イスラエル、「ガザ市占領」計画めぐる国際社会の批判を一蹴

ダークスーツに赤いネクタイをしたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、記者会見で、真一文字に結んだ口に右人差し指を当て、前方を見つめている

画像提供, Reuters

画像説明, イスラエル首相府は、5項目からなる「占領計画」について、「ハマスの打倒」と「戦争終結」を目的としたものだと説明している。画像は記者会見に臨むベンヤミン・ネタニヤフ首相(5月)

イスラエルが7日夜に、パレスチナ・ガザ地区ガザ市の「占領計画」を治安閣議で承認したことをめぐり、各国からの批判の声が上がっている。イスラエルは8日、こうした批判を強くはねつけた。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は8日、諸外国がイスラエルを非難して制裁を科すと脅したところで、「我々の決意を揺るがすことはできない」と述べた。

そして、「敵は、我々が強く団結した拳となって、強力な力で攻撃してくることに気づくはずだ」と付け加えた。

ガザでの戦争を拡大するというイスラエルの決定は、国連やイギリス、フランス、カナダなどからの非難を招いた。ドイツは、イスラエルへの軍事輸出を停止する措置を取った。

イギリスのキア・スターマー首相は、この動きは「間違っている」、「いっそうの流血をもたらすだけだ」としている。

イスラエルの治安閣議で承認された計画には、ガザでの戦争を終結するための「原則」として以下の5項目が記されている。

・ハマスの武装解除

・生存者・遺体を含む全ての人質の返還

・ガザ地区の非武装化

・イスラエルによるガザ地区の安全保障管理

・ハマスでもパレスチナ自治政府でもない代替の文民政府の設置

イスラエル・メディアの報道によると、この計画ではまずガザ市を完全に支配し、住民を南部へ移動させる。イスラエル部隊はガザ中部の難民キャンプや、人質が拘束されているとみられる地域も支配する。

そして、数週間後には、人道支援の強化と並行して、第2段階の攻撃が行われるとされる。

紛争を激化させる今回の動きに、軍関係者や人質の家族など、イスラエル国内から強い反発の声が上がっている。

イスラム組織ハマスは「ガザ市占領」計画は「新しい戦争犯罪を構成するもの」で、イスラエルは「大きな代償を払う」ことになるとしている。

国際社会や人質家族の反応

イギリス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、オーストラリアの外相は8日、イスラエルの計画を一蹴する共同声明を発表。すでに「壊滅的な」ガザの状況を「悪化させる」ことになると訴えた。

「併合や入植地の拡大に向けたいかなる試みも、国際法違反だ」と、5カ国は付け加えた。

国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、いっそうの事態激化は「より大規模な強制移住、より多くの殺害、より耐え難い苦しみ、そして無意味な破壊と残虐な犯罪をもたらす」だろうと警告した。

スターマー英首相は、「(イスラエルの)行動は、紛争の終結にも人質の解放にもつながらない。ただいっそう流血をもたらすだけだ」と声明で述べ、「ガザの人道危機は日々悪化している。ハマスに拉致された人質は、悲惨で非人道的な環境に置かれている」と指摘。

「必要なのは、停戦、人道支援の大幅な増加、ハマスによるすべての人質の解放、そして交渉による解決だ。ハマスはガザの未来に一切関与すべきではなく、撤退し、武装解除しなければならない」とスターマー首相は続け、「我々のメッセージは明確だ。外交的解決は可能だが、双方が破壊の道から退かなければならない」と付け加えた。

オーストラリアのペニー・ウォン外相は、「ガザでの人道上の大惨事を悪化させるだけだ」として、「この道を進まないよう」イスラエルに求めた。

トルコ外務省は、「パレスチナ人を彼らの土地から強制的に立ち退かせる」ことを目的としたイスラエルの計画を阻止するよう、国際社会に呼びかけた。

中国外交部の報道官はAFP通信に対し、「ガザはパレスチナ人のものであり、パレスチナ領土の不可分の一部」だと述べた。

ドイツがイスラエルへの軍事輸出を停止したことを受け、ネタニヤフ氏は独政府の決定に失望したとフリードリヒ・メルツ独首相に伝えた。そして、この決定は「ハマスのテロ行為に報いるもの」だとした。

イスラエル国内では、新たな計画によって、生存しているとされる人質20人の命が危険にさらされる可能性があると、人質の家族らは警鐘を鳴らしている。

被害者家族の団体「人質家族フォーラム」の本部は、今回の決定は「人質と兵士の両方にとって、とてつもない大惨事」を招くものだと訴えた。

一方で、アメリカはそれほど批判的な反応は見せていない。ドナルド・トランプ大統領は5日、ガザ全域を占領するかどうかは「イスラエル次第」だと述べていた。

動画説明, ガザの空撮映像、破壊の様子が明らかに 英紙特派員が撮影

イスラエル国防軍(IDF)は現在、ガザの約3分の2を支配しており、210万人の住民のほとんどはIDFが支配していない残る約25%の土地に集まっている。

国連によると、ガザの約87%がIDFに制圧されているか、避難命令の対象となっている。

210万人のガザ住民が暮らす地域を示す地図。イスラエルによって軍事化されているか避難命令が出ている地域は赤色で示されている。ガザ北部には31万人、ガザ市には74万人、デイル・アルバラフには40万人、ハンユニスには62万人、ラファには3万人がそれぞれ身を寄せている

国連によると、ガザ中部や地中海沿岸には、今もIDFが占領していない地域が残っている。

そうした場所に複数の難民キャンプがあり、IDFの攻撃で家を失ったガザ住民の大半が暮らしている。

ガザと英グレーター・ロンドンの大きさと、ガザ市と英ヒースロー空港の大きさを比較した図。全長約40キロメートルのガザはグレーター・ロンドンにほぼ収まる。ガザ市とヒースロー空港はほぼ同じ大きさ。ガザには今も210万人が暮らしており、うち74万人はガザ市にいる

イスラエルとハマスの戦争で、ガザの住民の大半は家を追われ、大勢がすでに複数回の避難を強いられている。

ガザの人口の大半はすでに戦争によって避難を余儀なくされており、何度も移動を強いられている。

2023年10月から続く戦争のため、ガザは人道危機に直面している。国連が支援する専門家グループは、ガザの大部分が飢饉(ききん)の瀬戸際にあると指摘している。

イスラエルがガザへの物資流入を厳しく制限していることから、深刻な物資不足にも陥っている。イスラエルは、ハマスを弱体化させるために物資を制限していると主張している。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長によると、7月に報告されたガザの子供の急性栄養不良の件数は、1カ月あたりの件数としては過去最悪だった。5歳未満の子供約1万2000人が影響を受けているという。

イスラエルは、2023年10月7日にハマスがイスラエル南部を襲撃し、約1200人が殺害され、251人がガザに連れ去られたことへの報復として、ガザでの軍事作戦を開始した。

それ以降、イスラエル軍によって殺害されたパレスチナ人の数は少なくとも6万1158人に上ると、ハマスが運営する保健省は発表している。