トランプ政権、ウクライナへの軍事援助を一時停止 米報道

画像提供, Getty Images
米ホワイトハウス関係者は3日夜、ロシアと戦争を続けているウクライナへの支援を、米政府が一時停止すると述べた。BBCがアメリカで提携する米CBSが報じた。
このホワイトハウス関係者によると、「アメリカの支援が確実に解決に貢献するよう、私たちは支援を一時停止し、見直している」という。
アメリカは、ロシアが3年前にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、同国に対する最大の軍事援助国となっており、武器、装備、財政支援を提供してきた。
米連邦議会はこれまでに、ウクライナへの援助として総額1800億ドル(約26兆8800億円)以上を承認している。
援助停止を最初に報じた米ブルームバーグによると、ウクライナに現在ないすべてのアメリカ軍装備品や、ポーランドを経由中、およびポーランドの基地にある武器も含めて、すべての軍事物資の供与を一時停止するという。
この報道の後、マルコ・ルビオ国務長官は声明を発表。「(ドナルド・)トランプ大統領は、現在、ウクライナ戦争を永続的かつ持続的に終結させる可能性を持つ唯一の指導者だ」、「我々はロシアを交渉のテーブルに引き出したい。平和が可能かどうかを探りたい」とした。
国防総省やトランプ大統領は、現時点でコメントを出していない。
アメリカとウクライナの間では、このところ緊張が高まっている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2月28日にホワイトハウスを訪問し、トランプ氏と会談した。同席していたJ・D・ヴァンス米副大統領が「和平への道」は外交を通じたものだと主張すると、ゼレンスキー氏は異議を唱え、ロシアのウラジミール・プーチン大統領が以前にも合意を破ったことがあると指摘。これに対し、ヴァンス氏はゼレンスキー氏を「無礼だ」と非難し、トランプ氏と共に、ゼレンスキー氏には感謝の気持ちが欠けていると怒りをぶつけた。
メディアの前で起こったこの対立により、ゼレンスキー氏はホワイトハウスを去るように言われた。訪米の目的だった、戦争終結に関する協議と鉱物取引の署名は行われず、予定されていた昼食会と記者会見もキャンセルされた。
ゼレンスキー氏は2日、ロシアとの戦争を終結させる合意は「とても遠い」と発言。トランプ大統領は3日、これに猛反発した。
トランプ大統領はこの際、ウクライナへの軍事援助の一時停止について「話していない」と述べた一方、「どうなるか見てみよう」と付け加えていた。
BBCのノミア・イクバル北米特派員が取材した関係筋によると、この一時停止は、ウクライナがロシアとの「和平交渉へのコミットメント」を示せるとトランプ大統領が判断するまでの一時的なものだという。
トランプ政権は基本的に、ゼレンスキー大統領に鉱物取引に署名し、ロシアと「和平を結ぶ」ことを求めている。一方で、ゼレンスキー大統領が望む安全保障の保証は与えたくない。
代わりに、トランプ大統領の補佐官たちは「経済的保証」について話しているという。
アメリカのウクライナ支援の仕組み
今回明らかにされた軍事援助の一時停止は、主にバイデン政権によって以前に承認された援助に適用される。これらの援助は、トランプ大統領が今年1月に就任して以来、すでにほとんど停止している。
トランプ大統領は自身の大統領権限でウクライナへの新たな援助を承認しておらず、近いうちに議会が新たな援助パッケージを決める兆しもない。
アメリカのウクライナへの軍事援助は複雑だが、主に大統領権限による供与、国務省の外国軍事融資(FMF)、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)の3形態からなる。
大統領権限による援助では、アメリカ軍の備蓄からウクライナに物資を送ることができる。政府高官がBBCに語ったところによると、現在この権限分として約38億5000万ドル(約5700億円)が残っている。この援助が提供されるかどうかはホワイトハウスが決定する。
ウクライナ向けのFMFには別途15億ドルがあり、これは助成金または直接融資としてウクライナに提供され得る。このFMFは現在、ルビオ国務長官によって見直し中だ。
USAIは、ウクライナにアメリカの製造業者から直接購入するための資金を提供するもの。
