台湾市民は「70年間脅されながら生活してきた」 米下院議長の訪台めぐる中台の緊張
ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBCニュース(台湾)

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アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が短時間ながら台湾を訪問し、物議を醸したことから始まった中国と台湾の緊張の高まりは、いまのところ、予測通りの展開を見せている。
まず中国は、台湾の周辺に6つの立ち入り禁止区域を設置すると宣言した。自治権を有する台湾島を、中国は自国から分離した省とみなしている。
禁止区域の設置から2時間もたたないうちに、中国政府は複数の「東風」弾道ミサイルを台湾北部の海域にむけて発射。ミサイルは台湾海峡を超え、台湾上空を通過した可能性がある。
この状況は、1996年に国家としての国際的な承認を求める台湾を懲らしめようとした時のパターンとよく似ている。
台湾を威嚇することが、今回の演習の目的であることは明らかだ。
しかし同時に、台湾の海運・航空業界にも大きな打撃を与えている。台湾近海は世界で最も交通量の多い航路の1つで、すべての船舶が航路の変更を余儀なくされている。
台湾の北部沿岸に位置する碧砂漁港では、漁師たちが漁網を直しながら大声で不満を漏らしていた。「政治家が争って苦しむのは、いつだって自分たちのような力のない普通の市民だ」。
「でも、どうしたらいいのか。いま沖に出るのは危険すぎるし」と、ある船長は口にした。

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港に戻ってきた別の人は、船をロープで固定していた。「今朝は漁に出たけど、その後に沿岸警備隊から無線で、すぐに港に戻るよう指示された」。
それでも、心配はしていないとこの男性は話した。
「立ち入り禁止区域がどこなのかわからないので、沿岸警備隊の言う通りにするしかない」
埠頭に立つ男性の妻は、そこまで楽観的ではなかった。「毎日こんなことが続くと損するだけ。魚が獲れないのに、乗組員に給料を支払わないといけないなんて!」。
BBCが話を聞いた人のほとんどは、中国が台湾を攻撃する寸前だとは思っていなかった。「(中国は)ギャングの集まりだ」と、埠頭で釣りをしていた男性は言った。
「共産主義者は大口をたたくが、何もしない。私たちは70年間、向こうに脅されながら生活してきた」
ただ、この原稿を書いている時点で、中国の演習はまだ初日を終えたに過ぎず、事態を悪化させる時間はまだ十分に残されている。
台湾の領海に中国の船舶が侵入する可能性もある。
中国のミサイルによる台湾の上空通過も、さかんに予想されている可能性の一つだ。
中国が宣言している立ち入り禁止区域の1つは、台湾の東方沖の太平洋上に位置する。中国から発射されたミサイルがそこに落下すれば、台湾の上空を通過することになる。つまり、劇的な領空侵犯が起きることになる。
(編集注:日本の防衛省は4日、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられる中国の弾道ミサイル5発のうち、4発は台湾本島上空を通過したと推定されると発表した)
同様の領空侵犯は2017年8月に起きている。この時、北朝鮮が発射した長距離ミサイルは北海道上空を通過した後、北太平洋上に落下した。
中国政府は、北朝鮮と同じことをするのだろうか。それが現時点での疑問だ。










