中国不動産大手の恒大、上場廃止 経済成長の象徴から大転落

マスクをして、右袖にミッキーマウスのエンブレムのついたピンクのTシャツを着て、黒いズボンをはいた女性が、高層住宅の建設現場の前でスクーターに乗っている

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画像説明, 中国恒大集団が河南省駐馬店市で建設していた高層住宅。同社はかつて中国で最も成功した不動産開発業者だった

ピーター・ホスキンス、ビジネス記者、BBCニュース

中国の不動産大手、中国恒大集団(エバーグランデ)が25日、香港証券取引所から上場廃止となった。同社の株は10年半以上にわたって同取引所で取引されていた。

恒大はかつて、中国最大の不動産会社で、株式市場での評価額は500億ドル(約7兆3600億円)を超えた。しかし、急成長の原動力となった膨大な借り入れの重圧に耐え切れず、劇的な崩壊をした。

専門家らは、上場廃止は必然かつ決定的だったとしている。

政治リスクコンサルタント会社ユーラシア・グループの中国担当ディレクター、ダン・ワン氏は、「一度上場廃止になれば、戻ることはない」と言う。

恒大は今では、世界2位の経済大国・中国で何年も続く危機の一因をつくったことで知られている。

恒大に何が起こったのか

つい数年前まで、恒大は中国経済の奇跡を象徴する存在だった。

拡大を続けた同社の「帝国」には、電気自動車メーカーや、中国で最も成功したサッカーチームの広州FCも含まれていた。

2019年12月1日、中国広東省広州市で、広州FCの中国スーパーリーグ優勝を祝うヘッドコーチと選手ら。金とピンクの紙吹雪が舞っている

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画像説明, 恒大は中国で最も成功したサッカーチームを所有していた

恒大は、3000億ドル(約44兆円)という巨額の借り入れで成り立っていた。「世界で最も負債の大きい不動産開発会社」という不名誉な称号を得ていた。

衰退の始まりは、2020年に中国政府が、大手デベロッパーの借入額を規制する新ルールを導入したことだった。

恒大は事業維持の資金を確保するため、大幅な割引価格で物件を提供するようになった。やがて利息の支払いにも苦しむようになった。国外での借り入れの一部は債務不履行(デフォルト)に陥った。

長年の裁判を経て、香港高等法院は昨年1月、恒大の清算を命じた。以来、同社の株式は取引停止となり、上場廃止の危機が迫っていた。

恒大の清算人は今月初め、同社の負債が450億ドルに達し、一方でこれまでに売却した資産は2億5500万ドルにとどまると明らかにした。また、事業の全面的な見直しには「手が届かない」との見方を示した。

中国経済への影響は

専門家らは、恒大の破綻が、他のデベロッパーにおける深刻な問題と共に、中国を大きく苦しめているとしている。

前出のユーラシア・グループのワン氏は、「不動産不況は(中国の)経済にとって最大の足かせになっている。それが、消費が抑制されている究極の理由だ」と話す。

2019年3月26日、香港で記者会見する中国恒大集団の許家印会長。ダークスーツ、白いシャツ、赤系のネクタイを着けている

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画像説明, 恒大の許家印会長はかつて、アジアで最も裕福な人物だった(2019年3月撮影)

中国では不動産業界が、国家経済の約3分の1を占めていた。地方政府にとっても、主要な収入源となっていた。それだけに、問題は深刻だった。

金融市場調査プラットフォーム、ボンドスーパーマートのジャクソン・チャン氏は、不動産危機が、多額の負債を抱えたデベロッパーの「大規模なレイオフ(一時帰休)」につながったと説明する。雇用を維持した不動産会社でも、従業員の多くは大幅な給与カットに見舞われたという。

一般世帯は貯蓄を不動産につぎ込む傾向があるため、不動産危機は多くの世帯にも大きな影響を及ぼしている。住宅価格が少なくとも3割下落したことで、多くの世帯で貯蓄が目減りしたと、フランスの銀行ナティクシスのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア=エレロ氏は指摘。消費も投資もしにくい状況にあると語った。

こうした事態を受け、中国政府はこれまで何千億ドルも経済に投入している。それでも、かつては目覚ましかった中国の成長率は、「5%前後」まで鈍化し、2010年まで年間10%以上の成長率を誇っていた国にとっては、物足りないものとなっている。

不動産危機は終わったのか

おそらく終わっていない。恒大が注目され続けているが、他のいくつかの不動産会社も大きな課題に直面している。

今月初めには、華南城控股(チャイナ・サウス・シティ・ホールディングス)が香港高等法院から清算を命じられた。恒大以降で、清算を余儀なくされた最大のデベロッパーとなった。

ライバルの不動産大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)も、140億ドル以上の対外債務を帳消しにしようと、債権者の合意を取り付けることに努めている。

米デューク大学のシトン・チャオ教授は、「不動産セクター全体が問題を抱えている。さらに多くの中国の不動産会社が倒産するだろう」と指摘した。

2024年1月30日、霧の多い曇り空の北京で、コートと帽子を身につけた人々が恒大が開発した集合住宅の前を通り過ぎている

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画像説明, 北京で恒大が開発した集合住宅。専門家らは、恒大が香港株式市場から上場廃止されたのは必然だったとしている

中国政府は不動産市場を強化し、経済全体を支えるため、多くの措置を講じている。ただ、デベロッパーの直接的な救済には取り組んでいない。

米投資大手ゴールドマン・サックスは6月、中国の不動産価格は2027年まで下がり続けると警告した。前出のワン氏も、中国の不動産市場は、需要が供給に追いつく2年後くらいに「底を打つ」と予想している。

前出のナティクシスのガルシア=エレロ氏はより厳しい意見で、「トンネルの終わりにも本当の光はない」としている。