【解説】 イランはなぜ友好国の領土を攻撃したのか
カスラ・ナジ、BBCペルシャ語

画像提供, Getty Images
イランは2日間のうちに、シリアとイラク、パキスタンの友好3カ国の標的を相次ぎ空爆した。パキスタンは、イラン領土をミサイル攻撃して報復している。なぜイランはこれらの国を攻撃したのか。なぜ今だったのか。
全ては、イランの革命防衛隊が、国内のイスラム主義強硬派から行動するよう突き上げられていたことを示唆している。
この強硬派は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で多くのパレスチナ人を殺している中、イラン政府が手をこまねているとして不満を募らせている。
また、多数の革命防衛隊司令官がシリアで宿敵イスラエルに殺害されても政府が何もしなかったことや、英米海軍がイエメンのイスラム組織フーシ派を攻撃した際、フーシ派に対し言葉による支援しかしなかったことにも怒っている。
2週間前には、イラン南東部ケルマンで武装勢力「イスラム国(IS)」による爆発事件が起き、少なくとも84人が殺された。
一連の事態から、革命防衛隊はどうにかして、イスラエルとアメリカとの緊張を高めることなく行動を取る必要があると考えた。イランはイスラム組織ハマスやフーシ派、レバノンのイスラム組織ヒズボラなどを支援しているが、イスラエルとハマスの紛争に直接かかわらないよう気を使っている。ヒズボラは現在、国境地帯でイスラエル軍と繰り返し衝突している。
だが、シリアやイラク、パキスタンを攻撃することで、イランはいくつかのオウンゴールを決めてしまったようだ。
イランはパキスタン領土の空爆について17日、パキスタンを拠点とする反政府武装勢力で、イランがテロ集団に指定する「ジャイシュ・アル・アドル」を狙ったと説明。しかしパキスタンは、子ども2人が殺害されたとした。
核保有国のパキスタンは、自国の主権と領土保全を明確に侵害したイランの攻撃に対抗すべきと考えた。この攻撃はまた、パキスタンの核抑止力を損なうものだった。
そこでパキスタンはイラン領内をミサイル攻撃し、18日、イラン領内の「テロリスト」、バルチスタン解放軍(BLA)とバルチスタン解放前線の拠点を攻撃したと説明した。イランは、女性3人と子ども4人、男性2人が殺害されたと伝えた。
一触即発の攻撃は、ふだん良好な隣国関係に深刻なダメージを与えた。イラン革命防衛隊は、パキスタンのこのような反応を予想していなかった。
イランとパキスタンは全長900キロの国境を接しており、互いの協力なしには管理が難しい。パキスタンはイランにとって、国際的な場での貴重な友好国であり、しばしばイランを支持する票を投じてきた。
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シリアへの攻撃は、ケルマンでの爆発事件の報復とみられている。しかしここでも、イランが主張しているようなISや過激スンニ派への損害は報告されていない。
イラクは、イランにとってもっとも近しい隣国であり友好国かもしれない。そのイラク政府はイランが弾道ミサイル11発を使ってクルディスタン地方イルビルの標的を攻撃したことに激怒している。
イランは、イスラエルの諜報機関モサドの作戦本部を標的にしたと主張している。しかし、イラクとクルドの当局は、著名な男性実業家の自宅がミサイルの直撃を受け、彼と妻、2人の子供が殺されたとしている。子供の1人は1歳未満だったという。
イラク政府はこの件について国連安全保障理事会に申し立てを行っており、近く審議される予定。今回の出来事は、両国がいくつかの問題を抱えながらも長年かけて培ってきた隣国関係を損なった。
イラン革命防衛隊は、最高指導者にだけ相談して、3カ国への攻撃を決定した可能性がある。攻撃が開始される前に外相に相談がなかったことがうかがえる。
一連の攻撃は、イランの国際的立場をさらに損ない、イランの防衛を危険にさらした。また、イラン革命防衛隊を、無謀で計算外の危険を冒す存在に見せている。







