EU、北アイルランド議定書の改定案を発表 ブレグジット

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欧州連合(EU)は13日、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後のアイルランドと英・北アイルランド間の通商について定めた「北アイルランド議定書」の改定案を発表した。
北アイルランド議定書では、北アイルランドとEU間の通商に支障が出ないよう税関など国境管理措置を設けないと定められている。しかしこれにより、北アイルランドと残りのイギリスとの間に税関が必要になっていた。
イギリスはこれを不服として議定書の改定を模索している。昨年には国内法で規制の回避を図ろうとし、EUの反発を招いていた。
今回のEUの改定案では、ブレグジット協議で長らく争点となっていたこの問題を鎮静化させるため、物品の抜き打ち検査を80%削減する。
また、税関検査に必要な書類も50%減らすほか、医薬品流通の安定化や、北アイルランドの政治家らとの協議体制を改善するとしている。
イギリス政府は、EUの提案を精査すると発表。この提案をめぐる協議は数週間続く見込みだ。

EUの改定案の内容
- イギリスから北アイルランドに到着した食品のほとんどは、物理的な検査を必要としない
- 北アイルランドの輸入業者に必要な事務手続きを削減する
- 貿易業者の認可を拡大し、より多くの企業と製品を関税から除外する
- 医薬品のアイルランド海をまたぐ移動に支障が出ないよう法律を改正する
- 北アイルランドの政治家や企業団体といったステークホルダーとの協議体制を改善する

検査免除の拡大目指す
EUの提案では、消費者向けにイギリスから北アイルランドに到着する食品のほとんどは、物理的な検査の必要がなくなる。
北アイルランド議定書は現在、完全には施行されておらず、スーパーマーケットだけが一部の検査から除外されている状態。EUはこれを他の業界にも広げるとしている。
また、北アイルランドでの身分証・物品検査を、他のEU単一市場の境界線で行われている検査より80%削減する。
一方で、これらの施策を実現するためには、北アイルランドの港に十分に設備の整った検問所を設け、リアルタイムの貿易データへのアクセスを得ることが欠かせないとしている。また、イギリスから北アイルランドに運ばれた製品がEUに輸送されないよう、「イギリス国内での販売に限る」という表示を義務付ける必要もあるとしている。
さらに、一部の食品は輸入を禁止する可能性があるという。
輸送の「追い越し車線」
関税については、「特徴的な円滑策」を導入し、北アイルランドの輸入業者に課す書類を大幅に削減する方針。また、EUに輸送される「リスクがないイギリス製品」を拡大する。
EUは、食品と関税双方で議定書に改定を加えることで、北アイルランドで消費されるイギリス製品の移動に「追い越し車線」を設けることができると述べている。
医薬品の供給については、北アイルランド議定書が完全に施行されれば、多くの製品が北アイルランドからなくなることになると懸念が広がっていた。
今年1月には、EUが新型コロナウイルスのワクチン輸出を規制した際、北アイルランドが含まれていたため、イギリス側が反発し撤回となった経緯がある。
EUは今回、医薬品の輸送に支障が出ないよう、法改正を行うとしている。
このほか改定案では、北アイルランドの政治家やステークホルダーの声を反映するための組織設立を提案。
また、議定書を管轄するイギリス政府とEUの共同特別委員会に北アイルランドの関係者を招くほか、北アイルランド議会や、英・EU議会パートナーシップ協議会とのつながりも強化するとしている。

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欧州委員会のマロス・セフコビッチ副委員長は、北アイルランドの関係者と協議し、話を聞いてきたと説明。
「今回の提案は彼らの懸念にまっすぐ、真剣に答えたものだ」と話した。
一方、イギリス政府の報道官は次の段階として、イギリスとEU双方の提案について「早急に」緊密な協議を行うべきだと述べた。
イギリスのブレグジット首席交渉官のロード・デイヴィッド・フロストは今週、北アイルランド議定書の監査役から欧州司法裁判所(ECJ)を除外すべきだとする提案を発表したが、EU側の改定案にはこれが含まれていなかった。
報道官は、「北アイルランドの支持を得られるような永続性のある決着のためには、ガバナンスを含む、議定書の中心にある根本的な問題に大きな変化が必要だ」と述べた。
北アイルランド第1党・民主統一党(DUP)のイアン・ペイズリー議員は、BBCニュースサイトに出演し、「この問題は北アイルランドの企業に8億5000万ポンドもの損害を及ぼしている。早急に解決すべきだ」と話した。
北アイルランド議定書とは
イギリスは今年1月に正式にEUを離脱。その際、イギリスの北アイルランドと、EU加盟国のアイルランドとの間の陸続きの国境に厳密な通関検査を復活させないための北アイルランド議定書が制定された。議定書の詳細は現在も交渉が続いている。
議定書では、北アイルランドをEUの単一市場にとどめる代わりに、イギリス国内でアイルランド島とグレートブリテン島をまたぐ新たな境界線を引くことになる。北アイルランドのユニオニスト(親英派)は、この規定ではイギリスとの統一性が失われてしまうと懸念している。
ロード・フロストは、この議定書が北アイルランドの平和とベルファスト合意(イギリスとアイルランドの和平合意)を損なうものだと批判している。









