【解説】 習氏、強い立場にいるのは誰なのかトランプ氏に示す 金氏やプーチン氏との会談を準備

2019年6月28日、大阪で開催されたG20首脳会議に出席した際の中国の習近平国家主席

画像提供, Getty Images

画像説明, 中国の習近平国家主席

ローラ・ビッカー中国特派員

北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、中国・北京の中心部で軍事パレードに出席し、その横にロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平国家主席が並ぶのは、格好のシャッターチャンスだろう。

そして習氏にとっては、重要な外交的勝利でもある。

習氏は国際舞台で、中国の力を誇示したがっている。世界2位の経済大国であるだけでなく、外交の重要国でもあることをアピールしたいと思っている。

アメリカのドナルド・トランプ大統領の関税措置が経済関係を根底から覆すなか、習氏は安定した貿易相手国としての中国の役割を強調してきた。

トランプ氏は、ウクライナでの戦争の終わらせようと、プーチン氏に合意を働きかけているが、成果が見られていない。そうした状況で、習氏はプーチン氏を北京に迎える準備を進めている。

突然発表された金氏の出席も、これに劣らず重要な意味を持つ。トランプ氏は今週、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談した際に、金氏と再会したいと発言した。

トランプ氏は大統領1期目に、孤立した独裁者である金氏と2度会談し、世界から注目された。だが、外交的には何ら進展を達成できなかった。トランプ氏はいま、再挑戦への意欲を見せている。

一方の習氏は、このゲームで自分が地政学的な切り札を握っていると示そうとしている。さらに、金氏とプーチン氏に対する自分の影響力は、限定的ではあるものの、どんな取引においても極めて重要だとわからせようとしている。

9月3日の軍事パレードは、第2次世界大戦で日本が降伏し、中国の一部の占領が終わって80年になるのを記念するもので、中国の軍事力を誇示するものとなる。

ただ、習氏はそれ以上のものを示そうとしている。そして、タイミングにも重要な意味がある。米ホワイトハウスは、トランプ氏が10月末にアジアを訪れ、習氏と会談する可能性も示唆しているからだ。

両首脳の間には、話し合うべきことがたくさんある。延び延びになっている関税合意、アメリカでの動画配信アプリTikTokの売却、プーチン氏をウクライナでの停戦やそれ以上のことに合意させる中国の能力――などだ。

金氏とプーチン氏の両方に会った後なら、習氏は「蚊帳の外」に置かれていると感じることなく、トランプ氏と会談できるだろう。金氏やプーチン氏との関係が近いことを考えれば、トランプ氏が知らない情報を、習氏がもつ可能性もある。

ロシアと北朝鮮は、西側諸国の目には「のけ者」に映っている。その期間は、金氏の方が、兵器開発計画のせいでプーチン氏よりずっと長い。金氏はロシアのウクライナ侵攻を支持したことで、新たな非難を浴びている。

そのため、金氏にとって北京への招待は、大きな前進だ。北朝鮮の指導者が最後に中国の軍事パレードに出席したのは1959年のことだった。

習氏と金氏は、中朝国交樹立70年を記念して会談した2019年以降、公の場ではほとんど接触していない。北京はまた、金氏が2018年に、北朝鮮の核開発計画の抑制を目指すトランプ氏と会談する前に最初に訪れた場所でもある。

一方で、習氏は最近、ロシアと北朝鮮が同盟関係を深化させるのを傍観しているようにも見える。中国としては、この動きには関わりたくはないだろう。

北朝鮮の金正恩総書記とロシアのプーチン大統領が並んでいる。ともにダークスーツを着てネクタイを締めている。プーチン氏はカメラを見て、金氏は別の方向を見ている

画像提供, Getty Images

画像説明, ロシアのウクライナ侵攻が金氏(左)とプーチン氏の距離を縮めた

中国はウクライナの戦争について、平和的解決を促しながらも、公には中立を保とうとしている。しかし、アメリカとその同盟国は中国のことを、ロシアが戦争に使える部品を供給することでロシアを支援していると非難している。

一部のアナリストらは、金氏がプーチン氏に接近したことで、中国と北朝鮮の関係が悪化したのではないかと考えていた。しかし、金氏が来週、北京を訪れることになったことは、別の可能性を示唆している。

金氏にとって、中国との関係は簡単に手放せるようなものではない。北朝鮮の経済は中国に大きく依存しており、食料輸入のほぼ9割は中国からだ。また、プーチン氏や習氏だけでなく、インドネシアやイランなど他国の指導者らと表舞台に立つことで、金氏は指導者としての正当性を印象づけられる。

習氏にとっても、トランプ氏との首脳会談を前に、アメリカに対する外交的な力を得ることになる。

中国とアメリカは、破滅的な関税と貿易戦争を回避しようと、合意を目指して協議を続けてきた。現在、90日間の「休戦」状態にあるが、時間はどんどん過ぎて行っている。交渉が進むにつれ、習氏は可能な限り強力な手を求めるだろう。

習氏には提供できるものが多い。中国は過去に、トランプ氏が金氏に会うのを助けたことがある。習氏はもう一度、同じことをするだろうか?

より重要なのは、おそらく、ウクライナでの戦争を終わらせるため、中国がどのような役割を果たせるかということだろう。

そして、最も印象的な問いはこれだろう。習、プーチン、金、トランプの各氏が集う首脳会談はあるのだろうか?