「感染しない人」手掛かりにワクチン開発へ 医療従事者を英大学が研究

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新型コロナウイルスには、パンデミックが始まって以降、世界中で2億5000万人以上が感染している(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計)。こうした中、新型ウイルスにさらされても自然耐性で感染を防いできた人たちもいるという。研究者たちは、この自然耐性について理解を深めることが、より優れたワクチンの開発につながると考えている。

英ユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームによると、パンデミック以前に、新型ウイルスに対する免疫を一定程度持っていた人が複数いた。

これは、新型ウイルスと関連性のある、過去に世界を襲ったウイルスとの闘いで、ヒトの体が闘い方を学習した結果だとみられる。

研究チームは、この免疫力をコピーできるようにワクチンを改良すれば、さらに効果的な予防接種を行えるとしている。

今回の研究では、科学者たちは感染第1波の最中、病院スタッフを注意深くモニタリング。定期的に血液を採取するなどした。

すると、感染リスクが高い環境にいたにも関わらず、対象者の全員が新型ウイルスに感染したわけではなかった。

「闘う準備ができている」

学術誌「ネイチャー」に10日に掲載された研究結果によると、一部の病院スタッフは感染を免れたという。

約10人に1人は、新型ウイルスにさらされた形跡が認められたものの、一度も症状は出ず、ウイルス検査で陽性になることもなかった。また、新型ウイルスと闘うことで獲得する抗体も、血中にできていなかった。

つまり、免疫システムの一部が、新型ウイルスが体内に定着する前にウイルスを制圧したということになる。これは「不稔感染」として知られる。

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画像説明, 1つのウイルスとの闘い方を学べば、別のウイルスへの免疫力も獲得できるかもしれない

それら一部の人々には、新型ウイルスに感染した細胞を特定して破壊するT細胞がすでに(パンデミック以前から)あったことが、血液サンプルで示された。

研究チームのメンバーのレオ・スワドリング博士は、そうした人たちの免疫システムはすでに、新しい病気と闘うための「準備ができている」状態だったと述べた。

特定のたんぱく質を標的に

現在使用されているワクチンの多くは、新型ウイルスが人体の細胞に入り込むのに必要な、ウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質を標的にするよう、免疫システムに覚え込ませる。一方で、T細胞はこれとは異なる部分を見つけることができる。

希少なT細胞はウイルスの内部を観察し、ウイルスの複製に必要なタンパク質を見つける。

「新型ウイルスが検知可能になる前にウイルスを制御できた医療従事者は、ウイルスの内部機構を認識するT細胞をパンデミックが始まる前から持っていた可能性が高い」と、スワドリング博士は付け加えた。

一般的な風邪の症状を引き起こすものを含む全てのコロナウイルスの近縁種は、非常によく似た内在性たんぱく質を持っている。

そのため、これらのたんぱく質を標的としたワクチンを開発すれば、全てのコロナウイルスや、新型ウイルスの変異種に対してある程度の免疫が獲得できる可能性がある。

ワクチン改良に向けて

研究チームは、現在使用されているワクチンは、重症化を防ぐという点では非常に優れているものの、感染自体を防ぐという点では劣っているとした。

UCLのマラ・マイニ教授は、BBCのジェイムズ・ギャラガー保健・科学担当編集委員に対し、ワクチンは「もっとうまくやれると思っている」と述べた。

「これらのT細胞を加えることで、新型ウイルス感染症(COVID-19)の発症だけでなく、感染からも守れるようになること、そして新たに出現した変異株をもっと認識できるようになることを、我々は望んでいる」

ほぼ全ての人が一般的な風邪を引き起こすコロナウイルスに感染したことがあっても、誰もが適切な種類のT細胞を獲得できるわけではない。医療従事者は仕事を通じて、一般市民よりも定期的にウイルスにさらされるため、こうした免疫力を持った人がいたのかもしれない。

英レディング大学のアレクサンダー・エドワーズ博士は、「今回の研究で得られた見識は、異なるタイプのワクチンを設計するうえで重要なものになるかもしれない」と述べた。

「この研究がワクチン開発におけるさらなる進歩につながることを願っている。我々にはあらゆるタイプのワクチンが必要なので」