米ロ外相が会談、緊迫するウクライナ情勢めぐり ロ提案に米が来週回答へ

画像提供, EPA
ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相とアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は21日、緊迫するウクライナ情勢をめぐりスイス・ジュネーヴで会談した。両外相は、ウクライナでの紛争拡大防止を目的とした会談について、「率直」なものだったと語った。
ロシアはウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させているが、ラヴロフ外相はウクライナ侵攻を意図したものではないと繰り返し否定した。
ブリンケン国務長官は、アメリカはいかなる侵攻にも厳しい対応をとる方針だと述べた。
ウクライナ東部では、約8年前に激しい戦闘が勃発して以降、親ロシア派の反政府勢力が同地域の大部分を占領している。ウクライナ軍と親ロシア派の戦闘ではこれまでに約1万4000人の命が失われ、約200万人が住む家を追われた。2020年に停戦合意が成立したものの、それ以降は相手が合意に違反したと互いに非難し合っている。
アメリカとその同盟各国は、ロシアがウクライナへ侵攻すれば新たな制裁を科すと警告している。
米政府は来週にも自らの立場を文書にまとめ、さらに協議する予定。
<関連記事>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、西側諸国に様々な要求を重ねてきた。ウクライナは決して北大西洋条約機構(NATO)に加盟すべきではなく、NATOは軍事演習を放棄し、東欧諸国への武器の提供を停止すべきだと訴えている。
プーチン氏は、NATOの拡大や国境付近でのNATOの軍事的プレゼンスが、ロシアの安全保障に対する直接的脅威になっていると主張している。
米ロ外相は何と
ブリンケン国務長官は外相会談について、「率直で実質的な」ものだったとし、ラヴロフ外相も「率直」な会談で「合理的な対話をしていく」ことで合意したと述べた。
「感情的な反応が収まるよう望んでいる」と、ラヴロフ氏は付け加えた。
ブリンケン氏はラヴロフ氏に対し、ロシアがウクライナへ侵攻すればアメリカと同盟国が「一致団結し、迅速かつ厳しい」対応を取ることになると警告した。
会談後には、アメリカには互恵の精神に基づき、ロシアをめぐる懸念に対処するため、あらゆる手段を追求する用意があると述べた。
ブリンケン氏はまた、ロシアが部隊を増強し、南、東、北の3方向からウクライナを攻撃する能力を獲得したと指摘。ロシアにウクライナへの侵略行為を止めるよう求めた。


アナリストたちは会談前、両政府がウクライナ国境付近での軍事演習の透明性拡大や、欧州でのミサイル配備規制復活などで、合意するかもしれないと予測していた。こうしたルールは、冷戦下の1987年にアメリカとソ連が結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約で定められていたもの。アメリカはロシアが条約に違反しているとして2019年にこの条約を失効させた。
アメリカの主張
ブリンケン国務長官は、ロシアがサイバー攻撃などの非軍事的方法で自国利益を増進するための「広範なプレイブック(戦略と戦術)」を用意していると、アメリカは経験上承知していると述べた。
そして、アメリカが今後数週間、ウクライナに「安全保障支援」を提供し続けると確認した。アメリカは昨年、ウクライナに対戦車誘導ミサイルシステムのほか、小型の武器や弾薬を提供している。
ブリンケン氏は、ラヴロフ氏との会談でイランの核能力をめぐる交渉も話題に上ったとして、イラン核問題への対応は、安全保障問題で米ロが協力できることを示す事例だと述べた。
ロシアの主張
一方、ラヴロフ氏はオープンで有益な会談だったとしつつ、NATOはロシアに対立する動きを重ねていると非難。さらに、ロシアは「ウクライナの人々を脅かしたことはなく」、ウクライナへの攻撃は計画していないという、従来の主張を繰り返した。
また、ウクライナ政府が同国東部を占領する反政府勢力に対して「国家テロ」を行い、同地域の紛争停止を目的とした2015年のミンスク和平合意を「妨害」していると非難した。
ラヴロフ氏は、アメリカが来週にも、ロシアの全提案に対して「書面で回答」すると述べた。しかしブリンケン氏は、アメリカは「来週、懸念とアイデアを書面でより詳細に」共有したいと述べるにとどめた。
ロシアは会談の前日、今月から来月にかけて、ロシア近海のほか地中海や北海、オホーツク海、太平洋などで140隻以上の艦艇や60機以上の航空機を動員した軍事演習を実施すると発表した。軍事力を誇示するためとみられる。
アメリカはこの日、ウクライナ侵攻に備えてロシアの諜報員がウクライナ政府の現・旧職員を雇い、侵攻から直ちにロシアに協力する臨時政府を現地に設けられるよう工作していたと発表。米財務省はこの陰謀に加担したとされるウクライナの現職国会議員2人と元政府関係者2人に制裁を科した。

画像提供, Getty Images
欧州諸国の反応
ブリンケン氏は会談に先立ち、ウクライナへの支援を示すため首都キーウ(キエフ)を訪問。ドイツ・ベルリンで独・英・仏外相との会談を経て、ジュネーヴ入りした。
欧州の一部の国は、東欧におけるNATOの軍事配備の強化に向けて動いている。スペインは地中海と黒海に展開するNATO海軍部隊に加わるため軍艦を派遣。デンマークもバルト海にフリゲート艦を派遣する方針を発表した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ルーマニアへの部隊派遣を申し出ている。
イギリスは17日、ウクライナに自己防衛のための短距離対戦車ミサイルを供給していると発表した。また、訓練を提供するためにイギリス軍の小チームをウクライナに派遣したとした。
リズ・トラス英外相は21日、恐ろしい犠牲を出すことになる「大規模な戦略的ミスを犯す前に思いとどまり、ウクライナから手を引く」ようプーチン氏に求めた。
「小規模な侵攻」
ウクライナ情勢をめぐっては、アメリカのジョー・バイデン大統領が19日、ロシアの侵攻が「小規模」ならアメリカや同盟国の対応はより小さくなるかもしれないと示唆。一部の記者から、アメリカがロシアによるウクライナへの小規模な侵攻を認めるつもりなのかとの質問が出た。
これを受け、米政府関係者が慌てて政府の立場を明確にする事態となった。
バイデン氏自身も20日、ロシア軍によるいかなる侵入も「侵攻」とみなされると述べた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日、「小規模な侵攻などない。愛する人を失う際に、小規模な犠牲や小さな悲しみなどないのと同じだ」と反発した。
Your device may not support this visualisation
上図はNATO加盟国の変化。左側は1991年初頭、右側が2022年初頭の状況。紫色がNATO加盟国。リトアニアは1990年にソ連からの独立を宣言した。緑色はNATO加盟を望んでいる国(ウクライナ、ジョージア、ボスニア・ヘルツェゴビナ)。










