【解説】 トランプ氏のガザ和平計画、「第2段階」に突入も 待ち受ける落とし穴

腕に黒色と黄色のラインが入ったクリーム色の長袖Tシャツを着た男性が、両手でシャベルを持ち、地面を掘っている。あたりには茶色い地面が広がり、破壊された建物やがれき、ヤギが見える

画像提供, Reuters

画像説明, パレスチナ・ガザ地区は、2年以上続く戦闘で荒廃したままだ。画像はシャベルで地面を掘るパレスチナ人男性(10日)

ジョン・ドニソン(エルサレム)

ドナルド・トランプ米大統領によるガザ和平計画の第2段階の開始が、14日に発表された。一見すると、ガザでの戦争終結へ向けて前進したように思える。

しかし、ガザ地区、そしてそこで暮らす約210万人のパレスチナ人の将来については、依然としてかなり不透明で、詳細も明らかではない。

加えて、多くの落とし穴が待ち受けている。

ハマスの武装解除

まず一つめは、非武装化だ。トランプ氏の和平計画は、イスラム組織ハマスや、ガザのほかの勢力の武装解除を求めている。

アメリカのスティーヴ・ウィトコフ中東特使は、和平計画の第2段階の開始を発表した際、ハマスなど武装組織が武装解除に応じないなら、「深刻な結果を招くことになる」と警告した。

しかし、ハマスはこれまで、武装解除をかたくなに拒否している。武装こそが、イスラエルによる数十年にわたるパレスチナ軍事占領に抵抗する手段だと、ハマスは考えている。

ハマスがこうした姿勢を維持するなら、ガザでの戦争を再開して「やるべきことをやり終え」たくて仕方がないイスラエル政権内の極右勢力の思うつぼだろう。

ハマスの軍事力は大幅に弱体化している。それでもハマスは、イスラエルに殺された戦闘員の数を上回る人員を、ガザで新たに勧誘していると、米情報当局はかねてから推定している。

昨年10月から続くガザでの停戦も、すでにぜい弱な状態にある。

ハマスとイスラエルは互いに、相手が停戦合意に違反していると非難し合っている。

ハマス運営のガザ保健省は、昨年の停戦発効後もイスラエルがガザを空爆し、450人以上のパレスチナ人が殺害されたとしている。

一方でイスラエル軍は、同じ期間にイスラエル兵3人が、パレスチナの武装勢力による攻撃で殺害されたとしている。

イスラエル軍のガザ撤退

二つめは、イスラエル軍のガザ撤退だ。イスラエルがどの程度ガザから撤退する必要があるのか、明確な提示はない。

イスラエルは完全撤退の意思を全く示していないし、自分たちがガザで強固な治安体制を維持する必要があるとも主張している。

イスラエルの当局者は、ガザには「新しい現実」があると言う。そして、多数の死者を出した2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以前の状態に戻ることは、決してないと強調している。

そのため、イスラエル軍の撤退範囲をめぐる駆け引きは今後も続くかもしれない。

ガザ統治

三つめは、ガザ統治をめぐる問題だ。

ハマスは2006年のパレスチナ総選挙で勝利し、その翌年に武力行使によってパレスチナでのライバルのファタハからガザを奪取した。和平計画では、戦後のガザ統治にハマスは関与しないと明記されている。では一体誰が、ハマスに代わって、その役割を担うのだろうか。

警察の運営や治安維持、学校や病院の運営には、誰が対応するのだろうか。

ガザの治安維持をめぐっては、1年以上前から、国際安定化部隊(ISF)を派遣する案が浮上している。

エジプト、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、サウジアラビア、そしてパレスチナ・ヨルダン川西岸地区に拠点を置くパレスチナ自治政府(PA)が、その候補に挙がってきた。

しかし、いずれも治安維持への関与は表明していないし、詳細も不透明だ。

「イスラエルの戦車に便乗してやって来た」と見なされれば、ガザのパレスチナ人から冷ややかな反応を受ける可能性が高い。

トランプ氏の和平計画では、ガザに3層構造の統治体制が敷かれるとされる。

最も下の層にあたるのは、パレスチナ人テクノクラート(技術官僚)による暫定的な移行統治機構「ガザ行政国家委員会(NCAG)」だ。

15人で構成される同委員会のメンバーは14日に発表された。ハマスは関与しないことに合意している。

その上には、ガザ外に拠点を置く執行委員会が置かれ、統治機構の活動を監督する。

同組織はパレスチナ人以外で構成される見通しで、トニー・ブレア元英首相らが加わる。

ブレア氏はイスラエル寄りだとされる。また、2003年にアメリカが始めたイラク戦争では、ジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)と共に大きい役割を果たしただけに、パレスチナ人の間で広く不信感を持たれている。

そして、3層構造の一番上には「平和評議会」が設置される。議長はトランプ米大統領が務める。

イギリスのキア・スターマー首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、評議会メンバーの候補だとうわさされている。

外国人が事実上ガザを統治する状況は、植民地主義を彷彿(ほうふつ)させると、多くのパレスチナ人は指摘している。

とはいえ、彼らパレスチナ人に果たして選択肢があるのかどうか。それが問題だ。

現地の状況は

こうしている間も、ガザの人道状況が極めて深刻であることに変わりはない。

昨年10月の停戦発効以降、ガザへの援助物資の搬入量は増加している。それでも、物資が全く足りていないと、複数の支援団体が訴えている。

家を失った数十万人のガザ住民は、仮設テントで暮らしている。

厳しい冬が到来したガザはここ数カ月の間、豪雨や強風、摂氏5度を下回る寒さに見舞われている。

深刻な洪水が発生したほか、建物が倒壊し、テントが吹き飛ばされる被害も出た。

大半の子どもたちは2年以上、ほとんど、あるいはまったく教育を受けられていない。

彼らの未来はどうなるのだろうか。

和平計画の第2段階が開始されたことで、事態が進展したように思えるかもしれない。しかし現実には、悲観すべき理由がまだ多く残っているのだ。