「基本的な生活費のため常に借金に追われている」 英団体が懸念
ケヴィン・ピーチー、生活費危機担当編集委員

デイヴィッド・マギンリーさんと妻のアシュリーさんは共働きだ。しかし、生活費の高騰を受けて、2人は経済的に大変な思いをしている。
「腹が立つ」。イングランド北西部ランカシャー・バンバーブリッジに住むマギンリーさんは話す。「正しいことをしているのに、罰を受けているような気がする」と。
マギンリーさん家族は、電気代について「1日おき」に適用される非常時用の救済措置を受けている。食費は50%上がったにもかかわらず、食事は「ビーンズ・オン・トースト」(白インゲン豆のトマトソース煮をトーストにのせたもの)だけということも時にはあるという。すでに抱えていた借金に加えて、今のこの状態が夫妻にとって負担となっている。
「いったん支払いが間に合わなくなると、それからはもう果てしなく借金に追われることになる」
マギンリーさんのような人たちが、家賃や生活費の支払いのために借金を増やしているのだと、市民団体「シティズンス・アドバイス(市民への助言)」は警告する。
同団体は、相談に来る人たちの家計を点検し、特に借金の状態を調べる。それによると、半数の人たちの家計がそもそも赤字状態にある。つまり、必需品の支払いを済ませた時点で、すでに赤字なのだ。こういう人の割合は、2019年初めには36%だった。
かつては同団体に相談に来ることがほとんどなかった人たち、たとえば持ち家に住む人や年金生活者が、今では借金対策についてアドバイスを求めてくる。
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生活費が一気に値上がりしていることで、借金の問題が変質しているようだ。かつては生活を脅かす借金といえば、膨れ上がるクレジットカードの請求がありがちな問題だった。しかし今では、光熱費や食費、住民税といった基本的な生活費が払えないことで、長期的な問題を抱える人が次々と増えている。
「シティズンス・アドバイス」代表のデイム・クレア・モリアーティーは、「物価高騰のせいで、たくさんの借金を抱える人たちの状況がますます厳しくなっている。これまで私たちの支援を必要としなかった人たちまで、借金の相談に来る。たとえば、暖房代を節約するため、持ち家の一室に家族全員が集まって暮らしているような人たちだ」と話した。
「この危険な傾向は、まるで時限爆弾だ。相談員たちは毎日のように、毎月何も残らないどころか赤字を出している人たちから話を聞いている。その人たちは、借金は返せないし、基本的な生活費を払うため、赤字が毎月かさんでいる」


「シティズンズ・アドバイス」は、支援を求める人たちの借金の内容を調べる。そのデータによると、個々の借金の額は以前に比べると少ないものの、基本的な支払いを済ませた後に赤字に、つまり「マイナス予算」になっている人の割合が増えている。
すでに借金を抱える人たち(主に借家に住む人たちや、一人親、自営業者)が、借金を完済できる可能性は少なくなっている。
全体として、借金の返済方法を検討しようと相談に来る人の多くが、月々の必要経費の支払いを終えた後には1ペンスしか手元に残らない状態にある(訳注:1ポンドは100ペンス)。これは、物価や経費の高騰を反映してのことだ。


家計がそういう状態にあると、年末のこの時期に問題は悪化しがちだ。マギンリーさんは、クリスマスについて「罪悪感」を抱いていると話す。
政府は、マギンリーさんのようにユニバーサル・クレジット(低所得者に対する政府の所得補償制度)など公的支援を受けている何百万もの人に対して、生活費の補助金や光熱費上限設定などを提供している。
補助金は複数回にわたり受け取ることができるし、場合によっては来年にも延長される。ただし光熱費の補助は今後、縮小されていく。
借金返済を支援する慈善団体「ステップ・チェンジ」によると、ガス代や電気代の未納が続く相談者の割合が減っているため、政府による支援の成果は出ているようだという。
それでも、物価急騰の影響で来年については、「数百万もの世帯にとって不安な」見通しだという。
「ステップ・チェンジ」は、新しく相談に来る人の2割が、借金の理由として生活費高騰を挙げており、10人中7人が女性だと話す。
信用調査会社クリアスコアによると、銀行の当座貸越制度の利用率は2021年8月以降、7.1%増加している。利用者の多くはこの借金を、日々の生活費の支払いに充てているのだという。
他方で、慈善団体「ナショナル・エナジー・アクション」は、家計に占める暖房費の割合が高く、十分に家を暖めることができない、いわゆる「fuel poverty (光熱費の貧困)」状態にあるイギリスの家庭は、今年10月の450万世帯から、来年4月には840万世帯に増えているだろうと推計している。

借金返済ガイド
- 自分が誰に、いくら借りているのかを明確にする。毎月の支払いがいくらなのかも、はっきりさせる
- 最も急を要する支払先がどれか、特定する。家賃や住宅ローン、光熱費、住民税は優先順位が高く、支払いが遅れると深刻な結果につながるため、真っ先に払う必要がある
- 債務返済にいくら使えるのかを計算する。食費や家賃(あるいは住宅ローン)など必要不可欠な経費を合算し、給料や補助金など収入から引いて算出する
- 自分の収入を増やす方法がないか、検討する。主に、自分に受給資格のある補助や手当はないか、住民税の減免に該当しないか、あるいは通信費やテレビ視聴費を軽減できないか調べる
- 借金の返済が不可能だったり、負担が重すぎると感じたら、ただちに救済を求めるのが望ましい。あなたはひとりではないし、助けてくれる人はいる。借金返済について詳しい専門家が、返済計画について相談に乗ってくれる
(出典:シティズンズ・アドバイス)











