【解説】 ウクライナへの「安全の保証」とは何を意味するのか

画像提供, ウクライナ大統領府/ロイター
フランク・ガードナー BBC安全保障担当編集委員
ホワイトハウスで18日に行われた一連の歴史的会談の後、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナと同国を支援する国々が「(ウクライナの)安全の保証について、具体的な内容の調整にすでに取りかかっている」と述べた。
キア・スターマー英首相は、和平合意後のウクライナの安全確保に協力すると、意思表示している国々によるオンライン会議を主催した。これはいわゆる「有志連合」の枠組みだ。
イギリスはさらに、英軍制服組トップのサー・トニー・ラダキン国防参謀総長をワシントンに派遣した。ラダキン提督は、アメリカからどのような協力が得られるのかを協議する。歯車は、明らかに動いている。
しかし、「安全保障の保証」、もしくは「安全の保証」とは、実際の運用において、具体的に何を意味するのか。
可能性としては、かなり幅広い内容があり得る。頻繁に言われる「軍靴を地面に」という慣用句が意味する、つまりは「地上部隊の派遣」から、ロシアの石油輸出に対する強烈な経済制裁を脅して圧力をかける方法に至るまで、いずれもウクライナの安全を保証する手段にはなり得る。
まず、ウクライナが希望するが得られないもの、少なくとも当面は得られないものの話から始めよう。それはつまり、北大西洋条約機構(NATO)への加盟だ。
ドナルド・トランプ米大統領は、これはあり得ないことだと言明した。加えて、スロヴァキアなど他のNATO加盟国も、ロシアとの戦争で実戦に巻き込まれる可能性が劇的に高まるという懸念を主な理由として、ウクライナの加盟に静かに反対している。
ウクライナは明らかに、和平合意の成立後も、ロシアによる再三の侵攻を防ぐため、強力な安全の保証が必要となる。
こうした背景から、スターマー氏とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、和平合意締結後のウクライナに、国際的な枠組みを通じて安心感を提供するため、30カ国以上が集まる「有志連合」の構築を進めている。
ウクライナ領空の監視は、選択肢の一つとなる可能性が高い。これは、隣国ポーランドやルーマニアの既存の空軍基地に航空機を配備し、アメリカが参加することで、実施可能となる。
ただし、ただの象徴的な措置にとどまらないためには、明確かつ強固な交戦規則が必要だ。
つまり、ロシアが和平合意に違反し、たとえばウクライナの都市に巡航ミサイルを発射した場合、「有志連合」側のパイロットたちは、自分に反撃が許されるのかそうでないのか、把握しておかなくてはならない。
西側諸国は、黒海でもウクライナの安全を保証するために有効に活動できる。ロシアの艦隊を牽制(けんせい)し、オデーサなどの港から商船が自由に出航できるように、「有志連合」が協力することもあり得る。
地上での活動となると、状況はより難しくなる。ウクライナは広大な国だ。現在の前線は約1000キロ以上に及ぶ。
この長大な接触線を守るために、有志連合が十分な部隊を展開することは不可能だ。たとえロシアのウラジーミル・プーチン大統領がそれを認めたとしても、現実的な策ではない。
クレムリン(ロシア大統領府)は、NATO部隊がウクライナに駐留するなど、どの国の部隊だろうがどのような名目だろうが、絶対的に反対するという姿勢を繰り返している。したがって、地上での軍事支援は訓練、情報提供、補給支援などの分野に限定される可能性が高い。痛めつけられたウクライナ軍を立て直し、武器・弾薬を継続的に供給することも含まれる。
ただし、ウクライナへの安全の保証としてロシアがいったい何を容認するのか。これには大きな疑問が残る。多くのオンライン論者は、これについてロシア政府に言い分を主張する権利を認めてはならないという意見だ。
