トルコ大統領選、決選投票で現職エルドアン氏が勝利

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28日に投開票が行われたトルコの大統領選挙の決選投票で、20年間現職にあるレジェップ・タイイップ・エルドアン氏が野党統一候補のケマル・クルチダルオール氏を下した。任期は5年。選挙管理委員会が発表した。
政府系アナトリア通信によると、開票率99.85%の時点で得票率はエルドアン氏が52.16%、クルチダルオール氏が47.84%。最終結果は発表されていないが、選管はエルドアン氏の勝利は確実としている。
エルドアン氏は勝利演説で、「我々はトルコをとても愛している」と支持者に語り掛け、一致を呼びかけた。一方で、野党のクルド人政党との共闘やLGBTQ(性的マイノリティー)政策を攻撃した。
クルチダルオール氏は敗北を認めていない。同氏は、今回の選挙は「近年で最も不公平な選挙」と述べ、与党・公正発展党(AKP)が大統領に対してあらゆる国家手段を動員したと述べた。


「トルコが勝った」とエルドアン氏
今年は、トルコ近代化から100周年に当たる。エルドアン氏は首都アンカラの大統領府での勝利演説で、「今回はトルコの歴史上最も重要な選挙の一つで、国民はトルコの1世紀を選んだ」と述べた。
「国民は我が党を国会の多数党に選んだ。我々だけが勝ったのではなく、トルコが勝ったのだ」
また、2月にトルコやシリアを襲った大地震に触れ、「2月6日の地震で崩壊した都市を再建し、人々がよりよい暮らしを見つけるのを助けることが、我々の優先事項だ」と話した。
さらに、今年はオスマン帝国がイスタンブールを制圧してから570年目に当たると述べ、「あれは歴史の転換点であり、1世紀を閉じ、新たな1世紀を開いた」、「今回の選挙が、そのような歴史の転換点になることを願っている」と語った。

これに先立ち、イスタンブールのAKP本部前で行った演説では、「バイバイ、ケマル」と対立候補のクルチダルオール氏を揶揄(やゆ)する場面もあった。
また、野党側が掲げていたLGBTQの権利を推進する政策を批判したほか、クルチダルオール氏がテロリストの味方をしていると非難。
クルド人政党「国民民主主義党(HDP)」の元党首を釈放するというクルチダルオール氏の約束について、「我々のルールの下では、そうしたことは絶対に起こらない」と述べた。
HDPは今回の大統領選で、クルチダルオール氏を支持すると表明していた。

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対するクルチダルオール氏は、アンカラの共和人民党(CHP)本部での演説で、エルドアン氏の全体主義政府が不公正な選挙を行ったと主張。
「これから待ち受ける困難にも、私たちは立ち向かっていく」と、怒りをにじませた。
また、この演説では敗北を認める発言はなかった。
CHPは第1回投票と、同日に行われた議会選挙についても、数千の投票箱で集計に誤りがあったと主張している。
これについては、欧州安全保障協力機構(OSCE)もいくつかの問題点を指摘しており、エルドアン氏と与党が「不公正な利益」を得ていたと述べている。
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今月14日に行われた第1回投票では、エルドアン氏が49.52%、クルチダルオール氏が44.88%と、共に勝利に必要な得票率50%を獲得できなかった。
世論調査では、第1回投票ではクルチダルオール氏が優勢だったが、決選投票についてはエルドアン氏に指示が集まっていた。
第1回投票で3位(5.17%)につけていた極右のシナン・オアン候補は、エルドアン氏を支持すると表明していた。

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今回の大統領選の焦点は生活費危機だった。トルコではインフレ率が1998年以来の高水準に達しており、大都市の家賃に加え、光熱費や日用品、交通費などの値上がりが著しい。
また、今年2月6日に発生した大地震の影響を、数百万人がなお受けている。この地震では11都市が被災し、死者は数万人にのぼった。政府は救助活動の遅れを批判されており、エルドアン大統領が後に謝罪している。
政府は公的支出の拡大、年金や奨学金の引き上げ、光熱費補助、低金利住宅ローンといった施策を提案している。
一方のクルチダルオール氏陣営は、2017年に僅差で決まった強大な大統領権限を縮小し、議会システムを復活させると約束し、多くの支持を集めた。
ソーシャルメディアでの政府批判の抑圧も、問題となっている。司法省のデータによると、エルドアン氏が大統領となった2014年以降、5万人以上が「大統領を中傷した」罪で起訴されている。
ビルギ大学のエムレ・エルドアン教授は、「政治的見解の全く異なる政党を集め、クルド人の支持も得た野党連盟の多様性は、投票結果には表れなかった」と指摘。
新型コロナウイルスのパンデミックや経済危機、2月の地震といった大きな危機も、エルドアン氏打倒には届いておらず、「クルチダルオール氏の支持者らが決選投票の準備をしていなかったようにも思える」と述べた。

<解説>ポール・カービー、欧州デジタル編集長(アンカラ)
トルコの大統領は国内では全権を握っているが、国際的にも大きな役割を担っている。西側諸国の防衛同盟である北大西洋条約機構(NATO)の一員でありながら、ますます東を向いている。
ロシアとウクライナの首脳は、エルドアン氏の当選をいち早く祝福した。エルドアン氏は戦争の仲介役になろうとしており、昨年には黒海を通じた穀物輸出再開に大きく関与したからだ。
NATOの一員としては、スウェーデンの加盟を阻み、同国政府がクルド人過激派を匿っていると非難するなど、気難しさをみせることもある。スウェーデンのウルフ・クリステション首相が、「我々の共通の安全保障が将来の優先事項だ」と言ってエルドアンを祝福したのも不思議ではない。
ロシアのミサイル防衛システムを購入するという決断は、NATO同盟国の怒りを買った。
イギリスやフランス、欧州連合(EU)、中東諸国からも当選を祝福されていることが、エルドアン氏の重要な立場を示している。しかし、激しい選挙戦と深刻な経済危機の後、国内の分断こそ最も修繕が難しいと気付くだろう。











