イギリスの情報機関MI6、戦争に不満のロシア人を採用 「門戸は開いている」

画像提供, PA Media
イギリス対外情報部(MI6)のサー・リチャード・ムーア長官は19日、ウクライナでの戦争に不満を抱く多数のロシア人をすでに採用しており、さらに協力者を募集していると呼びかけた。
プラハのイギリス大使館で、今年初めて公の場に登場したムーア長官は、大勢のロシア人は自軍がウクライナの都市を「粉砕」しているのを見て「密かに愕然(がくぜん)」としていると述べた。
「多くのロシア人は、自国の兵士が近しい関係の国を荒らしまくる様子を、ぞっとする思いで見ている」
そして、流血を終わらせるためにイギリスの情報機関に加わりたいロシア人には、門戸はいつでも開いているとした。
「私たちは、思慮深いプロ集団として知られている。協力を申し出てくれるロシアの人たちにも、私たちは思慮深く、プロとして対応する。秘密は必ず守る」
「プラハの春」引き合いに
今年は、「プラハの春」から55年目にあたる。共産主義国チェコスロヴァキアで起きた自由化運動を押しつぶすため、当時のソ連は兵25万人の大軍をプラハに送り込み、改革運動を抑え込んだ。
コードネーム「C」として知られるムーア長官は、そのプラハを訪れ、当時の恐怖に言及。今では多くのロシア人が1968年の先人たちのように、「同じジレンマと、同じ良心の呵責(かしゃく)」で葛藤していると述べた。
「多くのロシア人は、同じスラヴ民族の国を攻撃するため(ウラジーミル・)プーチン氏が掲げる名目は言いがかりで、うそと幻想の腐臭に満ちているものだと、頭の中ではわかっている」
「この18カ月間、多くのロシア人が私たちに協力してきた。ほかのロシアの人たちも、同じように行動してもらいたい」
ワグネルの反乱について
ムーア長官は、ロシアの雇い兵組織「ワグネル」が6月24日にモスクワの200キロ手前まで部隊を進めた反乱について、自分も当惑したことを認めた。
そして、ワグネルのリーダー、エフゲニー・プリゴジン氏との合意に追い込まれたことは、プーチン氏にとって屈辱だったとした。
ワグネルは2022年2月にウクライナへの全面侵攻が始まって以降、特に犠牲の多い激戦の数々に加わってきた。
しかし、24時間足らずで反乱が収束した後、かつてプーチン氏に忠誠を誓っていたプリゴジン氏の所在はわからなくなっている。
ムーア長官は、自分たちが知る限り、プリゴジン氏はいまも生きていると述べた。
また、ウクライナでの戦争を解決する方法はシンプルで、ロシアが自軍を撤退させればいいだけだとした。
核兵器の使用について
プーチン氏は核兵器について言及しているが、実際にどこまで核使用用意があるのかと質問されると、ムーア氏は「彼はプリゴジン氏に反撃することなく、自分が逃れるために、ベラルーシの指導者による仲介を利用して合意を結んだ」と答えた。
「私でさえプーチン氏の頭の中を覗くことはできないが(中略)エスカレーションや核兵器について話しているのは、プーチン氏とその周りにいる一握りの取り巻きだけだ」
「(核兵器の使用への言及は)無責任かつ無謀な行為だ。ウクライナを支援する我々の決意をくじくために、核の脅威をちらつかせているわけだが、向こうが思う通りにはならない」
AIでロシアへの武器供給を妨害
長官は、ロシアへの武器供給を妨害するために人工知能(AI)が使われているとしつつ、機械が人間のスパイに取って代わることはないと主張した。
人間の諜報員は「決して受動的な情報収集者ではない」、「時には政府あるいはテロリスト集団内部の意思決定にに影響を与えることもある」とした。
一方で、テクノロジーは「驚くべきスピードで」進歩しているとした。
MI6では、様々な状況下で人がどう行動するのかについての自分たちの判断を「補強するために」AIを使用しており、決して人間の代わりにAIに判断させることはしないと、長官は話した。
「ウクライナに対して使用される武器の、ロシアへの流れを特定し妨害するために、AIや大量のデータと自分たちのスキルを組み合わせている」
その一方で、敵対国家が「有害で無謀かつ非倫理的な方法で」AIを使用する可能性はあるとも、ムーア長官は述べた。









