石油価格はトランプ氏発言で下落、しかし混乱は残る……BBC経済編集長

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ファイサル・イスラム 経済編集長
世界の石油取引史上、最も変動の激しい日となった。
原油価格は9日に一時1バレル115ドルまで急騰したが、主要7カ国(G7)財務相による緊急会合が開かれるとの情報が間もなく出回った。
複数報道は、国際エネルギー機関(IEA)が緊急備蓄3億バレルの協調放出を実施する可能性があると伝えていた。
この観測だけでも価格上昇を多少抑える効果はあったが、それでも価格は紛争前よりはるかに高い水準のままだった。
しかしその後、ドナルド・トランプ米大統領が、イランでの戦争は長く続くというこれまでの方針から転換するような発言をしたとの情報が伝わり、原油価格は一気に急落。6日の終値を下回った。アジア市場が9日に取引を開始した時点で、原油価格は90ドル前後で推移していた。
数百万バレルもの原油が湾内で立ち往生し、多くの湾岸諸国が生産を減速して、最悪の場合は不可抗力を理由に生産を停止すると宣言している。それだけに、価格の急上昇は決して意外ではない。
3億バレルは膨大な量だ。ロシアによるウクライナ全面侵攻開始の2カ月後、2022年4月に実施された過去最大の協調備蓄放出の2倍以上の量だ。
過去に緊急備蓄が協調放出されたのは5回だけで、今回の放出量は備蓄の約25%に相当することになる。
しかし同時に、今回の事態は史上最大の石油ショックにつながる可能性もある。
3億バレルは、世界の1日あたりの石油消費量(1億400万バレル)の3日分にも満たない。ホルムズ海峡の通常の通過量としては、2週間分だ。
緊急会合を開いたG7財務相は全会一致とはならず、備蓄の即時放出は見送られた。ほかの支援策が必要だ。
各国の閣僚は、ホルムズ海峡の船舶に海軍の護衛をつけることで一致するだろうか。ドローンやミサイルがタンカーの上空を飛び交い、時にはタンカーそのものが標的となっている現状で、新しい保険制度が問題を解決できるのだろうか。
一方、アメリカはロシア産石油が解決策の一端になり得ると主張している。ウクライナ侵攻を理由とした対ロ制裁の一部免除が、その条件になる。
G7は強力だ。しかし、湾岸の石油・ガスを主に購入するのは中国、インド、韓国だ。このため、欧州向けだったアメリカのガスタンカーは大西洋上で航路を変更し、パナマ運河を経由してアジアへ向かっている。

加えて、ペルシャ湾内で足止めされているジェット燃料や、肥料の原料はどうなるのか。
G7会合後、イギリスのレイチェル・リーヴス財務相は下院で、消費者を支援する最善の方法は軍事的緊張の緩和だと述べた。市場は同じ意向を、トランプ大統領の発言にも読み取った。
たとえ戦争が今日終わったとしても、供給網の混乱は続き、エネルギーインフラへの損害は残る。対応には数週間かかるだろう。
それでも、ガソリン価格が原油価格とともに急騰する中、経済的な要因がトランプ大統領を抑制しているように見える。
戦争は終わっていないが、市場は落ち着いてきている。しかし、状況は依然として不安定だ。








