【解説】ホワイトハウスに米欧ウクライナの首脳が集まる……主な論点は BBC編集委員やロシア語記者らの視点

画像提供, Reuters
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ全面侵攻をめぐり、米ホワイトハウスに18日、米・欧・ウクライナの首脳が急遽(きゅうきょ)集まった。
和平合意を仲介しようとするドナルド・トランプ米大統領は、15日に米アラスカ州で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した後、続けてウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領をホワイトハウスに招いた。
これを受けて、ウクライナを支援する欧州諸国の首脳らが急遽、ゼレンスキー氏と共にホワイトハウスを訪れ、一堂に会して会談するという異例の事態になった。
さらにトランプ氏は、ゼレンスキー氏や欧州首脳らとの会談の途中で、プーチン大統領と電話で40分ほど会談した。
トランプ氏自身はこれについてソーシャルメディアで「一連の会談の最後に、私はプーチン大統領に電話し、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の会談の手はずを整え始めた。場所は未定だ」と書いた。
トランプ氏は、「その会談が行われた後には、3者会談を開く。それは両大統領と私の会談だ」とも方針を示した。
何が議題で、何が争点なのか。BBCの編集委員やロシア語記者たちが解説する。

画像提供, Reuters
主な論点……今のところ
ヴィタリー・シェフチェンコBBCモニタリング・ロシア語編集長
アメリカ、ウクライナ、欧州首脳らの主要議題が、ウクライナの安全保障の保証と、トランプ、ゼレンスキー、プーチン各大統領による3者会談の可能性だったことが、今では明らかになった。
その安全保障の保証が、具体的に何を意味するのかは、まだ明らかになっていない。西側諸国はウクライナに、今まで以上に武器を供与する用意があるのか。あるいは、より高性能な兵器を? それとも、地上部隊を派遣する用意があるのかどうか。
加えて、プーチン氏と直接会談したところで、それによって実際に、戦争が終わらせやすくなるのかどうかも、不透明だ。
停戦についても、意見の食い違いがあるのは明らかだ。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、停戦が次の段階であるべきだと主張している。しかし、プーチン氏と会談した後のトランプ氏は、これに反対している。
とはいえ、ホワイトハウスで行われた今日の一連の会談では、世間の目の前で首脳たちが言い争うという事態にはならなかった。それ自体が成果といえる。
現時点では、(米ロ首脳会談の行われた)アンカレッジや、今回のワシントンで、何らかの合意が成立したという情報はない。私たちは、各首脳の発言を分析することで状況を推測している状況だ。
プーチン氏とトランプ氏が電話会談
リザ・フォクト記者(BBCニュースロシア語)
クレムリン(ロシア大統領府)は、ゼレンスキー氏と欧州首脳らがホワイトハウスを訪問していた間に、トランプ氏とプーチン氏が電話で会談したと認めた。
プーチン氏の側近、ユーリ・ウシャコフ補佐官(外交担当)は、会談は40分間にわたり、「率直」で「それなりに建設的だった」と述べた。
クレムリンの発表で特に重要なのは、両首脳が「ロシア政府とウクライナ政府の交渉において、代表者のレベルを引き上げる可能性を探るという考え」について話し合ったと、ウシャコフ補佐官が述べた点だ。
ロシア側は、ロシア・ウクライナ首脳会談の準備に着手したというトランプ氏の発言よりも、はるかに慎重な姿勢を示したことになる。
ロシアとウクライナは今年、イスタンブールで3回にわたり交渉を行った。しかし、解決できたのは捕虜交換など一部の人道的課題に限られ、戦争終結にはまったく近づかなかった。
ロシア代表団を率いたのは、保守派の大統領補佐官ウラジーミル・メディンスキー氏だった。ウクライナ側の代表団トップは、ルステム・ウメロフ前国防相だった。

