韓国、ウクライナへの武器供与で葛藤 流出した米機密文書に記述
ジーン・マッケンジー・ソウル特派員

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米国防総省の機密文書が流出した問題で、BBCが確認した文書の中に、韓国高官らがウクライナで使われる可能性のある武器の売却について協議していたことを示す記述が見つかった。
文書によると、韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領の上級顧問2人の通信が傍受されていた。
2人は、ウクライナに砲弾を提供するよう求めるアメリカからの圧力と、戦争当事国には武器を供与しないという韓国政府の方針の間で葛藤している。
そして顧問の片方が、アメリカに屈したと思われないよう、ポーランドに砲弾を送ることを提案している。
米政府は現在、情報の流出元の特定に躍起になっている。国防総省は流出について、国家安全保障に対する深刻なリスクだとしている。
砲弾を誰が使うのか懸念
韓国は昨年、アメリカの在庫を補充する目的で、同国への砲弾の売却に同意した。その際、ウクライナに転送しないようアメリカに求めた。
文書によると、今年3月1日、李文熙(イ・ムンヒ)外交秘書官が金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長(ともに当時)に、「アメリカが砲弾の最終使用者にならないのではないかとの懸念を(韓国政府として)抱いている」と伝えた。
両者はまた、ジョー・バイデン米大統領がこの問題について尹大統領に直接電話する可能性や、韓国がウクライナへの武器供与の方針を変更すればアメリカの圧力に屈したように見える可能性について心配している。
その後、金氏は、「アメリカの最終目標はウクライナに素早く砲弾を届けることだ」とし、アメリカの代わりにポーランドに砲弾を売却する方法があると提案したとされる。
韓国は今回の情報流出について調査中だとしている。ただ、大統領府内での私的な会話を傍受するのは不可能で、文書にある会話が地下室であった可能性もないと主張している。
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韓国の苦慮
アメリカは、韓国がウクライナに武器を供与することを望んでいると公言している。アメリカは韓国について、先進的な兵器を短期間に製造し、戦局に大きく貢献できると考えている。
しかし韓国は、戦争をしている国に武器は送らないとの方針を繰り返し表明し、武器供与に消極姿勢を保っている。ロシアとの関係を悪化させたくないとの思惑もある。
今回の流出文書からは、砲弾がウクライナに渡る可能性を韓国が理解していただけでなく、それを容認していた様子もうかがえる。このことは、韓国とロシアの関係悪化につながる恐れがある。
シンクタンク「38ノース」の韓国アナリスト、ジェニー・タウン氏は、「韓国は常に、一方にアメリカ、もう一方にロシアと中国という状況の中で、微妙なバランスを取っている」と話した。
「今回の流出で、韓国政府が最も気にしているのは世論だと明らかになった。ウクライナ支援でしようと思っていることと、それがどう受け止められるのかの間で、バランスを取ろうとしている」

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今回の文書は、電波信号の傍受によって収集した情報に基づいているとみられる。このことは、アメリカが長年の同盟国である韓国に対してスパイ活動をしていたことを示唆し、米韓関係を揺るがす可能性がある。
アメリカが敵味方を問わずスパイ活動をするのは驚くべきことではないが、このタイミングでそれが明らかになったのは不運といえる。
尹大統領は2週間後に、韓米同盟70周年を記念してホワイトハウスを公式訪問する予定となっている。アメリカは両国の同盟について、今も「鉄壁」だと強調している。
韓国では、ハイレベルの会話をアメリカに傍受されたことを、野党が問題視している。野党は10日、「アメリカによる明確な主権侵害であり、韓国にとってはものすごい規模でセキュリティーが破られたことになる」とする声明を出した。
リベラルな前政権で顧問を務めたキム・ジョンデ氏は、今回の出来事を韓国にとっての「情報災害」だと表現。「これは氷山の一角でしかない。これで終わりということはあり得ない」と述べた。
韓国政府はこの流出について、大した問題ではないと思わせようと努めている。文書の一部は改変された可能性があるとするアメリカの見方を支持している。
韓国政府関係者は、「この件を誇張したりねじ曲げたりして、首脳会談を前に同盟を揺るがそうとする試みには対抗する」と警告した。
アメリカは首脳会談を機に、韓国に対してウクライナへの武器供与をさらに迫るとみられていた。しかしその話題は、突如としてデリケートなものとなった。






