【2022年サッカーW杯】 イングランドの敗退、過去の大会より「残酷」=BBC担当記者

フィル・マクナルティ・サッカー担当主任記者、アル・バイト・スタジアム、アル・ホール(カタール)

Gareth Southgate and Harry Kane

画像提供, Getty Images

画像説明, イングランドのサウスゲイト監督(左)と主将のケイン

イングランドのギャレス・サウスゲイト監督と選手たちは、主要大会の優勝をまたも逃し、チャンスをつかみ切れないというおなじみの感覚を味わうことになった。

アル・バイト・スタジアムの試合後の光景は、フラッシュバックを引き起こさせるものだった。2018年モスクワ大会準決勝でクロアチアに負けた試合と、1年4カ月前の欧州選手権(ユーロ)決勝でイタリアに敗れた試合の記憶がよみがえった。

この日の苦しい敗戦の後、サウスゲイト監督は打ちひしがれたイングランドの選手たちを慰めた。イングランド代表は見る者を感動させる存在だったが、栄光を寸前で奪い取られてしまった。

ワールドカップ(W杯)カタール大会の準々決勝で前回優勝のフランスに2-1で敗れたのは、酷な結果だった。イングランドのプレーは、少なくとも延長戦にもつれこんでいいはずの内容だった。

そのためか、今回の結果はイングランドにとって、これまでと違う感覚のものだった。これまでよりも、つらく感じた。若さと経験が融合したサウスゲイト監督のチームは今回こそ、W杯優勝の真のチャンスに恵まれていたので。

勝てばモロッコとの準決勝が待っていた。W杯にサプライズはつきものとは言え、見事なディフェンスと強力なカウンターアタックが特徴のイングランドならば、来週末の決勝戦に勝ち進む有力候補として、対モロッコ戦に臨めたはずだった。

だからこそサウスゲイト監督は、ハリー・ケインの顔を両手で包んで、慰めの言葉をかけた。試合終盤、主将ケインのペナルティーキック(PK)こそ、イングランドにとって延長戦突入の最大のチャンスだったが、ケインはそれを大きく外すという彼らしからぬ失敗をしてしまったのだ。

涙ぐんだケインの表情は、サッカーがいかに残酷になり得るかを物語っていた。それは、イングランドに多大な貢献をし、なおかつ大きな責任を背負い続けてきた男の顔だった。ゴールキーパーのジョーダン・ピックフォードは、ぼうぜんとする主将にピッチの反対側から歩み寄り、慰めの言葉をかけた。

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Presentational white space

なぜイングランドは主要大会で、一流の相手を破ることができないのか――。昔から続くこの問いは、また繰り返されるだろう。しかし今大会では、少なくともアプローチについては、不満は出ないはずだ。

サウスゲイト監督は「わずかな差」だと言ってきたが、それが勝負を決定づけた。片方のチームがチャンスをものにし、もう片方はそうできなかった。イングランドは、努力の点では非難される理由がない。

かつてイングランドは、W杯やユーロで臆病な戦い方をして敗退したと批判されたし、その批判は正当なものだった。かつてサウスゲイト監督もそう責められたことがあるが、今回は違う。

サウスゲイト監督は、フランスのキリアン・エムバペ対策だとして、メンバーやフォーメーションを変えたり、保守的な戦法を取ったりすることはなかった。フランスのスーパースターは常に、脅威となりそうな気配を漂わせていたが、イングランドは彼をそれなりに抑え込んだ。

好機はイングランドの方が多かったが、フランスの決定力が勝った。イングランドはまた、ブラジル人のウィルトン・サンパイオ主審に対するいら立ちも感じていた(そのいくらかは正当性がある)。

主審は、前半17分のフランスのオーレリアン・チュアメニのシュートに至るまでの間に、イングランドのブカヨ・サカに対するフランスのダヨ・ウパメカノの2つのファウルを見逃したようだった。これが一貫性のない判定の始まりだった。それでもイングランドは前半アディショナルタイムに、サカへのファウルでPKを得ると、ケインが強烈なゴールを決め、同点とした。

イングランドには勢いがあった。相手よりいいチームだった。ジュード・ベリンガムのシュートはフランスのGKウーゴ・ロリスに見事にセーブされ、ハリー・マグワイアのヘディングシュートはポストの外側をかすめた。もう少しだった。

またもPKに泣く

だが、そうしてロリスから点数を奪えない間に、危険が忍び寄ってきた。フランスのオリヴィエ・ジルー(36)は、イングランドのGKピックフォードの素晴らしいプレーでゴールを阻止されてから間もなく、イングランドのハリー・マグワイアの前に体を割り込んだ。そして、味方のアントワーヌ・グリーズマンからのクロスに頭で合わせ、ゴールを決めた。試合時間残り12分というタイミングだった。

そして、ケインがPKを失敗した。

イングランドはこれまでも、W杯やユーロでPKに泣いている。またそれが繰り返されたわけだが、今回はPK戦ではなく、90分の試合時間内でのPKだった。

ケインをよく知るGKに対する、2回目のPKだったからなのだろうか。それとも、あの状況のプレッシャーが、完璧なPKのエキスパートをも失敗させたのだろうか。理由はどうであれ、ケインのPKはひどかった。愕然(がくせん)とするゴール裏のイングランドのファンたちへ方へ、高々と飛んでいった。

すべてが終わった。イングランドはまたしても早々と帰国することになった。

では、今大会のイングランドの戦いぶりは、どのように評価されるのだろうか。

未来を期待させる若手たち

準々決勝での敗退は2018年ロシア大会のベスト4より、成績としては悪い。しかし、皮肉なことに、今回のチームの方が前回のものより、ずっと未来を期待させる。

サカとデクラン・ライスは、本当に傑出していた。ベリンガムとフィル・フォウデンは、以前の試合(特にセネガル戦)ほど影響力がなかったが、この4人はイングランドの長期的な未来にとって不可欠な存在になるだろう。

イングランドは勝つべき相手に勝ち、最初に対戦した一流チームに負けた、と言われるだろう。だが、今回のパフォーマンスは、過去のその手の分類で仕分けられるものとは別だった。サウスゲイト監督のチームは、カタールでは臆病ではなかった。攻撃的だった。ただ、チャンスをものにできなかったのが欠点だった

イングランドはイラン、ウェールズ、セネガルに対しては素晴らしかった。一方で、アメリカに対しては無気力だった。合計13ゴールが8人の選手から生まれた。これは、W杯でのイングランドの最多得点だ。

しかし残念ながら、他の統計はあまりよろしくない。

イングランドのW杯準々決勝敗退はこれで7回目で、どの国よりも多い。ケインのPKの記録は、21回蹴って成功は17回と完璧とは言えない。ケインとイングランドは、どうすればそれを18回にできたのだろう。

イングランドの明るい未来を期待させる要素はある。だが、サウスゲイト監督はその一部になるのだろうか。

イングランド・フットボール協会は、サウスゲイト監督が2024年12月までの契約期間を全うすることを望んでいる。しかし、最終的な決断は本人次第だ。彼は3大会で十分だと思うだろうか。それともクラブ・チームの采配(さいはい)にまた挑戦したいと思うだろうか。

BBCスポーツにこう話した際も、監督は内心を明かさなかった。「こういう大会には全力投球が必要なので、今は考える時間が少し必要だ。どの大会の後でもそうしてきたし、それが正しいことだと思う」。

W杯優勝のチャンスはあった。しかしその絶好のチャンスを悲痛にも逃してしまった今、イングランドとサウスゲイト監督は再び、「もしも……」を今しばらく振り返ることになるのだろう。