英米軍、イエメンのフーシ派拠点を空爆 紅海での船舶攻撃に報復

米軍艦から発射されるミサイル

画像提供, US Central Command/Reuters

画像説明, 米軍艦から発射されるミサイル。米英軍は11日、イエメンのフーシ派拠点への空爆を開始した(アメリカ中央軍提供)

紅海に展開するアメリカとイギリスの海軍は11日、イエメンの武装組織フーシ派を標的とした空爆を、同国各地で実施した。

米国防総省のロイド・オースティン長官は声明を発表し、合同軍事行動は「フーシ派の能力を破壊し、低下させることを意図している」と述べた。

オースティン氏はまた、攻撃は「フーシ派の無人航空機(ドローン)、無人水上艦船、陸上攻撃巡航ミサイル、沿岸レーダーと航空監視能力を標的とした」と説明した。

米当局によると、戦艦から発射したトマホーク巡航ミサイルと戦闘機によって、イエメンの首都サヌアや、フーシ派が拠点としている紅海に面したフダイダ港など12カ所以上を攻撃した。

AP通信はアメリカ当局者の話として、標的となったのはフーシ派の後方支援拠点や防空システム、武器庫などだと伝えた。

一方、BBCのジョナサン・ビール防衛担当編集委員は、イギリス王立空軍(RAF)の戦闘機「タイフーン」4機が、キプロスのアクロティリから出発し、イエメンのフーシ派の標的2カ所に対し、ペイヴウェイ爆弾を使って空爆を行ったと報じた。

動画説明, フーシ派が紅海で船舶攻撃 米英による空爆に至る経緯

イランの支援を受けているフーシ派はこのところ、紅海とアデン湾で商船をミサイルや無人機(ドローン)で攻撃しており、人員の命の危険だけでなく、世界経済を脅かし、中東地域の不安定化を招いている。

フーシ派はパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスを支持しており、イスラエルとつながりをもつ船舶を狙っていると主張している。また、イスラエルがガザ地区で行っている軍事作戦への対応として、イスラエルに向けてドローンやミサイルも発射している。

イエメンの勢力図

英米は「自衛行為」、フーシ派は「露骨な侵略」

アメリカのジョー・バイデン大統領は声明で、「世界で最も重要な水路の一つにおける航行の自由を危険にさらすためにフーシ派がイエメンで使っている多くの標的」に対して、「私の指示で」攻撃を開始したと述べた。

また、米英軍はオーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダの支援を受けて攻撃を成功させたと説明。「今日の防衛行為は、広範な外交活動とフーシ派が商業船に対する攻撃をエスカレートさせていることを受けたものだ」とした。

バイデン氏はまた、「今回の標的を定めた攻撃は、アメリカとパートナーたちが自軍兵士への攻撃を容認せず、敵対的行為者が航行の自由を脅かすことを許さないという明確なメッセージだ」と述べ、必要であればさらなる軍事行動の指示を「ためらわない」と付け加えた。

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イギリスのリシ・スーナク首相も、12日早朝の声明で攻撃を認め、「限定的で、必要かつ相当な自衛行為」だと説明した。

スーナク氏は、フーシ派の「無謀な活動」を非難。国際社会からの再三の警告にもかかわらず、同組織が紅海で商船に対し「危険かつ不安定化を狙った攻撃」を展開したと指摘した。

その上で、イギリスは「常に航海の自由と自由な流通のために立ち上がる」とした。

その後、オーストラリア、バーレーン、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、韓国、イギリス、アメリカが共同声明を発表。国際社会にはフーシ派に対する「広範なコンセンサス」があると述べ、昨年12月に国連安保理で採択された、紅海での船舶への攻撃停止を求めた決議に言及した。

また、今回の複数の国による攻撃は「個別的・集団的自衛権に基づき」実施されたとし、次のように続けた。

「今回の精密攻撃は、世界で最も重要な水路の一つにおいて、世界貿易と各国の船員の生命を脅かすフーシ派の能力の破壊や低下を意図したものだ」

「我々の目的は、緊張を緩和し、紅海の安定を回復することにある」

一方、サウジアラビアはアメリカと同盟国に対して抑制を求め、「エスカレーションを避ける」よう呼びかけた。

報道によると、サウジアラビア外務省は「大きな懸念」を持って状況を注視しているとしている。

フーシ派は2014年以来、サウジアラビアが支援するイエメン政府と、長期化した内戦を戦っている。

フーシ派が運営するイエメンのテレビ局「アルマシラ」では、同組織のフセイン・アル・イジー外務次官が、アメリカとイギリスはこの「露骨な侵略」に対して「重い代償を払うことになる」と述べた。

アルマシラはまた、攻撃を受けた地点についてメッセージアプリ「テレグラム」に投稿。サヌアのほか、国際空港近くのアル・ドゥライミ空軍基地などが攻撃されたと報じた。

またサーダ市東部のキャンプ、フダイダ空港周辺、タイズ国際空港、海岸沿いのアブス地区なども攻撃を受けたとした。

英海軍の駆逐艦「ダイヤモンド」(写真)と米海軍の艦船3隻がフーシ派の無人機やミサイルを撃墜した(2020年10月14日撮影)

画像提供, PA Media

画像説明, 英海軍の駆逐艦「ダイヤモンド」(写真)と米海軍の艦船3隻がフーシ派の無人機やミサイルを撃墜した(2020年10月14日撮影)

英米両海軍は9日、フーシ派が紅海の海運に対して過去最大規模の攻撃を仕掛けたことを受け、複数のドローンとミサイルを撃墜した。この日の攻撃についてフーシ派は、イスラエルに支援を提供するアメリカの船を狙ったと主張。フーシ派による紅海上での商船への攻撃は、昨年11月19日以降で26回目だった。

紅海におけるフーシ派の攻撃は、昨年11月から12月にかけて6倍に増加した。脅威が大幅に拡大したことから、大手海運会社などはこの海域での航行を中止。保険料は12月上旬から10倍に上昇している。

国際海運会議所によると、現在、世界のコンテナ船の20%が紅海を避け、アフリカ南端を回るはるかに長い航路を使っているという。