不法移民を他国へ送る法案、イギリスに滞在させるより割高に

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イギリス政府が推進しようとしている、不法移民を東アフリカのルワンダなどの「安全国」に移送する計画が、移民をイギリスに滞在させるよりも費用が高くつくことが明らかになった。
イギリスには毎年、多くの人が小型ボートなどで英仏海峡を渡って不法入国している。リシ・スーナク首相は、最優先課題の一つとしてこうした海峡横断の阻止を掲げており、議会に提出している「不法移民法」がその要となっている。
英内務省は26日、この法案の経済アセスメント(影響評価)報告書を発表。それによると、移民を他国に移送する総費用は1人あたり16万9000ポンド(約3090万円)と試算された。
一方で、この法案では移民がイギリスに残った場合の住宅補助金10万6000ポンド(1940万円)は回避できることになる。つまり、移送費用が住宅補助金よりも6万3000ポンドほど高い計算だ。
ただし政府は、この政策には抑止効果もあると指摘。イギリスへの不法入国を抑止すれば費用は発生しないと述べた。
しかし、この法案は「斬新で未検証」であるため、この政策がどの程度の抑止効果をもたらすかは「不確か」だとしている。
また、潜在的な節約額は「非常に不確実」だとしつつ、1人あたり10万6000ポンド~16万5000ポンドと推定している。高い方の金額は、住宅費が高騰し続ける可能性を考慮したものだという。
宿泊費以外にも、給付金や公共住宅、医療費など、移民をイギリスに再定住させるために必要な費用が節約できるという。
報告書では、納税者の負担をゼロにするには、この政策によってイギリスに不法入国する人を37%阻止する必要があるとしている。
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ルワンダなどへの移送費用には、対象国への支払いとして10万5000ポンドが含まれる。これに、飛行機代や警備費などが計2万2000ポンドかかる。
推計では飛行機1機に移民50人が乗る計算だが、人数が少なくてもフライトが決行される可能性もあるという。
また、手続き中の留置にかかるコストも含まれている。
これらの費用は実質的なものではなく、理論上の見積もりで、ルワンダとの協定内容は機密事項となっている。
最大野党・労働党は、このアセスメントは「まったく馬鹿げて」おり、政府は実際の費用がどれだけになるのか「まったくわかっていない」のだと述べた。
イヴェット・クーパー影の内相は、「内務省はわずかな数字しか発表していないが、そこからでも政府の計画がいかに無秩序で実行不可能か明らかだ」と批判。政府は「無期限留置」の可能性を計算していないため、「真のコスト」はもっと高いかもしれないと指摘した。
英難民協会のエンヴァー・ソロマン会長は、この法案は「苦しみをもたらし、何十億ポンドもの費用がかかり、亡命制度が現在抱える危機と圧力を緩和することに何ら貢献しない」と述べた。
一方、スエラ・ブラヴァマン内相は、「このアセスメントは、無策は有効な選択肢ではないと示している」と話した。
「イギリスの納税者に受け入れがたい負担を強いる一方で、大勢が命を懸けてでも密航業者に金を払って不法入国しようなどと思ってしまう、そんな現行の制度を続けることは許されない」


移送計画は違法なのか
イギリスは現在、亡命希望者の宿泊費用として1日当たり600万ポンドのホテル代を支払っている。
昨年には、4万5700人が英仏海峡を小型ボートで渡る危険な旅路の末、イギリスにたどり着いた。
リシ・スーナク首相は、五つの最優先課題の一つとしてこうした海峡横断の阻止を抱えており、今回の法案がその要となっている。
現時点ではルワンダが唯一、このような移送についてイギリスと協定を交わしている。しかし、この計画に則った移民の移送はまだ始まっていない。
2022年12月には高等裁判所が、移送計画は違法との判断を下したが、さらに控訴されており、29日にも判決が出る見通し。
不法移民法案も、なお上院で可決する必要があるが、すでに大きな反対に直面している。法案が可決した場合にも、法的措置が取られる可能性がある。
法案に反対する人々からは、実行不可能だという意見のほか、国際法に違反しているとの指摘も出ている。








