英仏海峡を渡ってきた難民をルワンダへ移送 英政府案に賛否両論

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イギリス政府は、欧州から英仏海峡を渡ってきた亡命希望者の一部を、東アフリカのルワンダへ移送する新たなスキームを発表した。難民支援団体は、この計画を残酷だと批判している。
この試験的な計画は15日に発表された。ボートやトラックの荷台などに乗ってイギリスに到着した独身の男性を対象とする予定。プリティ・パテル内相が、ルワンダの首都キガリで協定を交わした。
ボリス・ジョンソン首相は、この計画に1億2000万ポンド(約200億円)を投じると述べ、人身売買から「無数の命を救う」ことになると話した。
昨年は2万8526人が、小さなボートで英仏海峡を渡ったことが確認されており、2020年の8404人から増加している。13日にも、約600人が渡航した。ジョンソン首相は、今後数週間で1日1000人に達する可能性があると述べている。
一方、難民支援団体は、計画のコストと影響に疑問を呈するとともに、難民の行き先とされているルワンダの人権状況についても懸念を示した。
野党や慈善団体、イギリス国教会からも批判の声が出ている。
現在明らかになっている移送計画
- 新たな計画では、主に小型船やトラックなどでイギリスに不法入国した独身男性に焦点を当てる
- 1月1日以降にこのような手段でイギリスに到着した人々はルワンダに移送され、そこで亡命申請が処理される可能性がある
- 申請が検討されている間は宿泊施設と各種支援が提供され、いつでも自由に宿泊施設を出入りできる
- イギリス政府によると、亡命申請が受理された人々は、ルワンダで「新しい生活」を築き、最長で5年間の教育や支援が受けられる
- 申請を拒否された人々は、ルワンダへの残留申請の機会が与えられるか、出身国または居住する権利を有する他の国へ移送される
- 最初の移送は数週間以内に始まる予定
「人身売買から守るため」と英首相
ジョンソン首相は、「卑劣な人身売買業者」が海を「水の墓場」に変えてしまうのを阻止する必要があり、この計画はそうした業者のビジネスモデルを破壊するために考案されたと述べた。
「私たちの思いやりは無限かもしれないが、人々を助ける能力は無限ではない」
「私はイギリスの納税者に、ここに来て住みたいと思う人のコストをカバーするために、金額欄が空白の小切手を切ってくれとは言えない」
一方で、ルワンダに移送できる人数は「無制限」だとした。また、同国について、今年の初めから「不法に」到着した人々を含めた「何万人もの人々を、今後数年にわたって再定住させる能力」を持っていると語った。
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ルワンダ政府の方針
ルワンダ政府も、移民は「ルワンダの法律の下で完全に保護され、雇用への平等なアクセスのほか、医療や社会保険に登録する権利がある」と述べた。
ルワンダはアフリカでも最も人口密度の高い国の一つだが、どれだけイギリスからの難民を受け入れるのかは明らかになっていない。
英内務省は、この計画を実行するには既存の亡命法で十分だとしているが、計画の合法性については疑問が残る。
ジョンソン氏は、この計画は国際法に「完全に準拠している」と述べた一方で、法廷や「政治的動機に基づく手強い弁護士軍団」から異議申し立てを受けることが予想されると認めている。
危機を「見過ごせない」と英内相

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イギリスのパテル内相は、ルワンダのヴィンセント・ビルタ外相と共に英紙タイムズに寄稿し、世界の難民制度は人道危機や人身売買の波で「崩壊」していると批判。「人道的な国なら」この危機が続くのを見過ごすことはできないと述べた。
「我々は思い切った革新的な一歩を踏み出しているのに、この計画を批判している機関が対案を示さないのは驚きだ」
また、ルワンダにいる一部の難民が相互協定の下でイギリスに移送されることも明らかになった。
イギリス政府筋によると、イギリスは「最も危険にさらされている難民の一部」の再定住についてルワンダを支援する方針だという。
「恥ずかしいほど残酷」

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英国教会の最高指導者、カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー氏は17日、政府の難民移送案は「神の本質とは逆のものだ」と述べた。
イースター(復活祭)の説教の中でウェルビー大主教は、こうした時期に「我々の責任を他人に押し付ける」べきではないと指摘。「亡命申請者を海外に送ることには深刻な倫理的疑問がある」と述べた。
難民移送計画については、これまでに160以上の慈善団体や活動団体が、廃案を求める共同の公開書簡を発表し、「恥ずかしいほど残酷」だと非難した。
最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、「実現しない、非倫理的で不当な」スキームだと批判。ジョンソン首相はこの計画で、新型コロナウイルスのロックダウン中に官邸などでパーティーが開かれていた問題から人々の目をそらしたいだけなのだと指摘した。このほか、野党・自由民主党やスコットランド民主党からも批判の声が上がっている。
人権への懸念

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ルワンダをめぐっては、人権問題への懸念も指摘されている。1994年にルワンダ愛国戦線(RPF)を率いてジェノサイド(集団虐殺)を終わらせ、2000年から権力を握り続けているポール・カガメ大統領(64)の政権を批判できる人はほとんどいないからだ。
人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは3月、ルワンダ国内で政府を批判したとして、少なくとも8人のユーチューバーが有罪になった件についての報告書を発表。兵士がスラムで住民の強制退去を行う様子を撮影・批判した人物は、禁錮7年の有罪判決を受けたという。
反体制派は、国外に逃れても追跡される。ルワンダ虐殺で避難者を救助し、映画「ホテル・ルワンダ」のモチーフになった元ホテル支配人ポール・ルセサバギナ氏は、2020年にドバイで拉致されてルワンダに連行されたと、家族は訴えている。同氏は反政府勢力を支援したとして、禁錮25年の有罪判決を受けた。
ルワンダ虐殺では、フツ人の過激派が、同じフツ人の穏健派や対立するツチ人などを多数殺害。ツチ人主導のRPFによって制圧されるまでの100日間に、約80万人が殺された。
フツ人のルサセバギナ氏は、ツチ人数百人をホテルにかくまって助けたが、その後にツチ人のカガメ大統領と対立。亡命し、ベルギー国籍を取得していた。
ルサセバギナ氏の娘のカリーン・カニンバ氏はBBCの取材に対し、ルワンダは人権を全く尊重していないと指摘。「ルワンダは独裁主義であり、言論の自由も民主主義もない。直近の選挙では、カガメ氏の得票率は99%だった。民主主義ではない証拠だ」と述べた。
「なぜイギリス政府が、リスクにさらされている人々を、自国民を苦しめていることで有名な国に送ると決めたのか理解できない」
(英語記事 / / / Land of safety - or fear? Why Rwanda divides opinion )