画像提供, POOL/EPA/SHUTTERSTOCK
それに対してクレムリンが今回、「代表者のレベルを引き上げる」と言っているのが、具体的に何を意味するのかは不明だ。しかし、こういう言い方を通じてプーチン氏が、ゼレンスキー氏およびトランプ氏とすぐに会うのを引き延ばそうとしている可能性がある。プーチン氏は今後も、政府首脳同士ではなく政府高官級のレベルでしか、交渉を続けるつもりがないのかもしれない。
あるいはクレムリンは、今後の協議にはプーチン氏自身が出席するのか、それとも大統領より低いレベルの政府代表を派遣するのか、まさに今回のワシントン協議の結果次第で決めるのかもしれない。
トランプ氏が言う安全保障の保証に疑問残る
ポール・アダムス外交担当編集委員
トランプ氏は18日、ホワイトハウスの大統領執務室で、記者団の質問に答えた。それでも、ウクライナの安全保障をどう保証するのかについて、トランプ氏が何を考えているのか、依然としてはっきりしない。
トランプ氏は途中で、「自分たちが彼らをしっかり守る」という言い方をした。
北大西洋条約機構(NATO)条約第5条が定める集団防衛体制に似た仕組みを、アメリカ政府が支持するかもしれないという報道について、記者団が質問すると、トランプ氏はそれまはだ話し合っていないと答えた。
ただし、ウクライナを支持する欧州の同盟諸国が、ウクライナの安全保障をいかに保証するか「とても重視している」ことを、トランプ氏は記者団に認め、この問題を協議するため、大統領執務室に近いホワイトハウス内で待機しているのだとも説明した。
「それについて、こちらは(欧州とウクライナを)助けてあげるつもりだ」と、トランプ氏は述べた。
アメリカに何を提供する用意があるかによって、この保証の形は大きく左右される。イギリスとフランスは3月以降、「有志連合」を結成しており、停戦が成立した場合にウクライナの防衛を支援する体制を整えている。ただし、スターマー英首相は英仏のこの仕組みが成功するには、アメリカによる「バックストップ(援護)」が不可欠だと述べている。
スターマー氏の言う「バックストップ」の具体的な内容は今まで一度も明示されていない。しかし、空軍支援、補給、情報提供などが含まれると考えられている。
ウクライナの安全の保証、どういう形があり得るのか
フランク・ガードナー安全保障担当編集委員
ウクライナとロシアの間で今後、恒久的な和平合意が成立したとして、それがどういう形のものだろうと、ウクライナの安全を保証する何かしらの仕組みが合意の中心に据えられることになる。ロシアが今後再び、ウクライナを攻撃しないよう、ロシアを抑止するためだ。ホワイトハウスで行われた欧州首脳との会談でも、これが再び議題となった。
アメリカはこれまで、安全保障の保証提供に消極的で、英仏のいわゆる「有志連合」に対応を委ねてきた。しかし、ホワイトハウスの発言からは、アメリカが支援に前向きになりつつある様子がうかがえる。
では、安全保障の保証とは、どのような形を取り得るのか。大きく分けて4つの選択肢がある。
・地上部隊の派遣
これは最も可能性が低いとされる。トランプ氏はこの戦争を「ヨーロッパの問題」と見ており、2022年当時に「自分が大統領だったら起きなかった」と述べている。たとえ平和維持活動のためでも、トランプ氏が米軍地上部隊を派遣するのは、大きな方針転換となる。
・空と海からのパトロール
地上部隊派遣よりはこちらの方が、あり得る選択肢だ。アメリカ空軍はすでに黒海などで偵察飛行を実施し、戦況の把握に努めている。ただしもちろん、非対立的な偵察飛行や海上哨戒(しょうかい)と、核保有国ロシアと武力衝突する可能性を前提とした活動とでは、大きな違いがある。
・情報支援
アメリカの人工衛星および空からの偵察情報は、ウクライナが侵攻するロシア軍の前進を食い止める上で、極めて重要な役割を果たしてきた。すべての当事国が和平合意に同意した場合、アメリカはおそらく進んでこの分野で協力しようとするだろう。
・補給支援
ウクライナを「安心」させる英仏主導の部隊が、和平合意後にどのような形を取るにせよ、大規模な補給支援が必要となる。トランプ政権は欧州での軍事展開を縮小する方針を示しているが、補給支援という非武力分野では協力する可能性が高い。