現時点では、これらの援助の流れが、今回の発表によってどのような影響を受けるのかや、今後どうなるのかは不明だ。
また、主に世界銀行の信託基金や米国際開発庁(USAID)を通じ、ウクライナの国家予算への援助も行われている。この資金の一部は、ウクライナが教師や医師の給与を支払い、政府を運営するために役立っているが、トランプ政権下で大幅に削減されている。
民主党議員は「恥ずべき行為」と非難
上院の軍事委員会に所属するタミー・ダックワース議員(民主党)は、ホワイトハウスの援助停止決定を「ウクライナを見捨てる恥ずべき行為」と非難した。
ダックワース議員はXに、「この決定は我が国を安全にするものではない」、「プーチンや我々の敵対者を勢いづけ、民主的なパートナーとの関係を弱めることになる」と投稿した。
ジョー・バイデン前政権で国家安全保障会議(NSC)議長を務めたマイケル・カーペンター氏は、「これは驚くべきことだ」とBBCに語った。
「この戦争には非常に明確な加害者と被害者がいる。ロシアが加害者であり、ウクライナが被害者だ。それにもかかわらず、アメリカはその逆であるかのように行動している」
「ウクライナ人がロシアの露骨で横暴で残虐な攻撃から自国を守るための防衛支援を一時停止することは、アメリカが行うべきことではない」
ビル・クリントン政権でウクライナ大使を務めたスティーヴン・パイファー氏は、援助の一時停止決定は「非常に誤った判断」で、「いずれ戦場に実際の影響を及ぼすだろう」と指摘した。
また、「トランプ大統領はロシアに対して多くの影響力を持っているが、それを使いたいかどうかが、大きな疑問だ」と語った。
「トランプ氏はロシア経済への制裁を強化することができる。主要7カ国(G7)と協力してロシア中央銀行の3000億ドルの資産を押収し、その資金をウクライナに提供することもできる」
パイファー氏はさらに、「トランプ氏は取引の才能を語る人物だが、プーチンに対する影響力を増すために何もしていない」、「間違った相手に圧力をかけているようだ」と続けた。
上院歳出委員会の委員長を務めるスーザン・コリンズ議員(共和党、メイン州選出)も、米CNNの取材で援助停止に反対を表明。「ウクライナにとって重要な時期に(中略)我々の努力を一時停止すべきではない」、「血を流しているのはウクライナ人だ」と述べた。
一方、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は、ウクライナ援助の一時停止を真っ先に支持した。
グリーン氏はXで、「トランプ大統領は平和をもたらし、戦争で毎日何千人もの命が失われるのを止めようとしている」、「私はこの戦争への資金提供に最初から反対票を投じているし、平和を支持している」と述べた。
トランプ氏は以前にも、ゼレンスキー氏に圧力をかけるために援助を保留したことがある。
2019年には、政治ライバルのジョー・バイデン氏とその息子についてゼレンスキー氏に汚職捜査を要求、議会が承認したウクライナへの援助を保留した。
ウクライナは2014年からロシアおよびロシア支援の反乱軍と戦っていた。
トランプ氏はこの件をめぐり、連邦下院で権力乱用について弾劾された。その後、上院で無罪となっている。
ゼレンスキー氏は後に、トランプ大統領による脅迫やアメリカ側からの「条件」はなかったと述べている。
<解説>ノミア・イクバル北米特派員
トランプ大統領に謝罪する? 鉱物取引を受け入れる?
それがトランプ政権の望みかもしれない。同政権はこの対立の責任をゼレンスキー氏に押し付け、感謝の言葉が足りないという誤った非難を展開している。
援助の一時停止というこの異例の措置が、戦時中の指導者に圧力をかけ、譲歩を引き出すためのものであることは明らかだ。
しかし、ゼレンスキー大統領はすでに譲歩する意向を示している。
昨年のインタビューでゼレンスキー氏は、ロシアに占領されたウクライナの領土がそのままになることを受け入れると示唆した。一方で、占領されていない地域は北大西洋条約機構(NATO)に加盟を認められるべきだとも述べた。
最近では、NATO加盟と引き換えに大統領を辞任することさえも示唆した。
しかし、トランプ大統領はウクライナのNATO加入を否定し、ロシアの見解に従った。トランプ大統領はこれまで一度も、ウクライナに侵攻したロシアにどのような譲歩を求めるのか述べていない。












