ウクライナ兵を斬首か 動画が拡散、ゼレンスキー氏は嫌悪し非難

オルガ・ロビンソン、シャヤン・サルダリザデ、アダム・ロビンソン、BBCニュース

Ukrainian President Volodymyr Zelensky

画像提供, Getty Images

画像説明, ウクライナのゼレンスキー大統領は兵士殺害の動画を非難し、「テロを打倒しなくてはならない」と述べた

ウクライナ兵がロシア兵に斬首される場面とみられる動画が浮上し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、各国指導者に対応を求めた。

この動画は、親ロシアの人気ブロガーがフォロワー約30万人に共有。11日夜にSNSのテレグラムで拡散され、その後、ツイッターでも広がった。

短い動画では、黄色い腕章をつけた男性が、足に白いバンドを巻いた男性に大きなナイフで首を切断されている。

ゼレンスキー氏はビデオ演説で、「すべての人が、すべての指導者が反応しなくてはならない。これが忘れ去られるのを待ってはならない」と述べた。

ウクライナ保安局(SBU)は「戦争犯罪」として調査中だとした。

ロシア大統領府はこの動画について「ぞっとする」ものだとしたが、真実性や背後関係を確認する必要があるとした。

腕章やバンド

この極めて生々しい動画は、携帯電話で夏に撮影されたとみられ、粒子が粗い。ウクライナ兵が識別のためによく使う黄色の腕章をつけた軍服姿の男性が映っている(下右画像)。

殺害に及んだ人物や周囲の男性らは、足に白いバンドをつけている(下左画像)。これはロシア兵が識別のために使うことで知られる。

Video frames showing a yellow armband and white cloth leg wrapping used by Ukrainian and Russian soldiers respectively
画像説明, 出典:テレグラム
Presentational white space

周囲の男性らはロシア語を話している。ただ、多くのウクライナ人もロシア語を話すため、男性らがロシア兵だと示す決定的な証拠とはならない。

男性らの1人は防弾ベストを持ち上げている。そこにはウクライナ国章の三叉(さんさ)の矛のバッジと、漫画キャラクターの「パニッシャー」のどくろマークらしきものがついている(下画像)。

バッジは色と形がウクライナ地上軍の記章に似ている。どくろマークは、ウクライナとロシアの双方の戦闘員が身につけているのが確認されている。

Video frame showing patches worn on a piece of body armour held up in front of the camera
画像説明, 出典:テレグラム
Presentational white space

地面にはパスポートのような緑色の冊子が見える(下画像の赤い囲み)。映像では上下が逆さまだが、色、三叉の矛のシンボル、文字レイアウトの点で、ウクライナ軍の標準的な身分証ID(下左上画像)と一致している。

Video frame showing what appears to be a Ukrainian military ticket on the ground, which is issued to soldiers when they are registered for military service. An inset image of a military ticket is also shown for reference
画像説明, 出典:テレグラム、ウクライナ国防省
Presentational white space

インターネットでは、この動画がウクライナ東部クレミンナ市付近で撮影されたとの憶測が流れている。

BBCはそうした見方が正しいのか確認できていない。建物や景観など、撮影場所の特定につながる手がかりが少な過ぎるからだ。

撮影日時も不明だ。ただ、現在のウクライナでの戦争で識別のために使われている白と黄色の腕章が映っていることから、この戦争のさなかに撮影されたものと思われる。

映っている葉は鮮やかな緑色をしており、昨春遅くから夏の間に撮られた可能性がある。

ソーシャルメディアのユーザーからは7月に撮影されたとの見方が出ている。BBCは、これが正しいのか確認できていない。

動画を自身のフォロワーに共有し、拡散のきっかけをつくった親ロシアの人気ブロガーは、この動画は自分が投稿する前からテレグラムにあったと説明した。BBCはそうした早い時点での動画を見つけられていない。

別の動画も

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「私たちはフェイクの世界に住んでおり、この動画の真偽を確認する必要がある」と述べた。

この動画とは別に、斬首された兵士2人の遺体が映っているとされる動画も、ソーシャルメディアにここ数日、出回っている。

こちらの動画には、破壊された装甲兵員輸送車「M113」とみられるものが映っている。主にウクライナ軍が使用している車両だ。撮影している男性はロシア語で、車両が地雷の上を走ったと説明している。近くの地面には、頭と手がない遺体が少なくとも2体、放置されている。

遺体の片方の右腕には黄色の腕章が見える。そのため、これらはウクライナ側で戦っていた人の遺体とみられる。遺体の近くには少なくとも3人の兵士が立っているのが見える。

ソーシャルメディアのコメントには、この動画がウクライナ東部バフムート付近で撮影されたとの推測も見られる。バフムートでは、ロシアの軍および民間軍事会社ワグネル・グループと、ウクライナ軍が戦闘を続けている。

BBCはこの動画の撮影場所も確認できていない。

ワグネルを創設したエフゲニー・プリゴジン氏は、この動画がバフムート近郊での出来事を映していると示す証拠も、ワグネル戦闘員が関与したと示す証拠も「見つかっていない」と、声明で述べた。

今回の戦争が始まってから、数多くの悲惨な動画がインターネット上に投稿されている。

先月には、武器を持たないウクライナ人捕虜オレクサンドル・マツィエフスキー氏が射殺されたとみられる動画が出回った。ゼレンスキー氏は、関わったロシア兵を見つけ出すと約束した。

欧州連合(EU)のナビラ・マスラリ外交安全保障上級代表報道官は、ロシアに対し、人道法を順守するよう強調。EUは戦争犯罪の加害者全員の責任を追及すると付け加えた。