ヨルダン川西岸併合に向けた法案、イスラエル議会で1回目の可決 米副大統領ら批判

紺色のスーツとネクタイを着用したJ・D・ヴァンス米副大統領が左手を上げて、話をしている。後ろには星条旗が見える

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画像説明, イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談したアメリカのJ・D・ヴァンス副大統領(22日、エルサレム)

イスラエルを訪問中のアメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は23日、イスラエル議会(クネセト)が前日に、イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の併合に向けた動きを見せたことを批判した。

イスラエル議会は22日、イスラエルの法律をヨルダン川西岸に適用する法案の承認に向けた1回目の採決を行い、これを可決した。この法案は野党の極右議員が提出したもの。パレスチナ人はヨルダン川西岸やパレスチナ・ガザ地区を、将来的にパレスチナ国家の一部とすることを望んでいる。

ヴァンス氏はイスラエル訪問を終える際に、イスラエル議会の動きを「非常に愚かな政治的パフォーマンス」と非難した。

マルコ・ルビオ米国務長官はイスラエル訪問に先立ち、併合はガザの紛争を終わらせるというドナルド・トランプ米大統領の計画を脅かすものだと警告していた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この動きは「野党による意図的な政治的挑発で、不安をあおるもの」だとした。

米副大統領の批判受け、英語で声明

イスラエル首相府は声明で、ネタニヤフ氏率いる右派政党リクード党と、連立を組む超正統派はこの法案を支持していないと強調。「最近、イスラエル議会の議長職を解任された不満を抱くリクード党員1人だけが」賛成票を投じたと説明した。

そして、「リクード党の支持がなければ、この法案が進展する可能性は低い」とも付け加えた。

首相府の英語の声明は、ヴァンス氏がテルアヴィヴのベングリオン空港で、イスラエル議会での採決について記者から質問を受けた後に出された。

ヴァンス氏は記者団に対し、「もしこれが政治的パフォーマンスなら、非常に愚かな政治的パフォーマンスだ。個人的には侮辱された気分だ」と述べた。「ヨルダン川西岸はイスラエルによって併合されることはない。イスラエルによる併合は起きないというのが、トランプ政権の政策だ」

「この政策は今後も変わらない。象徴的な投票をしたい人がいるなら、それは自由だが、我々はそれを決して快く思っていない」

トランプ大統領は米誌タイムのインタビューで、併合は起こらないと強調。自分が「アラブ諸国と約束したからだ」としている。

「もしそうなれば、イスラエルはアメリカからの支援をすべて失うことになる」

イスラエル占領下のヨルダン川西岸のマアレ・アドゥミム入植地に、多数の住宅が並んでいる

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画像説明, イスラエルは、1967年の中東戦争でヨルダン川西岸地区と東エルサレムを占領して以来、約160カ所の入植地を建設してきた。画像はヨルダン川西岸のマアレ・アドゥミム入植地(8月14日撮影)

イスラエルは、1967年の中東戦争でヨルダン川西岸地区と東エルサレムを占領して以来、約160カ所の入植地を建設し、約70万人のユダヤ人をそこに入植させてきた。すぐそばでは推定330万人のパレスチナ人が暮らしている。

こうした入植地建設は国際法上、違法とされている。国際司法裁判所(ICJ)も昨年7月、「イスラエルによるパレスチナ占領地への継続的な駐留は違法」だとする勧告的意見を出している。

ネタニヤフ首相はこれまで、ヨルダン川西岸の併合を支持する発言をしていた。しかし、イスラエルの最も重要な同盟国であるアメリカや、数十年にわたる敵対関係を経て関係を築いてきたアラブ諸国との関係悪化を懸念し、併合を推進してはいない。

ネタニヤフ氏率いる連立政権のウルトラナショナリストらは、ヨルダン川西岸を全面的に併合するよう繰り返し要求している。しかし、併合に向けた今回の法案は、野党議員によって提出された。

法案は1回目の採決で、賛成25、反対24で可決された。ただ、議会(120議席)の過半数の支持を得られるかは不透明だ。ネタニヤフ氏が法案を遅らせたり阻止したりすることもできる。

法案は今後、議会の外交・防衛委員長で審議される。法律として成立するには、さらに3回の採決で可決される必要がある。

パレスチナ自治政府の外務省は、イスラエルにはパレスチナの土地に対する主権はないとして、イスラエル議会の動きを非難した。

紺のスーツとネクタイを着用したヴァンス米副大統領と、紺のスーツに赤いネクタイを着けたイスラエルのネタニヤフ首相が向かい合って立っている。ヴァンス氏は両手を広げて話をしている。2人の背後にはアメリカとイスラエルの国旗が置かれている

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画像説明, ヴァンス米副大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は、イスラエル首相府で会談した(22日、エルサレム)

併合への動き、ガザにとって「逆効果」と

ルビオ米国務長官は22日夜にイスラエルへ発つ前、併合はトランプ氏のガザ和平計画にとって「逆効果」だとし、併合に反対するアメリカの立場を改めて強調した。

「大統領は明確に、(併合は)現時点で我々が支持するものではないと表明しているはずだ。和平合意を脅かす恐れすらあると、我々は考えている」

ルビオ氏の23日の訪問に先立ち、ヴァンス氏やスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使、トランプ氏の娘婿で、政権1期目に大統領上級顧問を務めたジャレッド・クシュナー氏もイスラエルを訪問している。トランプ政権は、20項目からなるガザ和平計画の第2段階をめぐる協議を開始するよう求めている。

ガザでの戦闘停止や、イスラエル軍のガザからの部分撤退、人道援助の搬入などを含む合意の第1段階は、10日に発効した

その後、イスラエルとイスラム組織ハマスの双方が停戦合意に違反したと互いを非難。暴力行為が再燃し、死者が出る事態となったが、これまでのところ合意は維持されているとみられる。

ルビオ氏はヴァンス氏と同様に、ガザでの停戦維持に楽観的な見方を示した。

「(停戦合意は)毎日、脅威にさらされるだろうが、実際のところ、計画していたよりも順調に進んでいると思う。この週末を乗り越えられたのは、いい兆しだと思う」

和平計画の第2段階には、ガザでの暫定政府の樹立や、国際安定化部隊の派遣、イスラエル軍の撤退、ハマスの武装解除が含まれる。

イスラエルは、2023年10月7日にハマスがイスラエル南部への攻撃を主導し、約1200人を殺害、251人を人質として拘束したことへの対応として、軍事作戦を開始した。

それ以来、ガザではイスラエルの攻撃によって少なくとも6万8000人が殺害されたと、ハマス運営のガザ保健当局は発表している。この人数は、国連などが信頼できるとしている。

(追加取材:クリス・グレアム)