英外務省が異例声明、ロシアがウクライナ政府トップに親ロシア派の投入画策と

Ukrainian soldiers along the frontline near the town of f Zolote-4, Ukraine

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画像説明, ウクライナ東部ルガンスク州の要衝ゾロテ4の最前線に立つウクライナ兵

英外務省は22日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ政府トップに親ロシア派の人物を据えようと画策していると非難した。

同省は声明で、ロシアがウクライナ政府のトップにウクライナのイーヴェン・ムラエフ元議員を据えようと検討していると表明した。英政府がこうした形で、特定の人物を名指しするのは異例。ムラエフ氏は、かつてウクライナの親ロ政権下で最高会議議員だった。

リズ・トラス英外相は声明の中で、「本日発表された情報は、ウクライナ政府を転覆しようとするロシアの活動の規模に光を当てるもので、ロシア政府の考えの中身をうかがわせるものだ」だとした。

外相はその上で、「ロシアは緊張状態を緩和させ、侵略行為や偽情報展開の活動を止め、外交の道を追求しなければならない」、「イギリスやそのパートナー国が繰り返し伝えているように、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は深刻な犠牲を伴う甚大な戦略的ミスになる」と述べた。

ロシアはウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させているが、ウクライナ侵攻は意図していないと主張している。

イギリスの閣僚らはロシアがウクライナに侵攻すれば、深刻な結果を招くことになると警告している。

親ロシア派の人物とは

メディア・オーナーのムラエフ氏は、2019年の選挙で所属政党が得票率5%を確保できなかったため、ウクライナ議会での議席を失った。

英外務省は声明でムラエフ氏のほかに、ロシア情報機関との関係を維持しているとして、ウクライナの元政府要人4人の名前も挙げた。このうち数人は、侵攻作戦の策定に現在携わるロシア情報機関の関係者と過去に接触していたという。

英外務省が名指しした4人には、2014年に失脚した親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領(当時)の下で首相を務めたミコラ・アザロフ氏も含まれる。

政権崩壊後にロシアへ逃れたアザロフ氏は亡命政権を樹立したが、これはロシアの支配下にある傀儡(かいらい)政権だと広く認識されている。

同氏は国際制裁の対象となっているほか、ウクライナ政府の要請により、横領や資金の不正流用などの容疑で国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)のレッド・ノーティス(容疑者の引き渡しを要請する通知)が出ていいる。

英外務省は今回、ウクライナ国家安全保障・国防会議の副議長だったウォロディミル・シヴコヴィッチ氏の名前も挙げている。シヴコヴィッチ氏は今週、ロシアの情報機関と連携していたとして、アメリカの制裁対象となった。

残りの2人は、ヤヌコヴィッチ政権下で副首相を務めたセルフィ・アルブゾフ氏とアンドリー・クリュイエフ氏という。

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2014年にウクライナで親ロシア政権が崩壊すると、ロシアはウクライナ南部クリミア半島を併合し、ウクライナの領土を占領した。

ロシア軍がウクライナ国境に集結していることを受け、西側諸国やウクライナの情報機関は、2022年初頭にも、ロシアによる新たな侵略や侵攻が起こる可能性があると示唆している。

ロシアはウクライナへの攻撃は計画していないとしているものの、プーチン大統領は西側諸国に様々な要求を重ねてきた。ウクライナは決して北大西洋条約機構(NATO)に加盟すべきではなく、NATOは軍事演習を放棄し、東欧諸国への武器の提供を停止すべきだと訴えている。

動画説明, ロシアが軍部隊増強で緊迫 ウクライナの最前線を取材

アメリカの対応

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は21日、ウクライナ情勢をめぐりスイス・ジュネーヴで会談した。両外相は、ウクライナでの紛争拡大防止を目的とした会談について、「率直」なものだったとした。

それから数時間後の22日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)にアメリカから「軍事的支援」が届いた。

「最前線で国を防衛する人々」への弾薬などの支援物資は、ジョー・バイデン米大統領が昨年12月に承認した2億ドル(約227億円)規模の安全保障支援パッケージの第一便。

欧州諸国の反応

これに先立ち、英下院の国防特別委員会のトバイアス・エルウッド委員長は、ウクライナへの侵略行為が差し迫っている恐れがあると警告。ウクライナを支援するため、イギリスはこれまで以上に対応する必要があると述べた。

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首も、「ロシアの武力侵略に断固として反対」するとし、「我々の価値と安全を守る」よう政府に求めた。

イギリスは17日、ウクライナに自己防衛のための短距離対戦車ミサイルを供給していると発表した。また、訓練を提供するためにイギリス軍の小チームをウクライナに派遣したとした。

イギリスやアメリカ、ロシアと国境を接する旧ソ連構成国を含むNATOの加盟30カ国は、1カ国に対する武力攻撃は全加盟国に対する攻撃だとし、互いに支援することで合意している。

A graphic showing Nato's expansion since 1997
画像説明, 紫色は1997年以前にNATOに加盟した国。黄色は1997年以降に加盟した14カ国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、スロヴェニア、クロアチア、モンテネグロ、アルバニア、北マケドニア、ブルガリア)
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