ガザ人道支援、イスラエルに「法的義務がある」 国際司法裁が勧告

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国連主要機関の国際司法裁判所(ICJ)は22日、イスラエルには国連やその関連機関によるパレスチナ・ガザ地区への人道援助物資の搬入を促進し、パレスチナ人民間人の基本的ニーズを満たす法的義務があるとの見解を示した。
イスラエルはかねてから、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)について、中立性を欠き、職員の相当数がイスラム組織ハマスなどの武装組織に属しているなどと主張している。しかし、今回のICJの勧告的意見は、イスラエルがこれらの主張を立証できていないとしている。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、イスラエルがこの「非常に重要な決定」に従うことを望むと述べた。
しかしイスラエルは、ICJの勧告的意見を「政治的」なものだと一蹴。同国が活動を禁止しているUNRWAと協力するつもりはないと主張した。
ICJの勧告的意見に法的拘束力はないが、道義的・外交的に大きな意味をもつ。
国連総会は昨年12月の決議で、ガザや、東エルサレムを含むイスラエル占領下パレスチナ・ヨルダン川西岸地区で活動する国連機関やそのほかの国際機関に対してイスラエルが負う、占領国かつ国連加盟国としての義務について、ICJに意見を求めていた。
これは、イスラエル議会がイスラエル国内や占領地域でのUNRWAの活動およびイスラエル当局との接触を禁止する法案を可決したことを受けたもの。
ICJはまた、パレスチナの民間人に必需品が妨害されることなく届くようにするイスラエルの義務についても、見解を示すよう求められていた。
イスラエルは2年前の2023年10月にハマスとの戦争が始まって以降、ガザ封鎖を強化し、食料や援助物資の搬入を制限したり、時には完全に止めたりしてきた。ガザでは約210万人のパレスチナ人が暮らしている。
今月10日の停戦合意の発効以前は、ガザで64万人以上が壊滅的な食料不足に直面し、ガザ市では「完全に人為的な」飢饉(ききん)が発生していると、国連が支援する国際専門家チームは警告していた。
イスラエルは飢饉は起きていないとし、ガザへの十分な食料の搬入を認めていると主張してきた。
占領国としての国際人道法上の義務
ICJ所長を務める岩澤雄司判事は22日、オランダ・ハーグで、勧告的意見を読み上げた。
岩澤判事は、11人からなる国際判事パネルが、イスラエルは占領国として、国際人道法上の義務を果たす必要があるとの意見で一致したと述べた。
第1の義務は、「占領下のパレスチナ地域の住民に、食料や水、衣類、寝具、住居、燃料、医療品、医療サービスを含む日常生活に不可欠な物資が確実に供給されるようにすること」だとした。
第2の義務には、「ガザ地区のように物資が不十分な場合、イスラエル占領下のパレスチナ地域の住民のために、是が非でも救援計画に同意し、これを促進すること」を挙げた。
また、そのほかの義務として、占領地から住民を強制移送したり、戦争の手段として民間人を飢餓状態にしたりしないことがあるとした。
岩澤判事は、イスラエルには「国連憲章に基づくすべての行動において、(UNRWAを含む)国連機関に誠実に協力し、あらゆる支援を提供する義務がある」との見解を、国際判事パネルが示したと述べた。
さらに、イスラエルは「国連およびその職員に与えられた特権と免責を完全に尊重」し、「国連施設の不可侵性および(中略)その財産・資産のあらゆる形態の干渉からの免責」を確保する義務を負っているとした。

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国連のグテーレス事務総長は、スイス・ジュネーヴでICJの勧告的意見について問われ、「非常に重要な決定だ。イスラエルがこれに従うことを望む」と述べた。
国連がガザへの援助物資の搬入を強化し、現地の「悲劇的な状況」に対処するためにあらゆる努力をしているタイミングで、勧告的意見が出されたとも、グテーレス氏は述べた。
UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、「明確な」意見が示されたと述べた。
「エジプトやヨルダンでは大量の食料や救命物資が待機している状態だ。UNRWAにはガザでの人道対応を即座に拡大し、民間人の苦しみを軽減するための資源と専門知識がある」と、ラザリーニ氏はソーシャルメディアに投稿した。
イスラエルの反応、UNRWAとハマスの関連は
しかしイスラエル外務省は、勧告的意見が出されることは「UNRWAに関しては、最初から予測されていた」とし、これを断固として拒否すると述べた。
「これは、『国際法』を装ってイスラエルに政治的措置を押し付けようとする、新たな政治的試みだ」と、同省は付け加えた。
さらに、イスラエルは国際法上の義務を完全に履行しており、「テロ活動にまみれた組織とは協力するつもりはない」と主張した。
UNRWAはガザで活動する最大の人道機関で、現地には1万2000人のパレスチナ人職員がいる。イスラエルは、UNRWAにハマスが深く浸透していると繰り返し主張しているが、UNRWAはこれを否定している。ハマスはイスラエル、アメリカ、イギリスなどからテロ組織に指定されている。
イスラエルは、UNRWA職員が2023年10月7日のハマスによるイスラエル南部奇襲に関与していたとも主張している。この襲撃でイスラエル側では約1200人が殺害され、251人が人質としてガザに連れ去られた。イスラエルは、UNRWAが現在も1400人以上の「ハマス工作員」を雇用していると主張している。
国連は昨年、UNRWA職員9人を解雇したと発表した。2023年のイスラエル攻撃をめぐる調査で、攻撃に関与した可能性が示されたためだとした。別の10人は証拠不十分とされた。
ICJの岩澤判事は、ICJが受け取った情報は「UNRWAの中立性の欠如を立証するには不十分」なもので、イスラエルは「UNRWA職員の多くがハマスやほかのテロ組織の構成員であるとする主張を裏付けられていない」と述べた。

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イスラエルで1月、UNRWAの活動を禁止する法律が施行された後も、UNRWAはパレスチナ人職員がガザや、東エルサレムを含むヨルダン川西岸で、住民に支援や教育、保健サービスやそのほかのサービスを提供し続けているとしている。
しかし、UNRWAによると、イスラエルはガザへの援助物資の搬入を禁止し、UNRWAの国際職員へのビザ発給を停止している。
UNRWAは2023年の開戦以降、少なくとも309人の職員と、同機関の支援活動に関わる72人が殺害されたとしている。ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエルの攻撃でガザではこれまでに少なくとも6万8229人が殺害されている。
UNRWAのガザ責任者代行サム・ローズ氏はBBCに対し、ICJの勧告的意見が「イスラエルの国際法上の義務を強調する」ものであるため、UNRWAはこれを歓迎すると述べた。
「本日の判断は、UNRWAの活動を禁止するイスラエルの法律が、これらの義務に反していると指摘している。イスラエルの現地での行動もまた、義務違反であると指摘している」
パレスチナ自治政府の外務省は、ICJの勧告的意見は「イスラエルがこれらの違法な政策を停止すべきことや、イスラエルに国際法上の義務を順守させる責任が各国にあることを非常に明確に」示しているとした。
「イスラエルはUNRWAに対する違法な禁止措置を直ちに解除し、パレスチナが招いたすべての国際機関が自由かつ安全に活動できるようにしなければならない」と、同省は付け加えた。











