ロシアの独立系ジャーナリストと弁護士、チェチェンで襲われる 過去に殺害予告

Yelena Milashina, who had her head shaved and her face doused in green dye during the assault, has been attacked in Chechnya before

画像提供, Sergei Babinets/Crew Against Torture

画像説明, ロシア人ジャーナリストのエレナ・ミラシナ氏は、弁護士のアレクサンドル・ネモフ氏と共に、チェチェン共和国のグロズヌイ空港の近くで襲撃された

ロシアの著名な調査報道ジャーナリスト、エレナ・ミラシナ氏が、ロシア・チェチェン共和国で顔を覆った男らに襲撃された。

独立系リベラル紙「ノーヴァヤ・ガゼータ」に所属するミラシナ氏は、チェチェン共和国に飛行機で到着後、空港近くで無理やり車から降ろされ、プラスチックパイプで殴られたと説明した。その後、髪の毛をそられ、頭に緑色の染料をかけられたという。同氏に同行していたアレクサンドル・ネモフ弁護士も負傷した。

ミラシナ氏は過去に、同共和国の首長ラムザン・カディロフ氏から殺害予告を受けている。

ミラシナ氏とネモフ氏は、カディロフ氏を批判して亡命した3兄弟の母親に対する裁判を傍聴するためにグロズヌイ空港に降り立ったが、目的は果たせなかった。この裁判では、ザレマ・ムサイエヴァ被告(53)に5年半の禁錮刑が言い渡された。同被告の罪状は、政治的動機に基づくものだと批判されている。

カディロフ氏は2007年以降、チェチェン共和国で権力を握っている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の強力な同盟者であり、ウクライナ侵攻も支持している。一方、国内で超法規的な殺人や誘拐、拷問を指示しているとして批判を受けている。

弁護士は脚を刺される

ミラシナ氏とネモフ氏によると、2人の乗った車は空港からそう遠くないところで、3台の車に乗った、少なくとも10人の顔を覆った男らに襲撃された。ミラシナ氏は、男たちは空港内で自分たちの到着を待っていたと思うと話した。

ミラシナ氏は首都グロズヌイの病院で、チェチェンの人権団体職員に、「これは典型的な誘拐だ」と話した。「運転手を押さえつけて車の外に投げ出した後、車に乗り込んできて私たちの頭を押さえつけ、手を縛ってからひざまずかせ、頭に銃を突きつけた」。

ネモフ氏は、ロシアの弁護士協会に対し、「それから私たちを道路脇に投げ出して、顔や全身を蹴った。それから脚を刺してきた」と説明したと報じられている。

ミラシナ氏はその後、渓谷に引きずられていったと語った。男らはそこで、2人をポリプロピレン製のパイプで殴り始め、携帯電話のロックを解除するよう要求した。ミラシナ氏は、殴られながらでは複雑なパスワードを入力できないと訴えたという。

「男たちは理解しなかった。その後、髪の毛をそられ、緑色の染料をかけられて、何も見えなくなった」と、ミラシナ氏は人権擁護団体「クルー・アゲインスト・トーチャー」のセルゲイ・バビネツ氏に語った。

染料は防腐剤として使われているもので、過去にもアレクセイ・ナワリヌイ氏を含むロシアの反体制派への攻撃にも使用されている。

Human Rights Commissioner in the Chechen Republic Mansur Soltaev visits Yelena Milashina, a journalist for the now-banned independent newspaper Novaya Gazeta, and lawyer Alexander Nemov in hospital after they were attacked on their way to the Chechen capital Grozny from the local airport, in Grozny, Russia July 4, 2023

画像提供, Crew Against Torture

画像説明, 人権擁護団体「クルー・アゲインスト・トーチャー」のセルゲイ・バビネツ氏(左)と、仰向けになったミラシナ氏

ミラシナ氏は殴打によって脳に損傷を負った。また、当初は3本の指が折れていると診断されたが、後に医師は指は無傷だと述べた。

ネモフ氏も大けがを負った。「クルー・アゲインスト・トーチャー」は、ネモフ氏の脚の刺し傷の画像をインターネットに投稿している。ミラシナ氏によると、ポリプロピレンのパイプで殴られるのは「とても痛く」、通常は拘束した人に対して行われることだという。

クレムリン(ロシア大統領府)は、重大な襲撃事件だとし、捜査が必要だとしている。しかしロシアの人権団体「メモリアル」は、ロシア政府とグロズヌイ当局が「協同している」ことは間違いないと指摘した。

ミラシナ氏は、カディロフ氏が彼女をテロリストと呼び、「我々は常にテロリストとその共犯者を排除してきた」と発言した後の2022年2月から、しばらくロシアを出国した。2020年にも、マリナ・ドゥブロヴィナ弁護士と共に襲撃されたことがある。

ミラシナ氏は、チェチェンで同じような仕事をしていて殺された女性2人の足跡をたどる形で、同国での人権侵害を詳細に伝える調査報道を行ってきた。ノーヴァヤ・ガゼータで同僚だったアンナ・ポリウォフスカヤ氏は、2006年にモスクワで殺害された。友人で活動家のナタリア・エステミロヴァ氏は誘拐され、グロズヌイで射殺された。

ミラシナ氏は先週、BBCのウクライナに関するポッドキャスト「Ukrainecast」に出演。カディロフ氏とその側近が、殺害予告を 「簡単に実行 」できると十分承知していると話したばかりだった。

「カディロフはほぼ毎年、何回か、私の住所やノーヴァヤ・ガゼータの記者たちの住所に脅迫状を送ってくるので、慣れてしまった部分もある。カディロフはまるでチェチェン地域の所有者のように振る舞っている」

Zarema Musayeva was found guilty of fraud and assaulting a police officer - charges rejected by rights groups as trumped up

画像提供, Crew Against Torture

画像説明, ザレマ・ムサイエヴァ被告は詐欺と警官暴行で有罪となり、禁錮5年半が言い渡されたが、人権擁護団体はでっちあげだと批判している

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは「卑劣な暴行」を非難するとともに、ロシア当局に「速やかに犯人を裁き、真実と正義を求める人々の安全を確保する」よう求めた。

人権監視機関「欧州評議会」は、「この事件がノーヴァヤ・ガゼータのジャーナリストや協力者に対する不穏な攻撃パターンの一部であることを深く憂慮する」と述べた。ドゥニヤ・ミヤトヴィッチ人権弁務官は、評議会加盟国に対し、「説明責任を求め、ロシア連邦のジャーナリストを支援する」よう求めた。

カディロフ氏は、父親のアフマド・カディロフ元大統領が暗殺された3年後の2007年、プーチン氏からチェチェン共和国の大統領に任命された。その後、役職名が「首長」に変更されている。

昨年には、「カディロフツィ」と呼ばれる自身の軍事組織をウクライナに送り込み、残虐行為を行った。また、反政権派のボリス・ネムツォフ氏暗殺に関わった。

ミラシナ氏とネモフ氏が傍聴する予定だった裁判では、ムサイエヴァ被告が詐欺と警官への暴行の罪に問われていた。

ムサイエヴァ被告の3人の息子は、カディロフ氏の人権侵害についてインターネットで発言した後、チェチェンを出国している。被告の夫は元裁判官で、一時は拘束されていたが、やはり逃亡した。

カディロフ氏は、グロズヌイから1800キロ北の地点でムサイエヴァ被告が拘束された際、この一家は「刑務所か地下に入るべきだ」と述べていた。