しかし、ロシアの反対を押してでもウクライナに部隊を派遣しようという国は、有志連合にもいない。第3次世界大戦を自分が引き起こすことなど、誰も望んでいないのだ。
イギリスのモスクワ駐在武官だったジョン・フォアマン氏は、この紛争のあらゆる紆余(うよ)曲折をつぶさに追ってきた。そのフォアマン氏は、「ロシアは、占領地の正式な承認と引き換えに、アメリカがウクライナの安全を保証することを、受け入れるかもしれない」と私に話した。
「その場合は事実上、ウクライナが長期的に分割されることになる。ウクライナにNATO(部隊)は駐留しないし、ウクライナはNATOに加盟しないことも、条件となる」とフォアマン氏は言い、「何がどうなるにしても、有志連合はアメリカの力の代わりにはならない」とも述べた。
アメリカは何か役割を果たすのか
多くの軍事専門家は、将来的にウクライナに提供する有志連合の「再保証部隊」が、アメリカの関与なしには成立しないと指摘している。15日に米アラスカ州で米ロ首脳会談が行われるまで、トランプ氏はこの部隊にアメリカが関与するかどうか、明言していなかった。
しかしトランプ氏は今では、アメリカが関与する意向を示している。ただし、ウクライナに米軍の地上部隊を派遣することはないとも述べている。
理想的には、ウクライナとその支援国はアメリカに、この将来の「再保証部隊」という発想を支持してもらいたいはずだ。さらに何より、ロシアが和平合意を破り、ウクライナへの攻撃を再開しようとしているとなった場合に、アメリカの軍事力――特に空軍力――が、欧州支援の形で即座に投入されるという確約を、ウクライナと欧州はアメリカから得たいはずだ。
トランプ氏は、アメリカの空軍支援を何らかの形で提供するかもしれないとほのめかしている。しかし、トランプ氏がこれまで、戦争の終わらせ方についてその姿勢をいかに繰り返し変えてきたかを思えば、ほのめかされているだけでは決して安心材料とは言い難い。
元米欧州軍司令官のベン・ホッジス退役中将は、「アメリカがウクライナへの安全の保証を本気で考えていて、単なる言葉以上のものを提供するかどうか」、自分は疑っていると言う。
さらにホッジス氏は、「欧州諸国はプーチンを信用していない。この戦争の侵略者が誰なのか、欧州諸国は混乱などしていない。侵略したのはロシアだと、トランプが認められない、あるいは認めようとしないことを、欧州は懸念している。プーチンは、強制されない限り、どのような合意にも従わない」と語った。
そして、ここにこそ、安全の保証に関する根本的な矛盾がある。ロシアによるウクライナ再侵攻を抑止するほど強力な保証を提供しつつ、ロシアがそれに反発して西側の資産を攻撃すると脅すほどには強すぎない――保証をそういったものにするには、いったいどうしたらいいのか。
元英国防相のサー・ベン・ウォレスは、西側は全体として、プーチン氏に強硬に対抗する姿勢が不十分だと批判する。
「誰も認めたがらないし、それについて誰も何も行動したがらないが、プーチンは殺戮(さつりく)を止めたいと思っているなど、そんな様子はまったく見せていない。それが現実だ」と述べた。
「プーチンが変化を求めるよう、仕向けること。そして、トランプかヨーロッパか、あるいはその両方が、そのために行動する覚悟をもつこと。そうしない限り、ほとんど何も達成されないはずだ」とも、ウォレス氏は話した。
ロンドンのシンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)で欧州安全保障を専門とするエドワード・アーノルド上級研究員は、有志連合が「柔軟性のある枠組みを提供し、トランプ氏と建設的にかかわりながら、ウクライナを支援することに成功している」と評価した。
ただし、「(有志連合は)依然として、確立された軍事的な仕組みではなく、政治的な抱負にとどまっている」ため、「今後数カ月間で、その覚悟と政治的リスクへの耐性が本格的に試されることになる」と、アーノルド氏は警告した。













