米政府、ロシアのウクライナ侵攻いつ始まってもおかしくないと警告

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緊迫するウクライナ情勢についてジェイク・サリヴァン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は11日、ロシアは「いつでも」ウクライナを侵攻できるだけの部隊配備をすでに完了しており、ウクライナ国内にいるアメリカ人は48時間以内に退避すべきだと述べた。さらに北京冬季オリンピック開催中でも、ロシアが攻撃を開始する可能性を指摘した。
米政府のサリヴァン大統領補佐官はホワイトハウスで記者会見し、ロシア軍の部隊は今や「大規模な軍事行動を開始できる状態にある」と述べた。米政府高官がこのところ繰り返していた警告の中でも、危機が明確に高まったと受け止められる表現をサリヴァン氏は使った。
「もちろん我々は未来を予言できない。何が起きるのか正確には分からない。しかし、(退避するのが)賢明だと言えるほど、今やリスクは高いし、脅威も喫緊に切迫している」と、大統領補佐官は強調した。
サリヴァン補佐官はさらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が侵攻の最終判断をしたのかどうか、米政府は知らないと付け加えつつ、ロシア政府は軍事行動を正当化する口実を探しているのだと指摘。さらに、侵攻の皮切りとなるのは激しい空爆かもしれないと述べ、その場合、民間人への被害が出る危険が高く、外国人の出国は困難になると予想されると警告した。
また「オリンピックの最中に始まることもあり得る」と述べた。現在北京で開かれている冬季五輪は、今月20日に閉幕する予定。
オリンピック期間中でも……国務長官
サリヴァン氏の会見に先立ち、アントニー・ブリンケン米国務長官は、ウクライナ国境沿いに集結するロシア軍部隊の規模が先週からさらに増えているとして、「ロシア側が事態をエスカレート(深刻化)させようとしている様子が、非常に懸念される」と述べた。
「今は侵攻がいつ始まってもおかしくない状態にある。はっきりさせておくと、それはオリンピック期間中も含まれる」とブリンケン氏も強調した。


ウクライナにいるアメリカ人について、ジョー・バイデン米大統領は10日夜放送の米NBCニュースとの単独インタビューで、自国民保護のためにウクライナに米軍を派遣するシナリオは何かあるのかと質問され、「そういうシナリオはない。アメリカとロシアがお互いに発砲し始めたりしたら、それは世界大戦だ」と慎重な姿勢を示した。
さらに大統領は、「かつてないような、今までとはとても違う世界に私たちはいる」と述べた。
アメリカのほかにこれまで、イギリス、カナダ、オランダ、ラトヴィア、日本、韓国など複数の政府が、自国民にただちにウクライナを出国するよう勧告している。
ロシア外務省は、西側諸国が偽の情報を拡散していると批判している。
ロシアはウクライナとの国境に兵10万人以上の部隊を集結させているものの、侵攻の意図はないと繰り返している。その一方で、ロシア政府は、北大西洋条約機構(NATO)がこれ以上、東へ拡大しないことや、ウクライナがNATOに加盟してロシアの安全保障上の脅威にならないことへの、保証を欧米に求めている。
ロシア軍は11日には、黒海とアゾフ海での軍事演習を実施。ウクライナはこれによって自分たちは海上封鎖状態に置かれていると批判している。
また、ロシアは隣国ベラルーシとの大規模な軍事演習も開始しており、この合同演習のためロシア軍は現在、国境を挟んでウクライナの首都キーウ(キエフ)に近い位置にいる。このことから、ロシア軍によるキーウ攻撃が容易になったと懸念が高まっているものの、ロシアは、合同演習が終われば部隊は通常の基地に戻ると主張している。
NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、NATO陣営は「あらゆるシナリオに備えて団結している」と述べている。
外交努力と追加派兵
バイデン大統領は11日、欧州連合(EU)幹部や一部のNATO加盟国首脳とビデオ会議を開いた。ホワイトハウスによると、参加したのはカナダのジャスティン・トルドー首相、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長、シャルル・ミシェル欧州理事会議長、エマニュエル・マクロン仏大統領、オラフ・ショルツ独首相、マリオ・ドラギ伊首相、ストルテンベルグNATO事務総長、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領、ボリス・ジョンソン英首相。
急きょ開かれた様子のこの会議で、各国首脳らはロシアがウクライナに侵攻した場合、厳しい経済制裁を協調してロシアに課すことで合意した。
バイデン氏とマクロン氏は12日にも、プーチン氏とそれぞれ電話会談する予定。
米政府はノースカロライナ州のフォートブラッグ基地から来週にも、兵3000人をポーランドへ追加派遣する方針を示している。この部隊はウクライナで戦闘に参加するのではなく、アメリカの同盟国の防衛を保障するために活動するという。
一方、2003年から2006年にかけてアメリカの駐ウクライナ大使を務めたジョン・ハーブスト氏は、米政府は警告を強めているが、ロシアがウクライナを全面侵攻する可能性は低いと思うと話している。

<分析> 抑止戦略の一環――バーバラ・プレット・アッシャーBBC米国務省担当特派員

米政府はこれまでも、欧州の同盟諸国よりも率先して、ロシアがウクライナを攻撃する可能性について警告を重ねてきた。しかし今回の高官発言では、緊迫の度合いが著しく上がっていた。
アメリカは、ウクライナ国境のロシア軍部隊が増え続けていることに加え、部隊の位置や、侵攻作戦開始にそのままつながるかもしれない軍事演習の開始を懸念している。
政府が得た最新情報を検討した結果、バイデン大統領は近い同盟相手と会議を開いた。サリヴァン補佐官によるとバイデン氏は会議で、プーチン氏がまもなく最終的な「ゴー」の命令を出すかもしれないと考えていると伝えた。
米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、ロシア、カナダ、イギリス、欧州の軍トップに相次ぎ電話をかけた。これは異例のことだ。
米政府は、強い警告の言葉を発することでむしろ事態の悪化に寄与してきたという批判も出ている。しかし、情報を共有することで「できる限りの透明性」を維持しようと判断したのだと、サリヴァン補佐官は話した。これが抑止戦略の一環になると、米政府が計算しているのは明らかだ。












