絶。「私たちの人々の権利が侵害されることは許されない」とした。

アッバス氏はまた、強制移住の計画が出ていることについて、「こうした呼びかけは深刻な国際法違反だ」と批判。「パレスチナ国家の樹立なくして、この地域の平和と安定は達成されない」と付け加えた。

アッバス氏は、ガザを実行支配するイスラム組織ハマスのライバル組織ファタハを率い、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区の一部を統治している。

声明でアッバス氏は、パレスチナ人が「自分たちの土地、権利、聖地を手放す」ことはないと宣言。「ガザ地区は、ヨルダン川西岸、東エルサレムとともに、パレスチナ国家の土地の不可欠な一部だ」とした。

駐英パレスチナ常駐総代表部のフサム・ゾムロット大使は、「これは民族浄化と、強制移住と、人々を自分たちの土地から追い出すことを呼びかけるものだ。不道徳であり、違法であり、危険だ」とBBCに話した。

ガザでイスラエルと1年3カ月にわたって戦争をし、広い範囲で壊滅的な被害を招いたハマスも、トランプ氏の計画を、中東地域で「火に油を注ぐだけ」だとした。

ハマスは声明で、トランプ氏が「ガザ地区のアメリカによる占領を目指している」と主張。同氏の提案を、「私たちの人々と大義に対して攻撃的であり、この地域の安定に役立たない」と警告した。

ハマスは、イスラエル、アメリカ、イギリスなどの国々からテロ組織に指定されている

国連事務総長も「民族浄化」と警告

国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、「いかなる形態の民族浄化」にも反対すると警告。ガザは将来のパレスチナ国家の不可欠な一部だとした。

米ニューヨークでの会合でグテーレス氏は、パレスチナ人が自分たちの土地で人間らしく生きる権利が、ますます遠のいていると発言。「ある民族全体が、おぞましい方法で組織的に非人間化され、悪魔化されるのを目の当たりにしている」と述べた。

国連の人権高等弁務官事務所(OHCHR)も、占領地からの強制移動や強制送還は国際法上、厳しく禁じられていると警告した。

トランプ氏からパレスチナ住民らの移住先として一方的に名指しされたヨルダンとエジプトも、これに反発している。

エジプトのバドル・アブデルアティ外相は、「パレスチナ人がガザ地区を離れることなく、彼らの土地へのコミットメントを認め、移住を拒否しながら、早期復興プロジェクトを進めることの重要性」について、パレスチナ自治政府のムハンマド・ムスタファ首相と合意したと述べた。

ヨルダンの国王アブドラ2世は、パレスチナ自治政府のアッバス議長とアンマンで会談。王室によると、国王は「ガザやヨルダン川西岸の土地の併合や、パレスチナ人の追放に向けた、いかなる試みも拒絶」すると表明した。また、「パレスチナ人が自分たちの土地から動かないことへの支援」を呼びかけた。

サウジアラビア外務省は、トランプ氏の提案を「明確に拒絶する」と表明。同国としてパレスチナの独立国家樹立に向けた努力を続けるとし、「それ(独立国家樹立)なしにイスラエルと外交関係は結ばない」とあらためて強調した。

また、「永続的で公正な和平の実現は、パレスチナ人が正当な権利を得ることなしには不可能だ」とした。

トルコのハカン・フィダン外相は、ガザからのパレスチナ人の移住はいかなる形だろうと「容認できない」と発言。「それを考えること自体、ばかげている」と付け加えた。

動画説明, 「ガザに残って再建する」 パレスチナの人々、トランプ氏の発言を全面拒否

西側同盟国も問題視

西側諸国からも、強制移住案を問題視する声が出ている。

フランス外務省は、強制移住は「深刻な国際法違反であり、パレスチナ人の正当な願望に対する攻撃となる。また、2国家解決に対する大きな障害であり、エジプト、ヨルダン、さらに中東地域全体の私たちと親しいパートナー国にとって、大きな不安定要素になる」とした。

イギリスのキア・スターマー首相は5日の議会で、パレスチナ人は「自分の家に戻ることを許されなければならない」と表明。

「(パレスチナ人は)再建を許されなくてはならない。私たちは、2国家解決への道を歩む人々と、その再建において共にあるべきだ」と述べた。

一方、イスラエル側はトランプ氏の構想を歓迎している。

ネタニヤフ首相は、「歴史を変える」可能性があり、「注目に値する」提案だと称賛。「これこそ、中東を再構築し、平和をもたらす考え方だ」とした。

報道によると、イスラエルの高官は匿名で、トランプ氏の考えは自分の「期待と夢」のすべてを超えていると述べた。

極右のベザレル・スモトリッチ財務相は、今回の提案を「10月7日に対する真の答え」だと位置づけ、「パレスチナ国家という危険な考えを決定的に葬り去る」と誓った。