北アイルランドで連日暴動、10日間で警官70人以上が負傷

Nationalist youths clashing with Police on the Springfield Road in west Belfast, in Northern Ireland

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画像説明, 北アイルランド・ベルファストの西部で、統一独立派の若者たちが連日、警官たちと衝突した(8日、ベルファスト・スプリングフィールド通り)

イギリス・北アイルランドの各地で10日間、暴動が連日あり、警官が70人以上負傷し、市民10人が逮捕された。7日夜の暴動は北アイルランドで近年最悪の規模だったとされ、8日にも主要都市ベルファストなどで暴徒が警察に火炎瓶や石などを投げつける騒ぎになった。

イギリスとアイルランドの両国首相は電話会談の後、共に相次ぐ暴力を非難。北アイルランド自治政府は8日に集まり、騒乱を「直ちに完全に終わらせるよう」呼びかけた。

アイルランドのミホル・マーティン首相は、ボリス・ジョンソン英首相と電話で連日の騒乱について協議したことを明らかにし、「対話と、ベルファスト合意(北アイルランド紛争に関する和平合意)の機構を活用することが、前進のための道筋だ」とコメントした。

北アイルランドの全政党は騒乱を非難しているものの、原因については異論がある。

特定の組織が暴動を組織的に主導している明確な動きは見られていないが、騒ぎの多くは、イギリス帰属支持派(loyalist)の準軍事組織とつながりのあるギャング集団が影響力をもつ地域で起きている。ベルファスト西部では7日夜、イギリス帰属派とアイルランドとの統一独立を希望する派(nationalist)が接触する通り周辺で乱闘があり、警官8人が負傷。市バスが1台燃やされた。

さらに8日夜にも騒ぎが続き、地元警察は6年ぶりに放水車を使って鎮圧した。警察によると8日夜には、警官19人が負傷。連夜の騒乱で負傷した警官は74人になったという。

アメリカのバイデン政権も8日夜、「北アイルランドでの暴力を懸念しており、イギリス、アイルランド、北アイルランドの首脳陣と共に我々も、平静に戻るよう呼びかける」とコメントし、北アイルランド和平継続の重要性を強調した。

youths fire fireworks at the PSNI on the Springfield road, during further unrest in Belfast.

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画像説明, ベルファストのスプリングフィールド通りで北アイルランド警察に石や花火を投げる若者たち
Objects are thrown towards PSNI officers and the water canon on Springfield Road in Belfast during further unrest

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画像説明, 警察は鎮圧に放水車を使った

イギリス帰属派の地域で

ギャングが関わる騒乱が最初に起きたのは3月29日で、北アイルランド北西部でアイルランド国境に近いロンドンデリーでのことだった。北アイルランドをイギリスの一部にとどめておきたい若者集団の中には、12歳の少年もいた。警官や警察車両にれんがやレンガ、花火や火炎瓶などを投げつけた。

その後は、ほぼ毎晩のように衝突がベルファスト、キャリックファーガス、バリーメナ、ニュートンアビーなどに拡散。7日夜にはベルファスト西部で、主にキリスト教プロテスタント派のイギリス帰属派の住む地区と、主にキリスト教カトリック派のアイルランド統一独立派の地区を分ける、俗に「平和の壁」と呼ばれる壁の周辺で、帰属派と独立派の対立に拡大した。

両地区を分けるゲートが無理やりこじ開けられ、警官や報道カメラマンが襲われ、市バスがハイジャックされ放火された。

Night of violence on both sides of an interface in the loyalist Shankill and nationalist Springfield Road areas on Wednesday evening

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画像説明, ベルファスト西部でイギリス帰属派とアイルランド統一独立派を分ける壁の周辺で騒乱が起きた(7日夜)
Locations of violence
画像説明, 北アイルランド各地で3月末からほぼ毎晩、主にイギリス帰属派の多い地域で暴力騒ぎが起きている

30年近く続き3500人以上が死亡した北アイルランド紛争は1998年4月10日、イギリスとアイルランドが和平合意「ベルファスト合意(Good Friday Agreement)」を締結して終息した。それから23年たった今も、北アイルランドの一部地域は、プロテスタントとカトリック、イギリス帰属派とアイルランド統一独立派で分かれている。

イギリス帰属派の準軍事組織が、北アイルランド警察に対して騒ぎを起こす若者たちを容認している様子がうかがえる。

ブレグジットとの関係は

プロテスタントのイギリス帰属派リーダーたちは、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)によってアイルランド島とグレートブリテン島を隔てるアイリッシュ海に、通商上の境界線が引かれたことに、イギリス帰属派が強く反発していると指摘し、その悪感情がこのところ相次ぐ騒乱に関係していると話す。

通商上の境界は、ブレグジットに際してイギリスの一部の北アイルランドと、欧州連合(EU)加盟国のアイルランドの間で、国境管理を厳格なものに戻さなくても済むように引かれた。これによって、北アイルランドは物品貿易においてEUの単一市場に残留することになり、そのため北アイルランドからイングランド、スコットランド、ウェールズに移動する物品にはEUからイギリスへの輸出手続きが必要となる。

この取り決めは、陸続きでつながる北アイルランドとアイルランドの間で通関手続きを不要にするためのもので、EU域内から域外への通関手続きは北アイルランドの港湾で代わりに行われる。

Anti-Irish Sea border graffiti in Belfast
画像説明, 「アイリッシュ海の境界などだめだ」と書かれたベルファストの落書き。北アイルランドのイギリス帰属派はブレグジットの取り決めがイギリスの一部としての北アイルランドの地位を危うくすると反発している

イギリスとEUが交わした離脱協定内の、アイルランド・北アイルランド議定書について、イギリス帰属派は、北アイルランドの通商を阻害するだけでなく、イギリスの他地域と北アイルランドの間に明確な違いを生み出し、イギリスにおける北アイルランドの地位を脅かすものだと反発している。

今年1月には、アイリッシュ海の境界に反発する落書きが北アイルランドの、イギリス帰属派地域に相次いで登場。3月には、イギリス帰属派の準軍事組織の代表を含むグループがボリス・ジョンソン首相に、ベルファスト和平合意の順守をやめると書き送った。

ほかには、昨年6月に統一アイルランドを目指す元アイルランド共和軍(IRA)幹部の葬儀に、アイルランド統一独立派のシン・フェイン党幹部が参列したことも、今回の騒乱の要因として挙げられている。

IRA幹部だったボビー・ストーリー氏の葬儀には、厳しいロックダウン中だったにもかかわらず約2000人が参列。北アイルランド自治政府のミシェル・オニール副首相が出席したことも含め、参列者が新型コロナウイルス感染対策に違反したものの、検察は訴追しなかったため、イギリス帰属派は強く反発した。

Bobby Storey's funeral in west Belfast

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画像説明, 昨年6月に元IRA幹部ボビー・ストーリー氏の葬儀がベルファスト西部で行われ、約2000人が参列した